2010年度工学院大学大学院・機械工学専攻

伝熱工学特論(Advanced Basic Heat Transfer)[4201]


2単位
大竹 浩靖 教授  
[ 教員業績  JP  EN ]

最終更新日 : 2010/11/24

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
 伝熱現象は、エネルギー機器を中心に、広範な分野に関連する基礎的過程である。また、古くから今日に至るまで、高熱負荷条件の熱移動技術の代表例として相変化を利用した伝熱現象(水の沸騰や氷の融解等)が、産業界および日常生活で使われ続けている。エネルギー問題および地球環境問題が取りざたされている現代および近未来においても、この伝熱現象および相変化伝熱技術は手軽で安価で高い能力を有する熱輸送手段として重要な位置を占める(例えば、ヒートパイプによるMPUの冷却や氷蓄冷等)。
 本講義では、熱力学、流体力学および伝熱工学に基礎をおき、熱伝導、単相伝熱現象および気液の相変化伝熱現象を物理的に理解するとともに定式化し、それらのエネルギー輸送量を定量的に理解することを目的とする。併せて、幾つかの演習問題を解くことにより、熱工学のセンスを磨く。

<授業計画及び準備学習>
1.伝熱概説:熱力学第二法則と伝熱。熱伝導概説(機構およびフーリエの法則)、対流伝熱概説(ニュートンの冷却法則と強制対流・自然対流)、放射伝熱(機構およびステファン・ボルツマンの法則)。
2.熱伝導1:熱伝導の基礎(支配)方程式(直交座標系、円柱座標系、球座標系)。境界条件。一次元定常熱伝導(平板等)。
3.熱伝導2:二次元定常熱伝導。一次元非定常熱伝導。熱伝導の数値計算。
4.対流熱伝達の基礎:対流熱伝達の基礎(支配)方程式(連続の式、運動量式、エネルギー式)。速度境界層と温度境界層、境界層方程式。次元解析、相似則、熱伝達の無次元表示。強制対流熱伝達と自然対流熱伝達。
5.層流熱伝達1:相似解(厳密解)。境界層の運動量積分式とエネルギー積分式(プロフィール法)。
6.層流熱伝達2:円管内の層流熱伝達。自然対流熱伝達。
7.乱流熱伝達
8. 放射伝熱1:電磁波、射出能、黒体放射(Planckの法則)、Stefan-Boltzmannの法則。
9. 放射伝熱2:灰色体、Kirchhoffの法則、形態係数、放射熱伝達。
10. 相,相変化および相平衡の概説:相律、Clausius-Clapeyronの式、van der Waalsの式、臨界点と過熱限界、相の安定性(平衡条件と安定条件)。
11. 沸騰伝熱概説:沸騰曲線。
12. 核沸騰熱伝達:沸騰開始条件、気泡力学(慣性支配と熱拡散支配)、気泡サイクル、発泡点密度。
13. 限界熱流束:概要、相関式、各種モデル、圧力依存性。
14. 界面安定性(線形安定論:Rayleigh-Taylor不安定とKelvin-Helmholtz不安定)と膜沸騰熱伝達(Bromleyの式)、極小熱流束点および遷移沸騰熱伝達。
15. 最終試験

<成績評価方法及び水準>
原則として最終試験(レポート形式)で評価し、60点以上の者に単位を認める。

<教科書>
「JSMEテキストシリーズ 伝熱工学」日本機械学会(丸善)

<参考書>
(1) 日本機械学会編,沸騰熱伝達と冷却,日本工業出版
(2) 甲藤,伝熱概論,養賢堂
(3) 棚澤・西尾・前川,伝熱工学,朝倉書店
(4) 庄司,伝熱工学,東大出版会
(5) 甲藤・佐藤・西川・水科・森,伝熱学特論,養賢堂

<オフィスアワー>
主として,講義日(木曜日)の昼休み、講義教室にて。授業終了直後、その旨申し出て下さい。

<学生へのメッセージ>
熱力学(化学熱力学も含む)を始め、流体力学および伝熱工学を基礎に、相変化伝熱に関する知識を展開します。併せて、放射伝熱に関し量子力学、蒸発および凝縮の素過程に関し気体分子論の基礎知識も利用します。

 

このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2010 Kogakuin University. All Rights Reserved.