2018年度工学院大学 先進工学部機械理工学科
△法学B(日本国憲法1単位含)(Law B)[1D44]
2単位 井上 知樹 非常勤講師
- <学位授与の方針>
○ | 1. 基礎知識の習得 | | 2. 専門分野知識の習得 | ○ | 3. 汎用的問題解決技能 | ◎ | 4. 道徳的態度と社会性 |
- <授業のねらい>
- 本講座では日本国憲法が設定している日本の政治の仕組みを学んでもらう。しかし、非法学部の学生を対象とした講義なので、法学部におけるような専門的な解釈論を講義の中で展開するというよりは、憲法が設定している政治・統治制度に関して、日本という国家を運転・舵取りするに必要なアクセル・駆動力とブレーキ・制動機という観点から、分析し概説することで、政治の全体構造を理解してもらうことを主位に置いている。
まず授業の前半部では、そのようなアクセルとブレーキを国家が装備するに至った歴史的背景を世界史的展開の中に日本史を位置付けることによって通覧することから始まり、明治憲法から日本国憲法へという流れへと架橋する。次に、後半部では、上述の歴史の推移を前提として、日本国憲法が設定する政治・統治制度を、権力の民主化(民主主義)と権力の分立(立憲主義)という2つの観点から具体的に概観する。
- <受講にあたっての前提条件>
- 高校までの地理を除く社会科全体の知識が必要とされる。
- <具体的な到達目標>
- (1)自国のみに偏った歴史理解ではなく、自由と民主主義に基づく普遍的な歴史理解=断絶史観を解説できる。(大河ドラマかぶれや歴女になってはならない! 武士の戦闘だけが歴史ではない! 今そんなことしたらテロリスト扱いされてしまう!)
(2)議院内閣制という民主的だが複雑な政治制度を説明できる。(何でもかんでもアメリカみたいな大統領制がいい、という人間にはならない) (3)権力の集中を排除して濫用を抑制することで自由を確保するという、法の支配(人の支配の否定)の発想を持つことができる。(中学や高校の授業や生徒会・学級会民主主義の実践では教えてくれないこと)
- <授業計画及び準備学習>
- 第1回 カイダンス・オリエンテーション(大学における勉強とは?)
第2回 憲法史(市民革命史・近現代史) 第3回 同上 第4回 明治憲法から日本国憲法へ 第5回 象徴天皇制 第6回 権力の民主化と権力の分立(アクセルとブレーキ) 第7回 権力の民主化(アクセル:自分「たち」のことは自分「たち」で決める) 第8回 国民主権・選挙権・政党・マスメディア 第9回 国会・国会議員・議院 第10回 内閣・議院内閣制 第11回 権力の分立(ブレーキ:自分のことは自分「たち」で決めてはいけない) 第12回 裁判所・違憲審査権 第13回 地方自治 第14回 まとめ・試験問題解説
- <成績評価方法>
- 小論文形式の筆記試験(70%)なので、出題への応答、その論旨展開の論理性、事実関係の誤認の有無、誤字を評価基準とする。
小論文形式の筆記試験をぶっつけ本番で挑むのはほぼ困難で失敗が容易に予想されるので、それに向けた予行練習の意味も兼ねて、期中数回の文献購読と課題レポートを課す(30%)。レポート提出が半数に満たない者は自動的に評価の対象外とする。
- <教科書>
- 特に指定しない。レポートのための参考文献を適宜印刷配布するので、それで代用する。これは金銭的出費を重ねなくても勉強はできることを理解してもらうためでもある。
- <参考書>
- 講義の中で、課題として、適宜参考文献を配布する。これは金銭的出費を重ねなくても勉強はできることを理解してもらうためでもある。
- <オフィスアワー>
- 授業の前後に、教場又は講師室にて。
- <学生へのメッセージ>
- 2009年8月の衆議院議員総選挙で、日本史上初めて国民自身の手による政権交代が起こった。これによって発足した鳩山政権は、国民の大きな期待と支持をもって迎えられた。ところが、それから僅か8ヵ月後鳩山内閣は退陣し、代わって菅内閣が発足したものの、震災対応の不手際や人望喪失により退陣し、三代目の野田内閣も支持率漸減で、遂に2012年12月の総選挙で自民党が再び政権を奪回した。猫の目内閣と小学生並みの学級崩壊の民主党に国民は辟易した結果である。では、自民党に期待が持てるのか。今は昔の話になってしまったが、自民党政権時代も、末期は、安倍、福田、麻生と三代続けて1年で政権が崩壊し、その間に格差は拡大し貧困は深化して行ったために、民主党が政権を獲得したのである。従って、自民党の政策傾向からすれば、再び格差拡大は容易に推認し得るのであり、そのように持てる者と持たざる者に分裂・分断した日本国民を再統合するために、歴史や伝統・民族性の共有とそれを象徴する国旗国歌への忠誠を扇動することで、持てる者にとって好都合な社会を形成し、持たざる者の中のはねっかえりには、罰則強化による威嚇と国防強化による男らしいmachoismを示し、持たざる者の中のか弱き子羊たる一般大衆は、消費増税と物価高の苛斂誅求に苦しみつつも何も行動することなく、只管朝早くから満員の通勤電車に揺られ帰宅の電車では深い眠りに落ちるかスマホをいじりっ放し、という単調な日々を毎日繰返すそこいらの大人になるだろう。ここから見えてくるのは、自民がダメだ、民主がダメだというよりも、何も変わらない、変える気のない、変えようとしない、変わろうとしない日本の「民主政治」がダメだということであり、国「民主」権の「政治」である以上、変身しようとしない国民がダメだということである。なぜそうなのか。本講座では、日本国憲法の統治機構の概説・概観をする前に、民主政治に至る世界史的展開の中に日本史を位置づけることによって見えてくる、民主政治に向けた国民自身の覚悟の欠落、民主政治における当事者意識の欠如から繙くことで、日本の政治システム、統治制度を学ぶための問題意識を、共有したいと考えている。
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