2019年度工学院大学 工学部電気電子工学科

電子デバイス(Electronic Device)[5G09]

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2単位
相川 慎也 准教授  
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
電子デバイスはディスクリートな素子としてよりは,むしろ集積回路を構成して用いられることが多い.集積回路を扱うには,個々のデバイスの振る舞いをしっかり理解しておくことが必要である.
本講義では,トランジスタなどの非線形素子の概念を持ち,その機能を定性的・定量的に説明できることをねらいとする.電子物性で学んだ固体中での電子の挙動をベースに,電子デバイスを形成するための半導体物理と電子デバイスの動作原理・設計指針に関する考え方を修得する.

<受講にあたっての前提条件>
・「電子物性」が履修済みであることが望ましい
・自然対数,常用対数,指数関数の計算ができること
・片対数グラフが理解できること

<具体的な到達目標>
・エネルギーバンド図を適切に描くことができ,バンド図を用いて電子(正孔)の挙動を説明することができる
・真性半導体および不純物半導体(n型・p型)に関する定性的または定量的説明ができる
・バンド図を用いたpn接合ダイオードに関する説明ができる.また,主要ファクターの導出ができる
・MOSFETにおけるキャリア輸送に関する定性的説明ができる.また,主要ファクターの導出ができる

<授業計画及び準備学習>
1.【バンド理論の概略】半導体素子の動作原理を説明するための基本的な物理現象として,固体中の電子のエネルギー値が離散的かつ帯状になること,および正孔の概念,金属・半導体・絶縁体の違いを理解する.
[事前学習] 教科書pp.1〜16を熟読しておくこと.また,配布資料の「2.2 分布関数」まで目を通しておくこと.

2.【半導体中のキャリア濃度】半導体素子の動作原理を説明するための基本的な物理現象として,半導体中のキャリア濃度が何によって決められるか,不純物の添加量と抵抗率の関係,キャリア濃度の温度依存性を理解する.
[事前学習] 教科書pp.16〜37を熟読しておくこと.また,配布資料の「2.6 フェルミ準位」まで目を通しておくこと.

3.【半導体中の電気伝導】半導体素子の動作原理を説明するための基本的な物理現象として,電界印加時の電子の運動,キャリアの拡散現象を理解する.また,第1回〜第3回分の演習問題を解き,理解を深める.
[事前学習] 教科書pp.37〜44を熟読しておくこと.また,配布資料の「3.3 拡散によるキャリアの移動」まで目を通しておくこと.配布資料中の演習問題(第1章)を自力でできるところまで解くことを強く推奨する.

4.【pn接合のエネルギー帯図】半導体が出払領域にあり,ドナーやアクセプターがすべてイオン化している条件を前提とし,pn接合面に空乏層が形成される理由,拡散電位が電圧計で測定できない理由を理解する.
[事前学習] 教科書pp.65〜69を熟読しておくこと.また,配布資料の「5.2 エネルギー帯図」まで目を通しておくこと.

5.【pn接合ダイオードの電流-電圧特性】半導体が出払領域にあり,ドナーやアクセプターがすべてイオン化している条件を前提とし,順方向電流が電圧に対して指数関数的に増加する理由,逆方向電流が電圧に対して一定となる理由を理解する.
[事前学習] 教科書pp.69〜89を熟読しておくこと.また,配布資料の「6.5 ダイオードの降伏現象」まで目を通しておくこと.

6.【pn接合ダイオードの空乏層容量】半導体が出払領域にあり,ドナーやアクセプターがすべてイオン化している条件を前提とし,静電容量と空乏層中の電荷量の関係,印加電圧と静電容量の関係を理解する.また,第4回〜第6回分の演習問題を解き,理解を深める.
[事前学習] 教科書pp.89〜95を熟読しておくこと.また,配布資料の「7.2 容量-電圧特性」まで目を通しておくこと.配布資料中の演習問題(第2章)を自力でできるところまで解くことを強く推奨する.

7.半導体中の電気伝導(第1章)およびpn接合ダイオード(第2章)に関する学習成果の確認(授業内試験)

8.【金属-半導体接触のエネルギー帯図と電流-電圧特性】金属と半導体を接触させた界面において,どのような場合に空乏層が形成されるか,pn接合とは何が異なるかを理解する.
[事前学習] 教科書pp.109〜122を熟読しておくこと.また,配布資料の「11.1 順方向と逆方向」まで目を通しておくこと.

9.【ショットキー接触・オーミック接触】ショットキー接触およびオーミック接触の違いを定性的かつ定量的に理解する.また,第8回〜第9回分の演習問題を解き,理解を深める.
[事前学習] 教科書pp.122〜137を熟読しておくこと.また,配布資料の「14.1 オーミック接触の形成方法」まで目を通しておくこと.配布資料中の演習問題(第3章)を自力でできるところまで解くことを強く推奨する.

10.【バイポーラトランジスタの動作原理】pn接合ダイオードで学んだダイオード特性とバイポーラトランジスタの特性の関連性を理解し,どのようにして電力が増幅されるかを学ぶ.
[事前学習] 教科書pp.139〜152を熟読しておくこと.また,配布資料の「15.4 エミッタ接地の静特性」まで目を通しておくこと.

11.【バイポーラトランジスタにおけるキャリアの挙動】pn接合ダイオードで学んだダイオードにおけるキャリアの挙動とバイポーラトランジスタにおけるそれの違いを理解する.トランジスタ特性に及ぼすベース領域部分の設計指針を定性的かつ定量的に学ぶ.また,第10回〜第11回分の演習問題を解き,理解を深める.
[事前学習] 教科書pp.152〜169を熟読しておくこと.また,配布資料の「17.1.4 電流増幅率を決める要素」まで目を通しておくこと.配布資料中の演習問題(第4章)を自力でできるところまで解くことを強く推奨する.

12.【MISFETの基本原理と半導体表面の物理】キャパシタとMISダイオードの類似点と相違点について理解し,MISFETの基本原理を学ぶ.
[事前学習] 教科書pp.173〜181を熟読しておくこと.また,配布資料の「18.2 MISダイオード」まで目を通しておくこと.

13.【MOSFET】MOSFETの静特性を理解するとともに,バイポーラトランジスタとの類似点・相違点を説明できるようにする.また,第12回〜第13回分の演習問題を解き,理解を深める.
[事前学習] 教科書pp.181〜199を熟読しておくこと.また,配布資料の「21.1 静特性の比較」まで目を通しておくこと.配布資料中の演習問題(第5章)を自力でできるところまで解くことを強く推奨する.

14.授業内容の振り返り

<成績評価方法>
原則として,中間試験(25%),期末試験(60%),課題(15%)の結果に基づいて,A+〜Fの6段階で評価する.D以上を合格とする.中間試験は第7回の授業内で,期末試験は定期試験期間に実施する.
ただし,5回以上欠席した場合は履修放棄とみなし単位認定を行わない.出席確認はカードリーダーのデータを活用するので忘れずに必ずタッチすること.

<教科書>
國岡昭夫・上村喜一「基礎半導体工学」朝倉書店(ISBN-13: 978-4254221381),定価:本体3,400円+税

<参考書>
S.M.ジィー/南日康夫・川辺光央・長谷川文夫訳「半導体デバイス(第2版)―基礎理論とプロセス技術―」産業図書(ISBN-13: 978-4782855508),定価:本体6,600円+税

<オフィスアワー>
日時:金曜日12:00〜13:00
場所:八王子キャンパス5号館602号室
E-mail:aikawa[at]cc.kogakuin.ac.jp([at]を@に変えてください)

<学生へのメッセージ>
電子デバイスをより深く理解するには,「電子物性」を履修していることが望ましいが,履修していなくてもエッセンスは理解できるように丁寧に進める.講義内容をもとに,根気よく演習問題と向き合ってほしい.
講義資料を下記にアップロードする.授業前に各自ダウンロードし,必要に応じて印刷・持参すること.
http://intra.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1058/index.html
※学内専用ページのため,学内ネットワークからのみアクセス可能.


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