☆交通エレクトロニクス特論（Electronics for Transport）[5502]

＜授業のねらい及び具体的な到達目標＞

電気エネルギーを走行のために用いる「電気利用交通」は，これまで電気鉄道が実用的なものとしてはほぼ唯一の例だったが，近年の技術開発によってこの状況に急速に変化が生じつつある。電気鉄道自身も，新幹線や都市鉄道を始めとしてさまざまな技術的展開をみせている。この科目では，大規模システムの典型例のひとつである電気鉄道を中心に据えつつ，「電気利用交通」の展開について，歴史から最先端まで至る幅広い知識を得ることを目的とする。
達成目標は，こうした知識を得ることに加え，交通システムの評価（例えば省エネルギー性）の手法や，それを改善するための手法に関して，基礎的と考えられるレベルの知識を得ることである。

Recent years have seen the rapid change in the situations surrounding electric traction. Wider use of electric traction can be found in other modes of transport, such as road vehicles. Active developments, such as realization of faster main line services or more convenient urban railways, can be found in the rail industry as well.
The aim of this lecture is to give students the wider knowledge on transport systems using electric traction (or propulsion), including the history and the state-of-the-art, with the main focus on electric railway systems as a typical example of large-scale systems.
The goal of this lecture is: (1) to get the knowledge as stated above, and (2) to get basic knowledge on the methods to evaluate transport systems, e.g. in terms of energy efficiency, and to improve such evaluations.

＜授業計画及び準備学習＞

1. 「世界一」の日本の鉄道
Japanese railways -- "best" in the world
　　実績の裏側にある世界　関係者の苦労の例

2. 鉄道が形作った近代世界
Railways formed the modern world
　　200年前、鉄道はITそのものだった！
　　世界を「つくった」鉄道　都市は鉄道なしに成り立たない
　　最先端技術のユーザとしての鉄道　通信と交通
　　「環境の時代」

3. 交通とエネルギー
Transport and energy
　　社会におけるエネルギー消費
　　省エネルギー性　鉄道は本当に環境に優しい？　比較の方法
　　同じ鉄道でも日本のそれは飛び抜けて省エネルギー、違いはどこから？
　　最新のいわゆるエコカーや航空機との比較

4. 電気車両の仕組み (1)
Vehicles using electric traction (1)
　　電気自動車　世界最初の電気鉄道
　　直流電気車　抵抗制御　組合せ制御　界磁制御

5. 電気車両の仕組み (2)
Vehicles using electric traction (2)
　　直流電気車つづき　ブレーキシステム　電力回生ブレーキ
　　　　　　　　　　　チョッパ制御　界磁制御
　　　　　　　　　　　インバータ制御

6. 電気車両の仕組み (3)
Vehicles using electric traction (3)
　　交流電気車　構成方法（特に交直流車両の実現）　3相交流の使用
　　　　　　　　整流器方式　位相制御
　　　　　　　　PWMコンバータ　電力回生ブレーキ

7. 電力供給の仕組み (1)
Power supply (1)
　　エネルギー蓄積技術　架線は生き残るか？
　　パンタグラフ・架線系　騒音　高速化

8. 電力供給の仕組み (2)
Power supply (2)
　　直流饋（き）電系　饋電等価回路　回生失効
　　交流饋（き）電系　スコット結線変圧器　AT饋電・BT饋電

9. 交通システムとシステム工学
Transport systems and systems engineering
　　評価　最適化　シミュレーション

10. 信号・保安
Signalling and train protection
　　信号システムと保安システム　閉塞・連動・鎖錠　軌道回路
　　　車内警報装置から ATS，ATC への変遷
　　　移動閉塞　軌道回路からの決別　インターオペラビリティへの挑戦

11. スケジューリング
Scheduling
　　列車ダイヤ　評価手法　ダイヤパターン　運転整理の問題　組合せ最適化手法
　　　旅客案内との関係　運行管理を中心とした鉄道の統合システム化

12. 出改札・通信・その他
Ticketing, communication, and miscellaneous
　　出改札システム　諸外国の無改札システム　日本流自動改札
　　　未来のシステムへ　非接触ICカードと電子マネー　携帯電話との融合
　　通信システム　鉄道電話　列車無線　車内サービス
　　保守技術の革新　専用検測車　営業運転用車両による状態監視

13. さまざまな交通システム／最近の話題／日本の課題
Various transport systems / New developments / Japan's issue
　　高速鉄道　都市鉄道・ライトレール　「新交通」　磁気浮上式鉄道　ほか
　　国際規格議論　実は技術や技術開発のあり方そのものの問題でもある
　　鉄道産業の再編　世界的に進む民営化とオープンアクセス
　　国際競争　「世界的」鉄道運営事業者の登場　受注競争
　　日本の課題

14. 学習成果の振り返り
The review

準備学習（予習）：特に必要なし。
Preparation: Not necessary.

準備学習（復習）：
講義時に配布された資料等を読み込み，関連資料等を可能な限り幅広くあたること。練習問題等があれば自分で手を動かし解いてみること。
Review: Read the handouts distributed in the classroom and find related materials, for example by using the library or by the search on the World Wide Web. If any, solve the problems in the handouts.

＜成績評価方法及び水準＞

レポートにより評価を行う。レポート課題は講義において与える。

Markings will be based on the submitted reports. The assignments will be given in the classroom.

＜教科書＞

なし。

No textbook required.

＜参考書＞

「最新 電気鉄道工学 (改訂版)」，コロナ社 (2012). ISBN 978-4339008333

＜オフィスアワー＞

新宿キャンパスA-2374室
●水曜日17:30-18:00
●金曜日10:00-10:30

A-2374, Shinjuku Campus
* Wednesday, 17:30-18:00
* Friday, 10:00-10:30

＜学生へのメッセージ＞

可能な限りビジュアルな教材を準備したいと思っています。交通システム，あるいは鉄道に興味を持つ多くの学生の聴講を期待しています。

I am planning to prepare materials full of photographs so students can get some visual images of the transport systems across the globe. I would like to welcome participation of all students interested in any way in transport systems, regardless of the disciplines.