2018年度工学院大学 先進工学部生命化学科

錯体化学(Coordination Chemistry)[2H31]

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2単位
大石 理貴 非常勤講師  
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
錯体は、合成化学、生命科学、材料科学などの研究分野で広く利用されている。それは、錯体が無機化学物質である金属と有機化合物である配位子の融合によって多様な構造、電子状態を創出するからであり、今後も科学技術の進展に重要な役割を担うであろう。本授業では、金属と有機分子により構成される錯体の多様な電子構造、物性、反応性の基礎を体系的に理解することで錯体化学の素養を身につけると同時に、錯体化学の実例について学ぶことで化学技術者としての考察力と応用力も養う。

<受講にあたっての前提条件>
予め基礎的な無機化学、有機化学、物理化学を受講していることが望ましい。

<具体的な到達目標>
1)金属錯体の結合様式と配位構造の特徴を理解する。
2)金属と配位子により形成される電子状態を理解する。
3)錯体の構造や性質の解析手法について理解する。
4)錯体の主要な反応性について理解する。
5)触媒科学における錯体の機能について理解する。
7)生命・材料科学における錯体の機能について理解する。

<授業計画及び準備学習>
1.現代の錯体化学
[学習内容] 遷移金属錯体の歴史的発展を概観し、錯体を構成する金属、配位子の多様性について学ぶ。IUPAC無機化学命名法に則り、具体例を通して錯体の命名法の基本的な規則を習得する。また、錯体化学における有機金属化学の位置づけを理解する。
[準備学習] 教科書の第1章を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
2.結合様式と錯体の構造
[学習内容] 金属と配位子の結合様式、中心金属の配位数、錯体の立体構造(異性体を含む)について具体例を通して学ぶ。
3.錯体の電子数と酸化数
[学習内容] EAN則に基づく錯体の電子数、中心金属の形式酸化数の数え方を習得する。電子数から配位飽和あるいは配位不飽和な状態を判別する。
[準備学習] 配布資料を参照し、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
4.分子の対称性と群論
[学習内容] 具体例を通して対称操作、点群について学び、指標表の見方や使い方を習得し、分子軌道の種類について理解を深める。
[準備学習] 配布資料を参照し、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
5.結晶場理論と配位子場理論
[学習内容] 結晶場理論、配位子場理論を学び、なぜ錯体が決まった構造で形成するのかを分子軌道の概念に基づいて理解する。
[準備学習] 教科書の第2章(30〜38ページ)を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
6.電子スペクトルと磁性
[学習内容] 配位子場分裂と電子スペクトルの吸収波数の関係を学び、錯体の性質(色、磁性、電子状態)を理解する。
[準備学習] 教科書の第2章(38〜43ページ)を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
7.錯体の構造を同定する一般手法
[学習内容] 様々な分析手法(NMR、X線、IR、MSなど)によって錯体の構造を多角的に決定することを学ぶ。
[準備学習] 配布資料を参照し、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
8.有機金属錯体の構造解析
[学習内容] NMRの原理を理解し、有機金属錯体の構造解析への応用例を学ぶ。
[準備学習] 配布資料と教科書の第3章(58〜70ページ)を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
9.配位子置換反応
[学習内容] 錯体の安定性、配位子置換反応とその分類について学び、置換反応の起こりやすさや選択性について理解する。
[準備学習] 教科書の第4章(73〜85ページ)および第5章(101〜107ページ)を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
10.電子移動反応
[学習内容] 電子移動反応における内圏機構と外圏機構について理解する。
[準備学習] 配布資料を参照し、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
11.錯体の主要な素反応
[学習内容] 酸化的付加、還元的脱離、挿入反応などの主要な素反応について学ぶ。
[準備学習] 配布資料と教科書の第5章(109〜117ページ)を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
12.均一系触媒反応への応用
[学習内容] 代表的な触媒反応の応用例を通して錯体の触媒としての機能を理解する。
[準備学習] 配布資料を参照し、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
13.生命・材料科学への応用
[学習内容] 生命・材料科学において錯体が応用されている代表例を学び、それらの機能を理解する。
[準備学習] 配布資料を参照し、教科書の第6章の該当箇所を読み、知識を定着させるとともに、学習内容と疑問点を整理しておくこと。
14.学習内容の振り返り
[学習内容] 錯体化学に関する学習を通して得られた知識の再確認と疑問点の解消を行う。
[準備学習] 前回までの教科書、配布資料、授業ノートを復習し、理解した点と問題の残っている点を整理しておくこと。

<成績評価方法>
期末試験の結果(50%)と課題・確認テストの結果(50%)を考慮し評価する。A+〜Fの段階評価でD以上の者を合格とする。

<教科書>
「新版 錯体化学 基礎と最新の展開」基礎錯体工学研究会編(講談社サイエンティフィク)

<参考書>
「シュライバー・アトキンス無機化学(下) 第6版」Mark Weller他著 田中勝久他訳(東京化学同人)、「錯体化学 基礎から応用まで」長谷川靖哉、伊藤 肇著(講談社)

<オフィスアワー>
授業終了後に教場で。事前にメールで連絡を入れることが望ましい。


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