2014年度工学院大学大学院・建築学専攻

医療施設計画特論(Theory of Health Care Facilities)[4702]


2単位
長澤  泰 教授  
[ 教員業績  JP  EN ]

最終更新日 : 2014/10/01

<授業のねらい及び具体的な到達目標>
少子高齢社会の中で、日本でも人生の長さ LOL:Length of Life よりも人生の質 QOL:Quality of Life を重視する見方が一般化してきた。このような中で健康は人生の質を保証する重要な要素である。ただし、健康は単に病気を持たない状態と言うよりも、もっと広い概念(世界保健機関:健康の定義:身体的・精神的・社会的に安寧な状態)である。このような広い視野に立って病院を中心とする医療施設の計画設計について専門的な知識を身につけ、現実社会の医療施設に対して理解を深め、設計や建設で役立つ見識と知識を体得できるようになる。また、英論文の輪講を行って大学院生として英文献に親しめるようになる。

<授業計画及び準備学習>
第01回 建築と施設
建築とは? 建築の役割 1生活活動の場、2安全・安心の容器、3環境制御装置、4芸術作品、5資産としての視点 ヴィトルヴィウス、用 計画理論(機能性)・美 造形理論(芸術性)・強 構造理論(耐久性)・財 経済理論(社会性)について分かるようになる。

第02回 建築学・建築計画学
建築学の分野、建築計画の発生、建築計画の定義、専門化する建築計画、建築計画の広がり、計画と設計デザインという行為、建築計画の調査研究、使われ方調査、POE、様式主義・機能主義・形態主義について分かるようになる。
   
第03回 住まいと施設 
「住まい」とは何か? 医療施設・教育施設・福祉施設等の施設とは何か? 施設の発生、トータル・インスティテューション Total Institution 全制的施設 とは何か? 施設病とは何か? 不特定多数と個の要請について分かるようになる。

 <第01回−第03回までは、後半の医療施設の専門的講義内容を理解するため知識と考え方を体得する段階で、ここまでに基礎知識の習得を達成する。>

第04回 病院建築の歴史
病院形態の変遷、5つの波、転地療法型病院、修道院型収容病院、宮殿転用型病院、看護療養型病院、身体治療工場型メガホスピタル(巨大病院)について分かるようになる。
    
第05回 建築と設備
病院建築の特徴、病院設備の特徴、ユニバーサルデザイン ハートビル法について分かるようになる。

第06回 病院建築計画の基礎 地域施設計画
(1)機能計画、(2)規模計画、個数規模と面積規模、規模算定、(3)立地計画、用途制限・面積・形状・高低差・方位・地質・入手価格について分かるようになる。

第07回 病院建築計画の基礎 単体全体計画(1)
(1)配置計画、容積率・建ぺい率・道路斜線制限・敷地斜線制限・北側日影制限、来院患者の動線、職員出勤・離院の動線、物品の搬入・搬出サービス動線、(2)ブロックプラン 病棟・外来・診療・管理・供給の5部門、(3)動線計画 患者(外来・入院)、来訪者(家族・付添・見舞)、医療提供者(医療・看護・コメディカル)、サービス(事務・メンテナンス・委託)について分かるようになる。

第08回 病院建築計画の基礎 単体全体計画(2)
(4)物流計画 医療(機器・薬剤・滅菌材料など)、看護(リネン・清拭など)関係の物品のほか、検体(検査用の血液・組織など)、患者給食、各種データ(検査結果・放射線撮影フィルム・診療録など)、事務書類(伝票・用紙など)、廃棄物(ごみ・感染危険物・放射性物質など)患者の遺体、(5)情報計画 患者の診療・看護(放射線画像・検査結果・診療録など)に関するものや病院の管理(物品の発注・依頼請求など)に関するもの、(6)安全計画 日常災害と非常時の災害、(7)成長と変化への計画について分かるようになる。 

第09回 病院単体の部門計画(1)
(1)病棟部門 病棟形態の変遷、ナイチンゲール病棟、ベイ(湾)型病棟、中廊下型病棟、複廊下型病棟、看護単位と管理単位、単位の規模とNSの位置、(2)外来部門 診療の流れ、待ちと迷い、(3)診療部門 診断・治療(診療)、 検査部、 放射線部、 画像診断部、手術部、 リハビリテーション部について分かるようになる。 

第10回 病院単体の部門計画(2) 
(4)供給部門 滅菌材料部、 薬剤部、 給食部、 洗濯部、 エネルギー部、 SPD:Supply Processing and Distribution (5)管理部門について分かるようになる。 

第11回 施設のライフサイクル
(1)設計者と生産者、(2)施設の一生、 企画・計画、設計、申請、発注・施工、竣工検査・調整、使用・保守、解体・廃棄・再利用 (3)病院建築のライフサイクルコストについて分かるようになる。

第12回 ファシリティマネージメントとファシリティマネージャー 国際標準規格(ISO)国際標準化機構 ISO  International Organization for Standardization  ISO/TC267 (AM :Asset Management ISO/TC 251 BCP Business Continuity Plan : 機能維持計画 、施設の性能・ 施設のファシリティマネージメント業務について分かるようになる。

第13回 英国の医療施設計画研究の概論 
病院建築計画が日本と同様に発展した英国の状況について分かるようになる。

第14回 世界の病院建築
日本以外の海外での病院建築の状況について分かるようになる。

第15回 21世紀の病院
超急性患者への対応として、救命救急装備と医療看護態勢を備えたICU的な環境、一方で高齢社会におけるリハビリテーション・長期慢性疾患・認知症などへの対応、また、健康増進・予防・精神疾患への対応への方向が予想されている今後の「病院」のあり方について分かるようになる。

<第04回−第14回は、医療施設計画の専門分野知識の習得が達成目標である。>

毎回の講義の冒頭にB6版の 講義NOTE を配布し、講義終了時間の前10分ほどの時間を取り、講義内容からキーワードを掲げて、それについての小レポートを作成し、講義終了時に回収する。これは講義内容の理解度を評価するための補助として利用する。

また、大学院生として英論文に親しむため,各講義時間の30分を割いて英論文の読解の輪講を行う。

授業時間内で話せる内容は限られているので、授業時間外で行うべき予習は、担当した英論文について読解しておくことだけでなく、参考書に挙げた広範な図書を全般的に読んでおくことが望ましい。

<成績評価方法及び水準>
期末に提示する期末レポートの90満点の採点で評価する。
英文論文輪講時の発表を10点満点で評価する。
上記の二つの評価を加算して,100点満点で最終評価とし、60点以上を合格とする。

<教科書>
「特に指定なし」テーマごとにプリント資料を配付する。

<参考書>
1)Marcus Vitruvius ウィトルウィウス建築書 森田慶一訳註 東海大学出版会 東京 1−682 1969
2)石毛直道 住居と空間の人間学 SD選書54 鹿島出版会 東京 1-284 1979
3)Verderber S , Fine D J , Healthcare Architecture in an Era of Radical Transformation Yale University Press 2000
4)Florence Nightingale Notes on Hospitals 1863 病院覚え書  湯槙ます監修 薄井担子 小玉香津子 田村真ほか編訳 ナイチンゲール著作集 第二巻 現代社 1974
5)小川鼎三 医学の歴史 中公新書39 中央公論社 1964
6)長澤泰編著、在塚礼子・西出和彦著、建築計画 改訂版 市ヶ谷出版社、2011
7)Nufffield Foundation Hospitals Trust Studies in the Functions and Design of Hospitals  Oxford University Press 1955
8)長澤泰ほか 建築が病院を健院に変える 彰国社 2002
9)古川修 永井規男 江口禎 建築生産システム 新建築学大系 編集委員会編 新建築学体系 44 東京 1−408 彰国社 1982
10)岡田光正 藤本尚久 曽根陽子 住宅の計画学 鹿島出版会 東京 1−216 1984
11)Florence Nightingale Notes on Nursings 1863 看護覚え書 湯槙ます監修 薄井担子 小玉香津子 田村真ほか編訳 ナイチンゲール著作集 第一巻 現代社 1975
12)伊藤誠 長澤泰ほか 新建築学体系31 彰国社 2000
13)日本建築学会編 建築設計資料集成 総合編 福祉・医療 丸善 2001
14)Thompson J D Goldin G The Hospital A Social and architectural history New Heaven and London Yale University Press 1975
13)Francis S Glanville R Building a 2020 vision, Future Healthcare Environment The Nuffield Trust 2001
15)H スモール 田中京子訳 ナイチンゲール神話と真実 みすず書房 2003

<オフィスアワー>
講義時間帯の前後、メアド donpayasusin@gmail.com

<学生へのメッセージ>
病院建築は設計と建設に際して特に難解な建物ですので、本学において専門的な知識を身につけてください。

 

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