2011年度工学院大学大学院・システムデザイン専攻
☆地震防災学特論(Advanced Theory of Engineering Seismology)[4702]
2単位 宮村 正光 教授 [ 教員業績 JP EN ]
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 震災は、地震という自然現象が人間社会の営みや社会システムを破壊する社会現象です。その規模や様相は、地震動の強さに依存するだけでなく、人々の生活スタイルや社会背景に密接に関係します。講義の内容は4部構成になっています。前半で地震の性質や特徴を理解し、観測される地震動の特性、過去の震災事例を考察します。後半では震災の教訓に基づき、将来の都市震災を予測、低減するために有効な社会工学的なアプローチの考え方を紹介し、実践的な対策を外部講師も交えて考えていきます。地震災害を分析する基本的な方法を習得し、都市の災害のイメージを描いて、効果的な対策を提案できるレベルを目標にします。
- <授業計画及び準備学習>
- 講義は概ね以下の流れ沿って進めますが、授業の進捗によって、内容を変更することがあります。できるだけ地震防災について関心を持ち、意識を高めるよう心がけてください。
第一部:地震を知る 1.地震発生のメカニズム:地震学と地震工学の役割、大地震の起こり方、地域特性と頻度分布 2.地震動の観測と揺れの特徴:地震観測の方法、地形、地盤条件と観測記録の特徴、地震動強さの評価と建物に与える影響 3.地震動の分析方法:時刻歴と周波数領域での分析法、スペクトル解析等 第二部:災害を知る 4.震災は教訓を伝えたか:震災の分析方法、被害様相の変遷、プラスマイナスの要因 5.過去の被害地震の分析:被害連関図の作成法、国内外の大地震の分析、直接被害と生活支障 6.都市型震災の特徴:阪神大震災とメキシコ地震、構造物の損壊パターンと主な要因、直下型と海洋型地震 第三部:都市の盲点を探る 7.社会工学的アプローチによる被害低減:新たな視点と考え方、都市に潜む潜在的なリスクと盲点、災害観とリスク認識、社会背景と被害要因 8.災害ポテンシャルの評価:都市のぜい弱性の評価、地震リスクの評価法 9.都市の被害予測:建物、ライフライン等の被害予測手法、被害の連鎖と伝播 第四部:効果的な対策を考える 10.企業の防災戦略 事業継続計画BCP:リスクマネジメントとBCPの考え方、従来の防災対策との相違、重要業務の事業継続 11.地震対策を支援する各種の技術:事前、事後の対策技術、ソフトとハードな技術、耐震診断と補強方法、早期復旧支援技術 12.リアルタイム防災システム:地震発生後の即時対策、緊急地震速報の課題と活用 13.研究所、現場などの訪問(予定):企業の研究所や建設現場の訪問、担当者との意見交換 14.外部講師による講義(予定):外部講師による講義と意見交換 15.課題説明と討議:学習内容の確認、自由討議
- <成績評価方法及び水準>
- 授業への出席状況、課題レポート、自由討議などを総合的に評価します。
- <教科書>
- 地震防災と安全都市、都市・建築防災シリーズ5 鹿島都市防災研究会編著、鹿島出版会
必要な資料を適宜配布します。
- <参考書>
- 都市大災害、河田恵昭、近未来社
震害に教えられてー耐震構造との日月ー梅村 魁、技報堂出版 安全学、村上陽一郎、青土社 リアルタイム地震学、菊池正幸、東京大学出版会 安全安心のための社会技術、堀井秀之編、東京大学出版会
- <オフィスアワー>
- 月〜金曜日(原則9時〜17時)は研究室にいます。授業に直接関係ないことでも気楽に相談に来てください。長年民間企業に在籍してきた経験を皆さんにお伝えします。
- <学生へのメッセージ>
- 防災対策は、受身ではできません。自ら問題意識を持ち、日常に隠れる潜在的なリスクを積極的に探し出し、有効な対策を提案していくことが大切です。講義や自由討議を通して学ぶ内容は、単に地震防災対策に活用されるだけでなく、設計業務や建設現場等で、企業が求める様々な場面に展開できます。懸念される大地震への効果的な対策を一緒に考えていきましょう。
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