2010年度工学院大学大学院・機械工学専攻

熱・統計力学特論(Statistical Mechanics and Thermodynamics)[4402]


2単位
中澤 宣也 教授  
[ 教員業績  JP  EN ]

最終更新日 : 2010/11/24

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 ゴムに錘をつけて暖めると縮む。また,断熱的に伸ばすと温度が上昇する。これは何故か。ゴムの長さによるエントロピー変化が鍵である。このような現象の解析に必要な「統計力学」を主題として講義する。気体,液体,固体のようにアボガドロ数(10の23乗)個の構成要素からなる系を記述するには特別の工夫が必要となる。「もの」をミクロな粒子の巨大な集合とし(ゴムは高分子の鎖が多数折れ曲がって出来ている),統計的な手法で物性を記述する方法を学ぶ。気体の性質を通して学んだ熱力学を、非常に多くの粒子からなる系の統計的な性質から、もう一度学びなおしてみたい。特に,エントロピーの概念を、ボルツマンのエントロピーの式(S=klogW)を通して理解しなおし,それから出発して、統計力学の基本原理,状態方程式,分配関数,マクロ系の熱力学関係式等について勉強する。また固体中の自由電子のように,多数の同種粒子があるときには,個々の粒子をどこまで識別できるかが問題となる。これに関連して量子力学の基礎にも触れ,自然界の粒子がフェルミ統計,ボース統計と呼ばれる全く振る舞いが異なる2種に分類できることを学び,超伝導や超流動等の巨視的な量子現象も話題とする。
 さらに、情報とエントロピーの考えにも触れる。

<授業計画及び準備学習>
第1週:アボガドロ数の大きさと、そのような分子数からなる集団の統計的な特質。二項分布と気体の
    拡散。不可逆現象とは。
第2週:エネルギー等分配の法則。場合数の数え方。階乗計算に関するスターリングの公式。
第3週:温度はどう定義されるか。エントロピーについてのボルツマンの公式。
第4週:全エネルギーが一定の、孤立した系での平衡状態。ミクロカノニカル分布。拘束条件が
    あるときの最大最小問題、ラグランジュの未定乗数法。
第5週:気体分子の速度分布則。マクスウエル−ボルツマン分布。
第6週:一定温度の熱浴に浸された系の平衡状態。ボルツマン因子。カノニカル分布。
第7週:熱力学の諸関数(ヘルムホルツの自由エネルギーF、ギブスの自由エネルギーG、
    エンタルピーH等等)の意味は。
第8週:分配関数から熱力学の諸関数を導く方法。
第9週:統計力学の応用1。気体の状態方程式の導出。ゴム弾性の話。
第10週:統計力学の応用2。二準位系の比熱の計算他。
第11週:粒子数が変化する場合の扱い。化学ポテンシャルの意味。グランドカノニカル分布。
第12週:同種粒子は識別できるのか。古典論と量子論の違い。不確定性原理。
第13週:電子(フェルミ統計)の振る舞い。
第14週:光子(ボース統計)の振る舞い。
第15週:まとめ

<成績評価方法及び水準>
授業中に2回のレポート(各30点満点)、授業終了時に1回のレポート(40点満点)の提出を要求し、その合計(満点100点)が60点以上の者を合格とする。

<教科書>
講義ノートを配布する。

<参考書>
授業時に適宜指示する。

<オフィスアワー>
木曜日3時限(新宿校舎)A-2734
面談、質問のある者はメールで予約すること。nakazawa@cc.kogakuin.ac.jp

<学生へのメッセージ>
熱力学だけでは漠然としていたいろいろな量が、統計力学的視点からみると随分とはっきり見えてきます。熱力学をもう一度復習しながら理解を深めましょう。

 

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