2016年度工学院大学大学院・建築学専攻

まちづくりデザイン(Urban Design and Planning Studio)[1502]


2単位
野澤  康 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
星 卓志 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
遠藤 新 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2018/12/19

<授業のねらい及び具体的な到達目標>
この授業は、具体的な都市を題材として、都市計画の立案及び実現のプロセスや実現のための戦略を学び取ることにより、他の都市・地域を対象としても、それを応用して計画立案等を自ら行うことができるようになることを、ねらいとする。
概ね、以下のステップで進めて行く。
1)対象都市の現状や現代に至るまでの歴史的な経緯を、資料及び現地調査から読み取り、分析・評価する。
2)既存の行政計画を収集し読み解くことを通して、行政が進めようとしている計画・事業の方向性を知る。
3)ここまでの成果をもとに、対象とする地域の将来的な都市像(空間、システム、マネジメント等を含む)を議論し、計画として描き出していく。概ね20年後を目標とする。
4)3)で描いた都市像の実現プロセスを考察し、目標とする20年後までの時間経過に合わせた実現のための戦略を構築する。

また、具体的な達成目標は以下の諸点である。
・都市・地域の文脈を読み取り、資源と課題を指摘し、評価することができる。
・行政が立案している各種計画の種類を知り、それらを適切に読み取ることができる。
・都市・地域の資源を維持・増進し、課題を解決するために、まちづくりの方針を定め、将来の都市像を描き出すことができる。
・都市・地域の将来像を実現するための方法を学び、それらを応用して、自ら描いた計画を実現するための戦略を、時系列に沿って構築することができる。
・グループで行う作業や毎回のスタジオ全体での意見交換を通して、相手に伝わるプレゼンテーションができ、適切なディスカッションやグループワークをすることができる。

<授業計画及び準備学習>
以下のように進めていく。

■第1フェーズ(調査・分析・評価)
@ガイダンスと基本情報のインプット
 :課題説明・グループ作業準備を行うとともに、対象都市の概略を説明する。
 準備学習:発表されている対象地区について、インターネットなどで予備調査をする。

A現地調査
 :対象都市を訪れ、自らの目で見て、五感を働かせて、現地の状況を調査する。
準備学習:地図や資料から、現地で訪れて見るべきポイントを検討し、現地調査の計画をつくっておく。また、参考文献4)や学部で学んだことをもとに、現地調査での注意事項を復習しておく。

B現地調査の報告・まとめ
 :現地調査等の結果から、注目した点、課題と資源を地図に落とし、それをもとに都市の将来の方向性を検討する。
準備学習:対象都市のホームページから、必要と考えられる諸計画の行政資料をリスト化する。そして、それらをダウンロードし、グループで分担して読み解く。

C現地調査および資料調査のまとめ/戦略を練る(フェーズ3)ための基礎知識
 :現地調査と資料調査の両方から得られたことを合わせて、分析・評価を行い、調査結果をまとめて発表し、都市の将来の方向性をスタジオ全体で議論する。戦略を練る(フェーズ3)ための基礎知識については概略を説明し、詳しい内容の学習は第11回までに各グループで進めておく。
準備学習:現地調査および資料調査から得られた知見を整理し、課題図、資源図等にまとめていく。

■第2フェーズ(将来像構築・計画立案)
D対象都市の将来コンセプト
 :調査結果から抽出されたアイデア、キーワードなどをもとに、将来コンセプトを構築していく。全体としてのコンセプト、地区などの部分としてのコンセプト、テーマ毎のコンセプト等に分けて議論する。
準備学習:調査結果をもとに、将来像の手がかりとなるアイデア、キーワードなどを書き出しておく。

E将来コンセプトの図化
 :前回出された様々なアイデア、キーワードを、場所と結びつけて捉えて、将来コンセプトを図化していく。合わせて、その表現方法についても学ぶ。
準備学習:前回出されたアイデア、キーワードを場所と結びつけてみる。コンセプトを図化するのに役立つ事例を探しておく。

F将来コンセプトのまとめ
 :将来コンセプトを図にまとめて、プレゼンテーションする。それをもとに、どのように計画に落とし込んでいくのかをスタジオ全体で議論する。
準備学習:将来コンセプトは、図を中心として、言葉では補足する程度のつもりで、まとめていく。言葉に頼りすぎないプレゼンテーションの工夫をする。

G分野別計画図の作成
 :将来コンセプトから都市計画の所要な内容毎の分野別計画図を作成する。
準備学習:将来コンセプト図から、計画図を作成してみる。都市計画の主たる内容である、土地利用、交通、緑・オープンスペース、防災、住環境などの項目に分けて(学部2年次で習った内容を復習)、作業を進める。

H計画総括図の作成
 :分野別計画図は比較的詳細に描き込んでおくが、全体を一覧できる総括図を描くには、描く情報を取捨選択する必要がある。重要度の高いもの、インパクトの強いものはどれか等を検討して、作成していく。作成した総括図から、それを実現するための戦略を議論する。
準備学習:分野別計画図の完成度を高めながら、総括図を描いてみる。

I将来計画のまとめ
 :コンセプトを確認しながら、それに整合した将来計画としてまとめ、プレゼンテーションする。それをもとに、計画実現のために採るべき戦略の議論を進める。
準備学習:将来計画総括図・分野別計画図を完成させ、そのプレゼンテーションの準備をする。

■第3フェーズ(実現のための戦略の考察)
J計画実現の手法の検討
 :将来計画を実現するにはどこで、どのような手法を採るべきか。
準備学習:第4回で概略説明し、その後グループで学習を進めてきた都市計画を実現するための手法(事業、規制・誘導)を改めて整理し、対象都市に適用するメニューを考えてみる。

K計画実現の時系列での割り付け
 :将来計画を20年間で実現するには、どの時期に何をしていくのかを、重要度、緊急度、要する時間などから検討して、実現のためのロードマップを作成する。
準備学習:計画内容を重要度、緊急度、着手から完成までに要する時間などによって、分類してみる。

Lここまでの作業の振り返り
 :ここまでの作業全体を振り返り、足りない部分を確認して、必要な調査・考察・ディスカッションで補っていく。
準備学習:ここまでの作業全体を俯瞰して、最終成果物のモックアップを作成してみる。

■第4フェーズ(最終まとめ)
M最終成果の発表・成果物提出
 :ここまでの成果全体(調査・分析、計画立案、実現戦略)をまとめて、わかりやすく発表する。
準備学習:発表用のPPTの作成、成果報告書のとりまとめをする。

<成績評価方法及び水準>
授業中に実施するグループ毎のプレゼンテーション、ディスカッションへの参加状況(発言頻度やその内容)、最終的な成果物の完成度、等をもとに総合的に評価する。

<教科書>
指定しない。

<参考書>
1)「まちづくりデザインのプロセス」日本建築学会編(日本建築学会)
2)「建築設計資料集成:地域・都市I プロジェクト編」日本建築学会編(丸善)
3)「建築設計資料集成:地域・都市II 設計データ編」日本建築学会編(丸善)
4)「まちの見方・調べ方 地域づくりのための調査法入門」西村幸夫・野澤康編(朝倉書店)
その他、授業の中で適宜紹介していく。一般的な文献の他に、対象とする都市およびそれ以外の参考となる都市の行政資料等を、必要に応じて参考にしていく。

<オフィスアワー>
出題責任者の野澤のオフィスアワーは、火曜日10:30〜11:30である。
また、それ以外でも適宜対応するが、事前に下記のメールアドレスに連絡してアポイントを取っておくことを推奨する。いずれの教員でも対応可能である。
野澤 康 nozawa@cc.kogakuin.ac.jp
星 卓志 hoshi@cc.kogakuin.ac.jp
遠藤 新 arata@cc.kogakuin.ac.jp

<学生へのメッセージ>
都市系研究室所属の学生には必須であるが、それ以外の学生にとっても、これまでには経験したことのないスケール感の計画に触れる良い機会であり、履修を奨励する。
グループ運営はとても難しいと思うが、それを乗り越えて良い成果を出してくれることを期待する。
授業前日や当日に慌てて作業するのではなく、計画的に作業を進める習慣も身につけてほしい。


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