2018年度工学院大学 先進工学部機械理工学科

複素関数論(Elementary Complex Functions)[2E30]

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2単位
長谷川 研二 准教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本科目は複素関数論を指導する。微分可能な複素関数である正則関数とは微分積分で習った指数関数や三角関数等の変数を実数から複素数に拡張したものである。それだけでは微分積分と大差ないように見えるかもしれないが、複素数は複素平面上の点と見なされ、特に正則関数の積分については、複素平面上で積分路を設定し、端点を固定しながら積分路を変更しても積分値が変わらない性質がある。これによって複素関数の応用範囲が飛躍的に拡がった。専門分野への複素関数の応用力をつけることが授業のねらいである。

<受講にあたっての前提条件>
微分、積分、偏微分、重積分の内容を理解している。

<具体的な到達目標>
  1. 複素数の演算と複素平面との関係を理解する。
  2. テイラー展開を通して初等関数の変数を実数から複素数に拡張することを理解する。
  3. 複素関数として微分可能である正則関数とコーシー・リーマンの関係式を満たす2つの2変数関数を同一視できることを理解する。
  4. 正則関数のテイラー展開やマクローリン展開の係数が閉曲線上の積分から求まることを理解する。
  5. 正則関数の閉曲線上の積分を留数から求める。
  6. 実変数関数の広義積分と級数の和を正則関数の留数から求める。

<授業計画及び準備学習>
  1. 複素数と複素平面:
    複素数の実部・虚部を平面の点の座標とみれば複素数は平面上の点と同一視できる。複素数の積・商と複素平面の絶対値・偏角との関係を理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:高等学校で習った三角関数の加法定理を復習をする。
  2. テイラー展開と初等関数:
    微分積分で登場した関数は初等関数と呼ばれる。初等関数はテイラー展開できることが重要な性質であるが、これにより変数を実数だけでなく虚数を含めた複素数まで拡張して初等関数を複素数を変数とした複素関数とみなせることを理解する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:プリントを読んでおく。
  3. 正則関数とコーシー・リーマンの関係式:
    正則関数とは複素変数の意味で微分可能な関数である。複素関数を実部・虚部に分けると2つの実2変数関数であるが、複素関数が正則であることが2つの実2変数関数の偏導関数がコーシー・リーマンの関係式を満たすことと同値である。これを利用して複素関数が正則であることを判定する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  4. 指数関数と三角関数:
    複素関数としての指数関数の値は絶対値・偏角と深い関係がある。また複素変数であれば三角関数を指数関数で表し、加法定理を指数法則から導き出せる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  5. 複素平面における線積分:
    複素関数の積分は実変数の定積分のように端点だけでなく、2点をつなぐ積分路を指定する線積分である。積分路の媒介変数の定積分に変換して積分計算する。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  6. コーシーの積分定理:
    複素関数が正則であると積分については積分路の端点のみで積分値が決まる。これをコーシーの積分定理と呼び、正則関数が実変数関数の微分可能性の複素数への単なる拡張でないことの証左である。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  7. コーシーの積分表示:
    コーシーの積分定理より正則関数を閉曲線上の線積分で表示することができる。これをコーシーの積分表示と呼び、これにより正則関数の重要な性質を導くことができる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  8. 導関数とグルサの定理:
    実変数関数の導関数の値は微分係数のことで微分商の極限であるが正則関数の導関数の値をコーシーの積分表示のようにグルサの定理により閉曲線上の積分で表示できる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  9. 特異点とローラン展開:
    複素関数が正則でない点を特異点と呼び、複素関数がテイラー展開に負の整数のべきの項を加えたローラン展開で表せる。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  10. 留数定理:
    ローラン展開の−1次の項の係数を留数という。留数定理とは留数が特異点を囲む積分路の複素積分値と等しいことである。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  11. 留数計算:
    正則関数の特異点ごとの留数の計算をすることが、複素関数の応用にとって重要である。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  12. 広義積分と留数:
    積分区間が無限の定積分である広義積分が原始関数を経ないで留数計算から直接、求まることがある。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  13. 級数の和と留数:
    部分和の一般項を求めなくても級数の和を留数計算から求まることがある。問題を解き答案用紙を提出する。(採点し次回の授業で返却)
    準備学習:返却された答案用紙を復習する。プリントを読んでおく。
  14. 学習内容の振り返り:
    準備学習:定期試験で解けなかった問題の解き方を考えておく。

<成績評価方法>
試験期間で実施する定期試験の得点が85点以上であればそれを成績点Xとする。定期試験の得点が85点未満であればそれをx点として、X=(ax)b(小数点以下四捨五入)とする。ただしa,bは(85a)b=85で合格基準点x0に対して(ax0)b=60を満たすように定める。合格基準点は60点以下で各受講生毎に定めるとして、授業中に解かせた問題の解答状況による平常点が高いほど合格基準点は低くなる。平常点が最高であれば基準点は40点前後であるが、他人の解答を写すだけの答案が多い場合は平常点を考慮しない(基準点を一律60点)で試験のみで成績評価することがある。Xが95以上であればA+、85〜94であればA、75〜84であればBとしてXが60〜74で試験の得点が60点以上がC、60点未満をDとする。

<教科書>
  • 指定教科書なし
  • プリントを授業で配布したり、予習のためにキューポートにPDFファイルを事前にアップロードする。

<参考書>
  • 涌井貞美 著「道具としての複素関数」日本実業出版社
  • 立花俊一 他著「エクササイス 複素関数」共立出版
  • 一松信 著「留数解析」共立出版
  • 長谷川研二 他著「理工系のための微分積分」培風館

<オフィスアワー>
月曜日2時限終了後、2時限の担当者の授業の教室にて(教室番号は担当者に確認すること)


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