2012年度工学院大学大学院・システムデザイン専攻

地震防災学特論(Advanced Theory of Engineering Seismology)[4703]


2単位
宮村 正光 教授  
[ 教員業績  JP  EN ]

最終更新日 : 2012/11/09

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
震災は、地震という自然現象が人間社会の営みや社会システムを破壊する社会現象です。その規模や様相は、地震の規模に依存するだけでなく、人々の生活スタイルや社会背景に密接に関係します。講義の内容は4部構成になっています。前半では地震防災学に取り組むプロセスを説明し、地震の性質や特徴を理解して、過去の震災事例を考察します。後半では震災の教訓に基づき、将来の都市震災を予測、低減するために有効な社会工学的なアプローチの考え方を紹介し、実践的な対策を外部講師も交えて考えていきます。地震災害を分析する基本的な方法を習得し、都市災害の具体的なイメージを描いて、効果的な対策を提案できるレベルを目標にします。

<授業計画及び準備学習>
講義は概ね以下の流れ沿って進めますが、授業の進捗によって、内容を変更することがあります。できるだけ地震防災について関心を持ち、意識を高めるよう心がけてください。
第一部:地震を知る
1.ガイダンス、地震防災学とは:講義の全体構成、地震工学と社会科学、安全学、リスク認知と災害心理学、日本人の災害観、防災学研究のプロセス
2.災害から見た地震現象、地震の姿を知る:
地震学と地震工学、大地震の起こり方、種類と特徴、海洋型と内陸地震、地域的な特性と頻度分布
3.地面の揺れ方を探る、地震動の観測と揺れの特徴:地震観測の方法、、観測システム、揺れの強さを決める主な要素、震源近くの地震動、観測波形の特徴、長周期地震動とは
4.地形、地盤の影響と建物に作用する地震荷重:断層の破壊プロセスと地盤の影響、軟弱地盤と硬質地盤の揺れ方の特徴、予測する地震動と設計で考慮する地震動、建物に作用する地震荷重の考え方
第二部:災害を知る
5.国内の震災を振り返る、震災は教訓を伝えたか:震災発現のプロセス、震災の分析方法、時代背景と被害様相の変遷、被害が繰り返される要因、プラスとマイナスの側面
6.都市型震災の特徴:東日本大震災、阪神大震災とメキシコ地震、構造物の損壊パターンと主な要因、都市直下地震と広域海洋型地震の被害様相、国内外で発生する大震災
第三部:地震防災学とは
7.社会工学的アプローチによる被害低減:東日本大震災の断面、新たな視点と考え方、都市に潜む潜在的なリスクと盲点、被害連関図の作成、被害の波及と相互連関、社会背景と被害要因
8.災害ポテンシャルの評価方法:都市のぜい弱性の評価、地震リスクの評価法、地域と企業の防災力
9.地震リスクマネジメントと事業継続管理BCM:危機管理、リスクマネジメントの考え方、リスクとハザード、損失額の確率的な評価、PML、事業継続を実現するBCPとBCM、BCPの考え方と基本プロセス、従来の防災対策との相異
第四部:効果的な対策を考える
10.企業の防災戦略、建設会社のBCP:建設会社のBCPとは、事業継続と応急対応業務、優先業務の選択プロセス、協力会社との連携、建設会社が保有するBCP支援技術
11.BCP実践の課題と展望:事前対策と発災後の対応、ソフトとハードな技術、耐震診断と補強方法、被害想定の手順と課題、ライフラインの被害予測、構造体の健全性から機能性、修復性の評価へ、2次部材、設備機器の被害評価、実践の方法
12.リアルタイム防災システム:地震予知の現状と課題、予知から発生直後の即時対策へ、モニタリング技術の活用方法、緊急地震速報の課題と活用、オンサイト警報、応急危険度判定、簡易評価法
13.研究所、現場などの訪問(予定):企業の研究所や建設現場の訪問、担当者との意見交換
14.外部講師による講義(予定):外部講師による講義と意見交換
15.課題説明と全体討議、地震防災学の展開の方法:学習内容の確認、自由討議

<成績評価方法及び水準>
授業への出席状況、課題レポート、自由討議などを総合的に評価します。

<教科書>
地震防災と安全都市、都市・建築防災シリーズ5 鹿島都市防災研究会編著、鹿島出版会
必要な資料を適宜配布します。

<参考書>
都市大災害、河田恵昭、近未来社
震害に教えられてー耐震構造との日月ー梅村 魁、技報堂出版
安全学、村上陽一郎、青土社
リアルタイム地震学、菊池正幸、東京大学出版会
安全安心のための社会技術、堀井秀之編、東京大学出版会
災害と日本人、廣井 脩、時事通信社

<オフィスアワー>
月〜金曜日(原則9時〜17時)は研究室にいます。授業に直接関係ないことでも気楽に相談に来てください。長年民間企業に在籍してきた経験を皆さんにお伝えします。

<学生へのメッセージ>
防災対策は、受身ではできません。自ら問題意識を持ち、日常に隠れる潜在的なリスクを積極的に探し出し、有効な対策を提案していくことが大切です。講義や自由討議を通して学ぶ内容は、単に地震防災対策に活用されるだけでなく、設計業務や建設現場等で、企業が求める様々な場面に展開できます。懸念される大地震への効果的な対策を一緒に考えていきましょう。

 

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