2019年度工学院大学 先進工学部環境化学科

社会思想B(Social Thoughts B)[1K42]

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2単位
木下 ちがや 非常勤講師  
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
2011年3月の原発震災以後、日本社会では近年みられなかった社会運動が台頭している。この社会運動は、原発事故というショックに対応して台頭したが、しかしその性格は、21世紀という特殊な時間におおきくは規定されていると思われる。この授業では、第二次世界大戦後の日本の社会運動と政治の関係について論じながら、この現代の社会運動を構造的に規定する要因について論じていく

<受講にあたっての前提条件>
本授業は、ただたんに戦後日本の「社会運動史」を論じるのではなく、社会運動の背後にある、戦後日本の政治や経済、文化のありかたを重視して論じていく。したがってある程度の日本の戦後史についての知識が前提になる。

<具体的な到達目標>
本授業は、「社会運動」をテーマにしながら、それをとりまく戦後の政治・社会・経済について論考えていくことを重視します。本授業は専門性よりも、「社会問題」を総合的な視点から理解し、考察していきます。毎回の講義でレジュメを配布し、それにもとづいて講義をしていきます。レジュメの内容と講義内容をきちんと把握し、そのうえで自分の意見を確立していくことを目標とし、評価の基準とします。

<授業計画及び準備学習>
第一回:導入―近代と社会運動―本講義では、主に第二次世界大戦後の、日本国憲法制定下での社会運動をとりあげていく。その前提として、近代化と社会運動の関係について講義する。

第二回:敗戦と戦後民主主義➀ー敗戦と占領、民主化という、日本の近代化の特殊な過程が、現在にいたるまでの日本の社会運動の特性をつくりあげた。その形成過程について講義する。

第三回:敗戦と戦後民主主義Aー占領下の社会運動は、民主化期と冷戦期というふたつの時期をまたいで展開していく。このふたつの時期の転換が、日本の社会運動にどような刻印をきざんだかを講義していく。

第四回:安保闘争と高度成長➀ー1950年代に日本は「独立」し、高度経済成長期にはいり、この時期に本格的な大衆的社会運動が形成されていく。1960年の安保闘争にいたるまでの社会運動のプロセスについて論じていく。

第五回:安保闘争と高度成長Aー1960年の日米安保反対運動は、日本史上最大の運動であるとともに、その後の日本政治の在り方を規定する画期的なものであった。この運動が戦後日本を象徴する運動になっていった過程について講義する。

第六回:1968年と世界ー1968年は、ベトナム戦争と公民権運動を背景に、世界同時的に大規模な社会運動が台頭した。しかもこの社会運動、それまでの労働組合中心から「新しい」社会運動に変化する契機でもあった。この変化の構造と背景について講義する。

第七回:1968年と日本ー1968年は日本でも、学生運動を中心に激しい社会運動が行われた。しかし、他国とは異なる展開をし、その後社会運動が停滞していく契機ともなった。高度成長を経て経済大国化した日本の変容と社会運動の関係について講義する。

第八回:企業社会と運動の衰退ー高度経済成長を経て形成された「日本型大衆社会」とは何か。またその社会がどのようにして日本の社会運動の担い手や要求を変貌させたかについて講義する。

第九回:企業社会と労働運動の衰退ー「日本型大衆社会」における社会運動の衰退の中心は、労働組合運動の衰退にある。日本の労働組合運動がどのように形成され、そしてなぜこの時期に衰退したのかについて講義する。

第十回:新自由主義・グローバル化と社会運動➀ー1980〜90年代にかけて、東アジア、東欧では民主主義革命が台頭し、冷戦崩壊後にむけた新たな社会運動がかたちづくられていく。そのプロセスを、同時期の日本の社会運動の状態を対比しつつ講義する。

第十一回:新自由主義・グローバル化と新たな社会運動Aーグローバル化は「格差・貧困」という課題を生み出し、世界的にグローバル化に抵抗する社会運動が台頭する。日本でも貧困を課題とした社会運動がふたたび登場した。この時代の変容の構造と背景について講義する。

第十二回:3・11後の社会運動➀ー東日本大震災と原発事故という「複合災害」は、日本の「安全神話」を崩すとともに、新たな大衆的な社会運動を生み出した。その形成のプロセスについて講義する。

第十三回:3・11後の社会運動Aー日本で「複合震災」が発生した2011年は、世界的にみてもアラブ革命、オキュパイ運動など、現在の世界的な政治の動向を反映した大規模な社会運動が発生した年でもあった。この時代以後の社会運動の特徴について講義する。

第十四回:3・11後の社会運動Bー世界的なポピュリズム政治の台頭をはじめ、不安定化する政治と経済のなかで、社会運動はどのような役割を果たしていくのか。その可能性と意義について講義する。

第十五回:
まとめ

<成績評価方法>
試験あるいはレポートで評価する。変更がある場合には授業内で指示する。

<教科書>
特に指定しない

<参考書>
以下の文献をもとに、授業を行っていくので、参考にせよ。
小熊英二『社会を変えるには』講談社現代新書、2012年、講談社現代新書
小熊英二、木下ちがや共同編集『原発を止める人々―3・11から官邸前まで』2013年 文藝春秋社

<オフィスアワー>
各授業後

<学生へのメッセージ>
とにかくおおまかにでも歴史的な事実を知ることが大事です。講義で興味をもったら、こういうものを読んだらいいというアドバイスをしますので、聞いてください。 なお、授業中、必要なコミュニケーション以上の私語を行っていると判断した場合には、ただちに退席してもらいます。


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