2019年度工学院大学 建築学部建築学科

複素関数論(Elementary Complex Function)[1B10]

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2単位
長谷川 研二 准教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本科目は複素関数論を指導する。微分可能な複素関数である正則関数とは微分積分で習った指数関数や三角関数等の変数を実数から複素数に拡張したものである。それだけでは微分積分と大差ないように見えるかもしれないが、複素数は複素平面上の点とみなされ、特に正則関数の積分については、複素平面上で積分路を設定し、端点を固定しながら積分路を変更しても積分値が変わらない性質がある。これによって複素関数の応用範囲が飛躍的に拡がった。専門分野への複素関数の応用力をつけることが授業のねらいである。

<受講にあたっての前提条件>
微分積分I・IIの内容を理解している。

<具体的な到達目標>
  1. 複素数の演算と複素平面との関係を理解する。
  2. 初等関数の変数を実数から複素数に拡張し、関数値を求める。
  3. 複素関数として微分可能である正則関数とコーシー・リーマンの関係式を満たす2つの2変数関数を同一視できることを理解する。
  4. 正則関数のテイラー展開やマクローリン展開の係数が閉曲線上の積分から求まることを理解する。
  5. 正則関数の閉曲線上の積分や実変数関数の広義積分を留数から求める。

<授業計画及び準備学習>
  1. 複素数と複素平面:
    複素数の実部・虚部を平面の点の座標とみれば複素数は平面上の点と同一視できる。複素数の積・商と複素平面の絶対値・偏角との関係を理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:高等学校で習った三角関数の加法定理を復習をする。
  2. 指数関数と三角関数:
    複素関数としての指数関数の値は絶対値・偏角と深い関係がある。また複素変数であれば三角関数を指数関数で表し、加法定理を指数法則から導き出せる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  3. 対数関数:
    真数条件で正の数に対してしか値が定まらない対数関数は、複素関数にすると0でない複素数に対して絶対値・偏角から値が定まる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  4. 正則関数とコーシー・リーマンの関係式:
    正則関数とは複素変数の意味で微分可能な関数であり、複素関数を実部・虚部に分けると2つの実2変数関数であるが、複素関数が正則であることが2つの実2変数関数の偏導関数がコーシー・リーマンの関係式を満たすことと同値である。これを利用して微分積分で習った初等関数は正則な複素関数になることを理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  5. 複素平面における線積分:
    複素関数の積分は実変数の定積分のように端点だけ決まらず、2点をつなぐ積分路を指定する線積分である。積分路の媒介変数の定積分に変換して積分計算する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  6. コーシーの積分定理:
    複素関数が正則であると積分については積分路の端点のみで積分値が決まる。これをコーシーの積分定理と呼び、微分積分にはなく、複素関数の応用範囲を拡げる重要な定理であることを理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  7. コーシーの積分表示:
    コーシーの積分定理より正則関数を閉曲線上の線積分で表示することができる。これをコーシーの積分表示と呼び、これにより正則関数の重要な性質を導くことができる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  8. 導関数とグルサの定理:
    正則関数の条件は複素関数として1階微分可能であるが、コーシーの積分表示より何階も微分でき、導関数の値も閉曲線上の線積分で表示できる。これをグルサの定理と呼ぶ。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  9. テイラー展開:
    グルサの定理により正則関数のテイラー展開の係数が閉曲線上の線積分で求まり、円領域で収束することを理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:プリントを読んでおく。
  10. 特異点とローラン展開:
    複素関数が正則でない点を特異点と呼び、複素関数がテイラー展開に負の整数のべきの項を加えたローラン展開で表せ、係数は閉曲線上の線積分で求まる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  11. 留数定理:
    ローラン展開の−1次の項の係数を留数という。留数定理とは留数が特異点を囲む積分路の積分値の定数倍と等しいことである。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  12. 位数と留数計算:
    正則関数の特異点ごとの留数を計算することが、複素関数の応用にとって重要であるが、ローラン展開の初項の次数である位数に注意しなくてはならない。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  13. 積分と留数:
    正則関数の閉曲線上の積分や積分区間が無限の定積分である広義積分が原始関数を経ないで留数計算から直接、求まることがある。問題を解き答案用紙を提出する。(試験前最終授業なので、試験前のオフィスアワーで希望者に返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  14. 学習内容の振り返り:
    準備学習:定期試験で解けなかった問題の解き方を考えておく。

<成績評価方法>
試験期間で実施する定期試験の得点が60点以上であればGradeをA+,A,B,Cのいずれかにするが、授業中に解かせた問題の解答状況で決まる平常点によりGradeをCからBにすることがある。(A+,Aは定期試験の得点のみで決める。)定期試験の得点が60点に若干満たない場合は平常点によりGradeをDにすることがある。平常点については授業態度が悪い、あるいは他人の解答を模写した答案の提出が目立つ場合は平常点を成績評価の資料から外すことがある。

<教科書>
  • 指定教科書なし
  • プリントを授業で配布したり、予習のためにキューポートにPDFファイルを事前にアップロードする。

<参考書>
  • 涌井貞美 著「道具としての複素関数」日本実業出版社
  • 立花俊一 他著「エクササイス 複素関数」共立出版
  • 一松信 著「留数解析」共立出版
  • 長谷川研二 他著「理工系のための微分積分」培風館

<オフィスアワー>
月曜日13:00〜14:00(2時限の担当者の授業の教室(教室番号は担当者に確認すること)またはA-2712)


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