2019年度工学院大学 第1部電気システム工学科

事業運営の基礎知識(Management of enterprise and business activities)[4E05]

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2単位
玉川 雅之 特任教授  
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
「ものづくり」など理工系の知識・技術を生かして事業に参加し、社会で活躍しようとする工学院大学の学生に焦点を合わせて、事業を実際に運営し、成功させていく上で有益と考えられる会計、ファイナンス、経営戦略、リスク管理などについての基礎知識を習得できるようにするとともに、基本的な概念(キーコンセプト)やそれらを使った思考方法に馴染めるようにする。

<受講にあたっての前提条件>
工学院大学で専攻する科学技術や工学の知識、スキルを経済社会の中で生かしながら、そのためのプロジェクトや事業に積極的に携わり、成功させたいと思う方に受講してほしい。
会計・ファイナンスや経営学の予備知識は必要としないが、数的処理や計算にも慣れている理工系の学生が習得しやすい学問でもある会計・ファイナンスや経営学を将来さらに学んでいく場合にも役に立つような入門的な視点の提供にも努めたい。

<具体的な到達目標>
1 事業とはどのようなものか、技術やものづくりとどのような関係になるのか、事業を成功させるためにはどのようなことが必要なのかを考察・理解を理解する上で有用な基本コンセプトやキーワードを習得する。

2 事業の状態や成果を正しく観測するために必要な会計(アカウンティング)の基礎概念を理解し、財務諸表の作られ方、読み方についても馴染めるようにする。

3 事業の行う上で必要になるお金(マネー)の意義や、その使い方、調達方法(ファイナンスあるいは財務)の基礎概念を理解する。

4 競争的な環境の下で事業を存続させ、成功させていく上ではどのようなことが重要か、「勝つための戦略」としてどのようなことが論じられてきているかについて理解する。

5 不確実性を伴う環境の下で事業を行う上で向き合わなければならない「リスク」とその賢明な対応方法について理解する。

6 事業の発展に好循環をもたらし、また停滞や悪循環を生じさせる構造的な要因をビジネスモデルとしてとらえ、事業戦略を考察する上での基本コンセプトとして理解し、活用できるようにする。

7 日本経済・企業をとりまく19世紀や20世紀の事業環境から大きく変貌しつつある21世紀型の環境のもとでの事業活動の在り方、とくに日本の企業が比較優位を発揮していける分野と考えられる21世紀型ものづくりの特徴や今後のチャレンジについて理解する。

8 事業を営む上で必要な組織のあり方、そのために発揮されるべきリーダーシップのあり方について理解するために必要な基本コンセプトを解説し、諸君が今後のキャリアデベロップメントを展望する上での参考となるようにする。

9 就職を希望する企業の事業内容やこれまでの業績などを理解し、将来の発展可能性などを考察する上で役立つ知識を提供する。

10 キーワードについては、英語でどう表現するかについても紹介するので馴染んでほしい。

<授業計画及び準備学習>
第1週 事業活動とはどのようなものか
 事業活動とはどのようなものかについて説明する。
とくに「ものづくり」の技術などを生かして自分で起業を行う場合、企業のビジネスに携わる場合、公的な事業に携わる場合あるいは何か重要なプロジェクトの実行に関わる場合などを想像しながら、事業は何のために行っているのか、そのような活動がうまくいくためにはどのような知識が必要か、そのような課題を解決しなければいけないかを考えながら次回以降の講義に積極的に参加できるため導入(イントロダクション)を行う。

準備学習:シラバスをよく読んでおく。

II 事業活動と会計 
第2週 経済取引と会計
 事業活動を行う上では“もの”を売買する、“人”を雇う、“お金”を受けとったり、使ったり、貸したり、借りたりするなどの様々な経済活動、経済取引を積み重ねていくことになる。
そのような経済活動をどうやって記録し、集計し、その結果をまとめるかという観点から、簡単な取引を行う事例に即して、会計の基礎概念を説明し、「売上、キャッシュフロー、経費、収益、資産、負債、企業価値」などの会計用語の意味を理解し、利用可能にするための基礎知識を提供する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第3週 会計関連情報の集計方法
 事業活動の結果は、資産負債残高表(BS)、損益計算書(PS)などの財務諸表として集計、整理されて、企業の業績を分析、理解、説明する際などに利用される。経済取引の集積からBS、PLなどがどのように集計されていくのか、BSやPLの中の主要項目が何を意味するのかを説明し、経済取引に関する基本情報である会計関連情報の集計結果(会計データ)を、事業活動がうまく運営されるために必要な基本的な知識、思考方法などを教授する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第4−5週 会計データの使い方
 会計データを使った思考方法や、BLやPSなどの財務諸表の読み方に馴染んでくると、実際にはどのようなことが分析、理解できるのか。事業活動の成果や変化が会計データに反映され、それをもとに企業経営の今後の方針を策定したり、問題を解決することが必要になる具体的な事例をいくつか紹介しながら、会計データの使い方について解説し、さらに会計を勉強したり、深く理解したい者があれば、学習方法や参考文献を教示する
 併せて、就職希望先として関心のある企業のこれまでの業績を理解し、事業が順調に遠泳されているかなどを考察する上で有益と考えられる会計データの見方についても解説する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく


第6週 事業の成功と失敗、リスク・困難への対応 
 今回はこれまでの講義で説明した、事業活動を会計的にも観察・分析する視点を生かしながら「事業が成功していく好循環」をイメージするとともに、「事業が不振に陥ったり、失敗したりして倒産に陥る場合にはどのような経路をたどり、その帰結がどのようになっているのか」について、実例をあげながら説明する。
 同時に現代の経済学、経営学でも重要な基本概念となっている「リスク」について説明し、事業が順調・円滑に運営されていくために有益な知識を論じる「経営学(論)」のイントロダクションとする。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

III 事業活動とファイナンス
第7週 貨幣(マネー)、金融(ファイナンス)とはどのようなものか
 経済活動は貨幣(お金)を使って行われることがほとんどであり、事業活動の成果も貨幣の額で計算され、お金がたまったり、失ったり、余ったり、不足するといったマネーに関わる事態にしばしば遭遇し、問題解決を迫られる。同時に貨幣の融通などを事業の柱とするする金融サービス事業者が存在し、事業活動においては金融サービス事業者との取引や活用が必要になる。
今回は「マネー、ファイナンスの世界」がどのようなものかを想像・理解するのに必要な基礎知識などを「金融取引」の概念を出発点として使って説明し、事業活動に貨幣や金融がどのように関わるのかを理解するためのイントロダクションとする。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第8週 事業運営とファイナンスの仕事
 事業活動に則して、マネーが関わってくる局面について、 経済取引の支払いと貨幣の移転(キャッシュフロー)に関する実例をスタートに「資金調達」、「資産運用」、「資本戦略」などの基本について説明する。
 さらにマネー、ファイナンスの基礎知識を使って、事業活動をうまく運営していくためにはどのようなことを理解し、考察することが必要かについて解説する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

IV 企業戦略とビジネスモデル
第9週 企業・事業を取り巻く環境への対応と企業戦略
 企業は、似たような商品・サービスを生産・販売する事業者するなど、競争相手がいる中で活動を行い、そのような競争に勝ち抜き、あるいは生き残り、繁栄や高収益を実現するためにはどうすればいいかについて、経営戦略、企業戦略、競争戦略などの「戦略」が議論されて、多くの書物が書店にも並んでいる
 今回の講義では、競争的環境や変化する環境に対応して、企業は繁栄していく上では何が必要かについて、代表的な戦略論の実例を紹介して、その基本的考え方などを紹介する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第10週 ビジネスモデル(1)− ビジネスモデルの基本コンセプト
 事業活動が、似たよう事業者と異なってユニークな強みを持ち、その結果、顧客から選ばれ、売り上げが伸び、収益があがっているあるいは長期にわたって存続・繁栄しているなど競争的な優位を獲得している状況を説明する上では、ビジネスモデルの用語が最近ではよく使われている。
 今回の講義では、ビジネスモデルの基本コンセプトについて説明し、ある企業のビジネスモデルの特徴や、その強み、弱みなどを理解する上では、そのような面に着目して、分析すればいいかにつき、会計、ファイナンスの基礎知識も活用しながら、解説する。
 また、いくつかのユニークなビジネスモデルの実例を紹介し、事業活動が成功し、繁栄する上での方法も多彩であることを説明する。
準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第11週 ビジネスモデル(2)−ICTやインターネットの進展と新たなビジネスモデルビジネスモデル
 
ICT(情報通信技術)やインターネットの発達に伴い新たに登場、発展してきている新たなビジネスモデルについて紹介し、既存のビジネスモデルや旧来の競争的環境にも大きな変革をもたらしている状況を概観する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第12週 21世紀型ものづくりとビジネスモデル
日本経済にとっては、21世紀においても、技術進歩や環境の変化に対応して、付加価値の高いもの(物質やサービスや情報の組みあわせ)を創出していく、21世紀型のものづくりをリードしていくような事業が活発に行われていくことが必要である。
21世紀型の環境の中で事業運営には何が求められるか、製造業もこの20−30年の間にどのような変貌をとげているか、事業を好循環に導くためにはどのようなビジネスモデルが必要かを考察する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

V 組織運営とリーダーシップ

第13週 事業運営と組織、リーダーシップ
プロジェクトや事業は多くの場合、一人ではなく、複数の人が力を合わせ、それぞれが役割を分担して運営される。チーム・組織をどのように編成し、その下で人材をどのように雇用・活用するかによって企業のパフォーマンス、実行力、継続性も大きく変わってくる。
今回の講義では、最終回として、事業を営む上で必要な組織のあり方、そのために発揮されるべきリーダーシップのあり方について理解するために必要な基本コンセプトを解説し、諸君が今後のキャリアデベロップメントを展望する上での参考となるようにする。

準備学習:これまでの授業内容を復習して、理解したことを整理し、翌週の期末試験のため準備を進めるとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく。

【実務経験のある教員による授業科目】
 公的機関を含む様々の事業体の経営に携わった経験等をもとに、理工系の学生にも比較的馴染みやすいと思われる会計・ファイナンスの基礎知識を教授しつつ、学生諸君が卒業後に携わる可能性が高い21世紀型ものづくりをリードする企業等の事業経営などに生かしていくために有益と思われる基本的なコンセプト、ノウハウなどについて講義する。

<成績評価方法>
リアクションペーパーおよび定期試験期間に実施する期末試験で評価を行い、A+〜Fの6段階評価でD以上の者を合格とします。期末試験とリアクションペーパーと期末試験との評価割合は8:2。期末試験のために準備しておくべきことは第11週の講義までに示唆します。

<教科書>
特に指定しない。授業前に講義メモと資料を配布し、講義内容の理解、復習および期末試験の準備に活用できるようにする。

<参考書>
読んでおくと今後のために役に立つと思われる書籍を、授業開始時および授業中に積極的に紹介します。

<オフィスアワー>
木曜13:00〜13:30、新宿校舎13階(常務理事室)
メール連絡先 meetamagawa@aol.com

<学生へのメッセージ>
2017年から開設された3―4年生向けの国際キャリア系の自由選択科目です。
皆さんが工学院大学で学習された科学技術の知識や習得された理数系の学力を、経済社会や企業経営などにも生かしていくための橋渡し役を努め、今後のキャリアデベロップメントに貢献したいと願っています。
秋学期には講義と並行して、就職支援センターとの連携により、21世紀型のものづくりを代表するようないくつかの企業の幹部職員をお招きして、事業内容などを紹介していただくセミナーを開催することを計画しています(自由参加)。

<備 考>
前期科目の「日本経済分析入門」(理工系の学生のための日本経済の理解・観察・分析入門)とは補完的な関係にあり、経済社会と企業活動に関心のある方、就職活動の準備等に役立てたい方は両者を合わせて受講することを歓迎します。
本事業の履修にあたっては前期の事業の履修や予備知識は必要ありませんが、3年生の方には、来年前期の授業の履修にも役立つと思います。


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