2019年度工学院大学 情報学部システム数理学科

応用計量経済分析演習(PBL)(k)[3H20]

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1単位
矢崎 敬人 准教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
受講者が,計量経済分析の基礎を理解すること,分析の目的に合わせた分析手法を活用できるようになること,統計分析向けプログラミング言語Rを用いて社会・経済分野のデータの統計分析を適切に行う力を身につけることが,この授業のねらいである.

<受講にあたっての前提条件>
「確率・統計I」,「多変量解析」,「多変量解析演習」を修得していることを前提として授業を進める.

<具体的な到達目標>
○統計分析ソフトウェアを用いて基本統計量の計算やデータの視覚化を行うことができる.
○さまざまなデータ分析手法を理解し,データの性質に応じて適切な分析手法を選択し,統計分析ソフトウェアを用いて分析を行って結果を適切に解釈することができる.
○具体的なデータを基に適切な分析方針を立て,統計分析ソフトウェアを用いて適切な分析を行い,分析内容と結果を説明することができる.

<授業計画及び準備学習>
※可能な限り,毎回の授業にノートパソコンを持参することを推奨する(特に初回).
※原則として毎回演習課題を出す.

●授業計画([]内は教科書の対応する部分)
1.ガイダンス,Rの基本操作,データの整理,統計理論の基礎[第2章,第3章]
2.線形単回帰モデル[第4章]
3.重回帰モデル1:重回帰モデルと欠落変数のバイアス,最小2乗法,自由度修正済み決定係数,OLS推定量の理論,多重共線性[5.1〜5.5]
4.重回帰モデル2:非線形モデル,複数の制約からなる仮説の検定,変数選択,実証例[5.6〜5.10]
5.パネルデータ分析1:パネルデータ,パネルデータの特徴と分析上の利点,固定効果モデル,固定効果推定量,固定効果推定量の漸近理論[6.1〜6.5]
6.パネルデータ分析2:時間効果・個別トレンドの導入,実証例,パネルデータ分析における決定係数,1階差分変換,変量効果モデル,補足[6.6〜6.12]
7.操作変数法1:欠落変数バイアスと操作変数,操作変数法,漸近理論,2段階最小2乗法,2SLS推定量の漸近理論[7.1〜7.5]
8.操作変数法2:操作変数が適切かどうかの判定,実証例のまとめ,固定効果操作変数推定,欠落変数問題以外での操作変数の使い道,操作変数の見つけ方,補足[7.6〜7.12]
9.制限従属変数モデル1:従属変数が限定された値を取る場合の分析,被説明変数が2値変数の場合,被説明変数が離散変数の場合[8.1〜8.3]
10.制限従属変数モデル2:被説明変数が限定された値を取る場合,サンプルセレクションバイアスへの対応[8.4〜8.6]
11.政策評価モデル1:問題の設定,無作為参加割当,属性変数を制御することによる評価,マッチング推定法,線形回帰モデルによる属性変数の制御,ランダム化奨励デザインによる評価[9.1〜9.7]
12.政策評価モデル2:自然実験を用いた内生性の回避,回帰非連続デザイン[9.8,9.9]
13.実証研究の進め方[付録C]
14.学習内容の振り返り

●準備学習
○教科書の対応する部分を熟読しておくこと.

<成績評価方法>
○演習課題得点合計点と期末レポート課題得点を6:4の割合で集計し,A+〜Fの6段階評価を行う.D以上を合格とする.

<教科書>
○西山慶彦・新谷元嗣・川口大司・奥井亮(2019)『計量経済学』有斐閣(New Liberal Arts Selection).

<参考書>
●Rを用いた計量経済分析,データ分析の教科書(本科目の教科書ではなく,一般的な意味での教科書)
○今井耕介(粕谷祐子・原田勝孝・久保浩樹訳)(2018)『社会科学のためのデータ分析入門(上,下)』岩波書店.
 R初心者がRとRStudioを用いて社会科学分野のデータ分析が行えるようになるように,とても丁寧な説明がされている(その分冗長と感じる向きもあるかもしれない).演習問題は政治学分野を中心に最近の実際の研究のデータを用いたものが多数.

○星野匡郎・田中久稔(2016)『Rによる実証分析―回帰分析から因果分析へ』オーム社.
 今井(2018)よりコンパクトで経済データの分析に特化している.

○田中隆一(2015)『計量経済学の第一歩―実証分析のススメ』有斐閣ストゥディア.
 星野・田中(2016)と類似の内容をカバーしている.本文では統計パッケージStataを念頭に置いた説明を行っているが,ウェブサポートではRも扱っている.

○福地純一郎・伊藤有希(2011)『Rによる計量経済分析』朝倉書店.
 今井(2018)や星野・田中(2016)が扱っていない時系列分析も扱っている.

●実証分析を行う際に役立つハンドブック
○山本勲(2015)『実証分析のための計量経済学―正しい手法と結果の読み方』中央経済社.
 さまざまな具体的な状況と分析課題を念頭に,どのような場合にどのような分析手法を用いるべきかを解説した,いわば実証分析のハンドブック.指定教科書である西山他(2019)の第I部,第II部と類似の範囲をカバーしているが,背後の理論を捨象してずっとコンパクトに記述している.卒業論文で社会・経済分野のデータ分析を行おうとする学生に推薦する.実証分析の論文を読む際にも有用.

●副読本
○伊藤公一朗(2017)『データ分析の力―因果関係に迫る思考法』光文社新書.
○中室牧子・津川友介(2017)『「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法』ダイアモンド社.
 社会・経済分野では介入の効果を知るために実験を行うことが困難な場合が多い.これら2冊は,そのような場合にどのような分析を行うことができるかを分かりやすく説明している.前者の方がやや高度.

●さらに…
○Wooldridge, Jeffrey M. (2019), Introductory Econometrics: A Modern Approach (7th Edition), Boston MA: Cengage Learning.
○Stock, James H. and Mark W. Watson (2019), Introduction to Econometrics (4th Edition, Global Edition), Harlow, England: Pearson Education.
 計量経済学理論,応用例,データを用いた演習課題のバランスが良い教科書となると,英語で書かれ,世界中で用いられている上記2冊.どちらも優れている.英語に自信があり,計量経済学を本格的に学びたい学生におすすめ.

<オフィスアワー>
○授業後に教室で受け付ける。
○また,後期は新宿校舎で次のオフィスアワーを設定している(前期については前期開講科目のシラバスを参照のこと).
(新宿校舎A-2778)火曜日11:00-12:00
○その他,上記日時以外でもメールで予約の上で面談可.メールアドレスは情報学部学修ガイダンスに記載.

<学生へのメッセージ>
○授業計画にも書いたように,可能な限り,毎回の授業にノートパソコンを持参することを推奨する.
○必ず自分で手を動かすこと!
○卒業論文で社会・経済分野のデータ分析を行おうと考えている学生には本科目の履修を推奨する.


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