2019年度工学院大学 第1部電気システム工学科

日本経済分析入門(Analysis of current Japanese economy)[4E04]

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2単位
玉川 雅之 特任教授  
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本講義の副題は「理工系の学生のための日本経済の理解・観察・分析入門」である。
ものづくりなど理工系の知識・技術を生かしてものづくりなどの事業に参加し、社会で活躍しようとする工学院大学の学生に焦点を合わせ、その活動の主たる場である日本経済の特徴や動態(ダイナミズム)を観察・分析・理解する上で有用と思われる基本的な概念(キーコンセプト)について解説し、経済・社会に関して行う実際の思考の中にも生かせるようにする。

<受講にあたっての前提条件>
工学院大学で専門的に習得する科学技術や工学の知識・スキルが経済社会の中でどのように役立ち、その繁栄に結びついていくかについて考察することに関心がある方に受講してほしい。経済学(ミクロ経済学およびマクロ経済学など)の予備知識は必要としないが、数理モデルの取り扱いに慣れた理工系の学生が習得しやすい学問でもある経済学や経営学を将来さらに学んでいく場合にも役に立つような入門的な視点の提供にも努めたい。

<具体的な到達目標>
1 日本経済を観察・分析・理解する上での有益な様々な基本概念・キーワードとそれらを使った思考方法を習得できるようにする。
2 事業を通じた「もの・サービス・情報」の生産・供給活動をはじめとする多様な経済活動が相互に作用しながら集積するシステムとして経済全体を概観できるようにする。
3 「経済成長」、「好況・不況」、「貧困・格差」などの様々な経済現象の背後にあるダイナミズムを理解できるようにする。
4 経済の好循環を高めるための経済政策や公共部門の果たす役割を理解できるようになる。
5 グローバル化の進展する下において、他の国と比較した日本経済の特徴や主なチャレンジなどを理解できるようにする。
6 これらを通じて、日本が今後とも比較優位を発揮できる分野と考えられる「21世紀型ものづくり」を主軸とした事業を成功させていくためにどのようなことが大切かを理解できるようにする。
7 経済関係の新聞記事、雑誌、書籍にもより親近感をもって馴染めるようにする。
8 キーワードについては、英語でどう表現するかについても紹介するので馴染んでほしい。

<授業計画及び準備学習>
第1週 日本経済の観察・分析・理解の方法とキーコンセプト
日本経済の観察・分析・理解のために、本授業で採用するアプローチを説明するとともに、
日本経済を様々な経済活動が集積し相互関連するシステムとしてとらえる上で必要・有益と思われるキーコンセプトのリストなどを提示・紹介する。
 準備学習:シラバスをよく読んでおく

第2週 国民経済を鳥瞰する − 国民経済計算2017を使って
 国民経済計算2017を使って、経済活動が、日本全体の生産、消費、所得、輸出、輸入、公共部門の規模、国際取引、対外融資、国富などの推計値にどのように集計されているかを理解し、市場へのもの・サービスの総供給額が1000兆円、GDP(国民総生産‐付加価値ベース)が500兆円を超える日本経済の特徴を概観する。
 準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第3週 経済取引と市場 ― 需要・供給と価格など
 経済活動の基本単位である「経済取引」の基本的な構造を理解した上で、「市場」において需要・供給がマッチして価格や取引量が決まっていく仕組みを考察し、市場経済システムの特徴を理解するとともに、そのあり方をめぐる様々な見方などを紹介する。
準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第4週 企業 ― 事業(財・サービスなどの生産・供給)の主役
 経済システムの供給サイドを「事業やプロジェクトが企業活動に組成されて、もの・サービス・情報の生産が行われていく仕組み」として理解した上で、日本の企業部門・活動の特徴などを概観する。
準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第5週 需要と消費の諸側面
 経済システムの需要サイドを、消費を中心に鳥瞰し、消費の多様性や変化がどのように説明されるかを考察し、現代日本の消費社会の特徴などを論じる。
 準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第6−7週 雇用と所得の分配
 生産活動を実際に担う人間が、どのように生産活動に組み込まれ(雇用)、どのような条件で働くのか、また、経済活動の結果として労賃を含めた国民の所得がどのように分配されていくのを考察した上で、日本の雇用の特徴、雇用の国際比較、所得や富の格差などの問題を解説する。
 準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第8週 事業の成長と収益 ― 技術進歩、イノベーション、経済発展との関係
企業はお互いに競争し、変化に対応しながらも、収益をあげ、事業を発展させていこうとしており、そのような経済活動の集積が、経済全体の成長や発展にも大きく関わっている。
今回の講義では、経済システムの時間軸に沿った成長や変化を理解する(動学的に考察する)上で不可欠なキーワードとして、「収益」「競争(的環境)」「不確実性・リスク」「環境変化への対応」とともに「技術進歩」「イノベーション」を取り上げ、サプライサイドからの経済成長の意義を考える。

準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第9−10週 マネー(貨幣)、ファイナンス、金融資本市場
 経済社会あるいは経済取引の中で、貨幣やファイナンスがどのような役割を果しているのか、貨幣および金融取引の市場である金融資本市場において、金融取引の組成や仲介などに携わる金融機関がどのような役割を果しているのかを考察し、日本の金融システムの特徴などを論じる。 
準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第11週 公共部門の役割と財政(パブリックファイナンス)
 市場型の経済システムの中において、公共部門あるいは政府が果たしている役割について考察し、日本の公共部門の特徴などを論じ、あわせてその資金調達(税収や国債の発行など)に関する問題(財政問題)を説明する。 
 準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第12週 マクロ経済 − 景気変動、経済成長とマクロ経済政策
 経済をマクロ的に眺めた時に観察される景気の変動に対して、財政や金融はどのような
政策的な役割を果すのか、またどのように成長に貢献するのか考察し、デフレ対策、マイ
ナス金利政策、財政出動の是非、為替レートの変動への対応など目下のマクロ経済政策に関
する議論を理解する上での基礎的な知識を提供する。 

準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

第13週 グローバル経済と日本― 日本経済の国際化への対応と今後の日本経済の展望
 日本経済の対外的な側面について、貿易(輸出入)、外国への企業進出などにおける日本経済の特徴、および国際収支の推移や為替レートの変動に対する対応状況などについて論じる。
 また最終回として、多様性に富み、変化も著しい地球社会、グローバル経済の中で、日本の経済社会にはどのような特質があると言えるのか。日本としての特質、強みを生かしながら、日本経済・社会の今後の展望をどのように描いていけばいいのかについて議論する。

準備学習:授業で提示した資料をあらかじめ読んでおく

【実務経験のある教員による授業科目】
 経済政策担当の政府部門や国際機関での勤務経験等をもとに、国際的に比較した場合の日本経済の特徴、強み、今後の展望や課題などについて解説する。

<成績評価方法>
リアクションペーパーおよび定期試験期間に実施する期末試験で評価を行い、A+〜Fの6段階評価でD以上の者を合格とします。リアクションペーパーと期末試験との評価割合は2:8 期末試験のために準備しておくべきことは第13週の講義までに示唆します。

<教科書>
特に指定しない。授業前に講義メモおよび参考資料を配布し、講義内容の理解、復習および定期試験の準備が行えるようにする。

<参考書>
読んでおくと今後のために役に立つと思われる書籍を、授業開始時および授業中に積極的に紹介します。

<オフィスアワー>
木曜10:30〜11:00 および13:00〜13:30、新宿校舎13階(常務理事室)
メール連絡先 meetamagawa@aol.com

<学生へのメッセージ>
2017年から始まった3−4年生向けの国際キャリア系の自由選択科目ですが、皆さんが工学院大学で学習された科学技術の知識や習得された理数系の学力を、経済社会や企業経営などにも生かしていくための橋渡し役を努め、今後のキャリアデベロップメントに貢献したいと願っています。

<備 考>
後期科目の「事業運営の基礎知識」(ものづくりなどの事業に役立つ会計・ファイナンス・経営論の基礎知識)とは補完関係にあり、経済社会と企業活動に関心のある方、就職活動の準備等に役立てたい方は、両者をあわせて受講することを歓迎します。


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