2018年度工学院大学 先進工学部生命化学科

薬品分析化学(Analytical Chemistry of Medicals)[6H01]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
高橋 博文 非常勤講師  
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本授業を受講することによって、「くすり」とはどういうものなのか、「くすり」の本質を理解していただきます。
くすりがどのようにして効果を示すかを理解するためには、くすりがからだに「入る」ところから「出ていく」までに何が起こっているかを理解する必要がありますが、このようなくすりの体内での挙動を理解することは、優れた医薬品を創製するということだけでなく、日常使うくすりを有効に、また安全に使用するためにも非常に重要です。
本授業ではくすりとして医薬品を主にとりあげ具体的に以下の項目について理解を深めて頂きます。

 くすりが効果を示すしくみを理解する
 くすりが副作用をしめす原因と機序を理解する
 医薬品研究開発の困難さ及びその理由を理解する
 くすりの生体内での挙動(吸収・分布・代謝・排泄)を理解する
 薬物相互作用と副作用の関連を理解する

<受講にあたっての前提条件>
医薬品研究開発に対して興味がある事、積極的に授業に参加する事が条件です。
生化学、有機化学、物理化学、機器分析の受講経験が有用です。

<具体的な到達目標>
医薬品がどのようにして効果を示すのかを説明できる
医薬品の生体内での挙動を説明できる
医薬品同士、および医薬品と食物との相互作用について説明できる
副作用の原因および発生機序を説明できる
生体内薬物濃度測定に必要な機器の原理及び測定法を説明できる

<授業計画及び準備学習>
(1-4回)薬の本質
薬の効果および副作用の発現機序(作用点)を理解し、これらのことから薬の本質を考える。
 生体におけるタンパク質の重要性(構造タンパク、酵素、GPCRなど)
 タンパク質の3次元構造と薬の効果の発現機序
 副作用の原因と発現機序

(5-7回)生体中薬物濃度の測定
血中薬物濃度測定の意義・重要性を慨説する
 血中薬物濃度と効果(薬効)の相関
血中薬物濃度の測定方法を慨説する
 測定機器の種類・特徴(HPLC、LC-MS/MS)

(8回)薬物速度論(Pharmacokinetics)の基礎
測定された血中薬物濃度データの解析方法の基礎を理解する
 消失速度式(1次速度式)

(9-11回)薬物の生体内での運命
薬物の生体内への吸収・分布過程について詳細を理解する
 膜透過性・組織移行性と薬物の物理化学的性質
 タンパク結合型薬剤と非結合型薬剤
生体の「解毒機構」である代謝の様式・機構を理解する
 薬物代謝酵素
薬物の吸収や排泄にかかわるトランスポーターについて理解する

(12-13回)薬物動態の諸問題
反応性代謝物の生体へのインパクトを理解する
 薬物アレルギー
薬物の効果、副作用の発現における個人差の原因について考える
 薬物代謝酵素やトランスポーターにおける種差、個人差
薬物相互作用、いわゆる薬物同士又は食物との「飲み合わせ」について理解する。また、薬物相互作用と副作用(または毒性)との関連について理解する
 吸収、分布、代謝、排泄すべての過程での相互作用が起こる可能性があること。食品や飲料との相互作用もあることの理解。

(14回)振り返り

学習成果の確認(試験)

<成績評価方法>
授業参加度(授業中の発言、発表、ディスカッション、質問など)、授業中の課題および定期試験によって総合評価します。
ウエイトは課題および授業参加度(計100点:A)を40%、定期試験(100点:B)を60%とします。
A x 0.4 + B x 0.6 = 60点以上を合格点とします。

<教科書>
指定教科書はありません
キューポートに資料をアップしますので授業の予習・復習に利用してください。

<参考書>
「創薬の分析化学」
開発タイムラインにそった全過程
日本分析化学会編
丸善出版
「はじめての薬物速度論-薬物動態の基礎」
加藤 基浩
南山堂
「薬物代謝学」
医療薬学・医薬品開発の基礎として第3版
加藤隆一他編
東京化学同人

「医薬品クライシス78兆円市場の激震」
佐藤健太郎
新潮新書

<オフィスアワー>
授業終了後、教室または講師控え室。
Emailによる質問やご意見は随時受け付けています。
(bu41029@ns.kogakuin.ac.jp)

<学生へのメッセージ>
「くすりはどうして効くのですか?」「同じくすりを飲んでいても効いたり効かなかったりする人がいるのは何故ですか?」「何故夢の新薬は出てこないのですか?」「健康食品はくすりより安心ですよね?」このようなくすりに関する疑問や興味がある方、積極的にディスカッションしましょう。


ナンバリングはこちら
このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2018 Kogakuin University. All Rights Reserved.