2019年度工学院大学 第1部機械システム工学科

倫理学A(Ethics A)[2H15]

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2単位
林  真理 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2019/11/12

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
倫理学は価値に関する最も基本的な学問分野です。価値とは善悪、正邪に関わることです。このシラバスを読んでいる人は、おそらくつね日頃、よい、わるいの判断をたくさんしているはずですが、それはどのようになされているでしょうか。何に基づいて判断しているのでしょうか? 確信をもって判断しているのでしょうか? 何が正しいのか、わからなくなってしまったことはないでしょうか。誰か偉い人の言っていることが正しいと思えなかったということがないでしょうか。
 この授業では、正しい信念、正しい行為とはどういうものであり、良い社会とはどのような社会なのかといったったことについて、最も基本的なところから考えていきます。これらの問に唯一の正解はありませんが、自分なりに正解を出せるように考えるその考え方は学べるはずです。授業では、できるだけ身近な事例を題材とします。そういった具体例を通じて、多様な考え方に触れるとともに、自分なりの思考を深めていくことが肝要です。

<受講にあたっての前提条件>
この授業では正解のない問を扱うので、自らの考えを持とうとすること、そのためにしっかりと考えることが必要です。正解の存在しえない問を扱うことに意味を見いだせないと、もしかすると考えるのがつらいかも知れません。

<具体的な到達目標>
良い社会とは何であるかについて、他者の考え方にも目配りしつつ、自分の考え方を主張できるようになる。また、そういったことを通じて、価値観の多様な社会において、他者に配慮しながらも、どのように自分らしく振る舞うことができるかを考える。

<授業計画及び準備学習>
1.倫理学は何で「ない」か。
授業の目標、意味、課題を理解する。
準備学習:シラバスを読んで、疑問点を考えておく。
2.事実と価値
倫理学が扱う「価値」という問題領域の存在を理解する。
準備学習:新宿における学習環境を確認しておく。
3.「物語」とは何か
書かれた物語との(あるいは物語を巡る)対話を通じ、人間が「物語を生きる存在」として捉えられることを理解する。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
4.社会環境に埋め込まれた存在としての自己
自己の確立とキャラの創作はどのように違うか(違わないか)を考察し、人間と社会環境の関連について理解する。自由意思の可能性と人間の自律性の問題点を知る。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
5.他者の他者性
他者の概念を理解する。また他者の存在を前提にした自己の概念を理解する。それを通じて自己と社会のあり方を問い直す。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
6.個人的なことと社会的なこと:仕事を通じて考える
社会との最もわかりやすい接点である「仕事」の考察を通じて、個人と社会の結びつきを考える。新卒一括採用、学歴社会、長時間(サービス)残業、終身雇用等の現状を知るとともに、仕事をすることの自分にとっての意味と、仕事を巡る社会的な制度や考え方の双方から考察し、どのような生き方が良い生き方なのかを問いながら、どのような社会が良い社会なのかについて考える契機を得る。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
7.個人的なことと社会的なこと:生活を通じて考える
生活するとは、収入を得て、暮らしを営んでいくことである。日本で仕事に就くとどのような生活が可能なのかを想像するとともに、少子高齢化、社会階層、相対的貧困等の日本社会の特徴について学び、今後の社会のあり方を考えることで、どのような社会が良い社会であるかについて具体的に考える契機を得る。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
8.個人的なことと社会的なこと:国籍を通じて考える
国民国家、在日外国人、外国人就労等について知るとともに、グローバル化社会において重要な意味を持つ国籍について考察する。空気のように意識されず、常識として疑いもしないが、確かに存在している社会制度に気づくことで、それらを捉え直す契機をつかむ。グローバルな視点からの自身の位置を知る。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
9.個人的なことと社会的なこと:身体を通じて考える
障害の意味と定義、社会政策の変遷を踏まえ、障害者が生きる社会の問題を考察する。気づかれない生きづらさに対する想像力の必要性と、オルタナティブな生の可能性を学ぶ。それらをもとに、どのような社会が良い社会であるかを考えることに歩み出す。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
10.個人的なことと社会的なこと:身体を通じて考える(2)
社会的な性役割前提の存在を認識することを通じて、無意識のバイアスの存在とその克服の難しさを考える。どのような社会が良い社会であるかという問題の難しさを学ぶ。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
11.消費を通じて考える
消費財の由来のうち主に材料に着目することで、グローバル化した社会の複雑さを学び、また環境問題を通じて消費行動に伴う社会改善の契機の存在を理解する。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
12.消費を通じて考える
消費財の由来のうち主に労働に着目することで、グローバル化した社会の複雑さを学び、また人権問題を通じて消費行動に伴う社会改善の契機の存在を理解する。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
13.どのような社会が良い社会なのか
授業全体を振り返って総まとめを行う。
準備学習:事前に配布されたプリントを読み、指示された課題を行っておく。
14. 学習内容の振り返り
準備学習:これまでの自身の考察を振り返っておく。
以上はあくまでも計画であり、授業は学生の取り組み方次第で様々に変化していく可能性を持っている。その都度最適な進め方をしていきたいと考えている。

<成績評価方法>
授業内課題(60%)および最終レポート課題(40%)によって成績を評価します。
ただし、受講人数が少ない場合は、授業内課題は授業内の発表等で代替することがあります。

<教科書>
ありません。

<参考書>
授業中に指示します。

<オフィスアワー>
前期は水曜日の11:00-11:30、後期は金曜日の17:30-18:00。新宿キャンパス27F2714室。その他の時間を希望する場合は、ft12153@(以下皆さんと同じ)のアドレスまでメールで問い合わせて下さい。疑問や相談のある場合は、積極的に問い合わせて下さい。

<学生へのメッセージ>
自己理解による価値観の確立と、他者との関わりによる世界認識の確立は同時に起こります。良い社会について考えることが、自分の生き方に関わってくることになれば、それ以上すばらしいことはないと思っています。


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