2018年度工学院大学 情報学部システム数理学科
△デジタル経済学(k)[5B13]
2単位 矢崎 敬人 准教授 [ 教員業績 JP EN ]
- <学位授与の方針>
| 1. 基礎知識の習得 | ○ | 2. 専門分野知識の習得 | ◎ | 3. 汎用的問題解決技能 | ○ | 4. 道徳的態度と社会性 |
- <授業のねらい>
- ○2年次後期科目「ミクロ経済学」では,ある条件の下で市場均衡は効率的であることを学んだ.本科目では学生はまず,市場均衡が効率的であるための条件が満たされない場合(市場の失敗)に何が起きるかを考察する.
○ついで,戦略的な状況を分析するのに有用なツールであるゲーム理論の基礎を身につける.そして,財・サービスの売り手と買い手の間に存在する情報の非対称性が引き起こす問題とそれらへの対処について考察する. ○そのうえで,ここまでで学んできた分析手法・ツールを用いて,デジタルエコノミーにおけるざまざまな企業行動や産業構造について考察していく.
- <受講にあたっての前提条件>
- ○「微分」,「偏微分」,「ミクロ経済学」を修得していることを前提として授業を進める.
- <具体的な到達目標>
- ○市場経済の問題点を理解し,説明することができる.
○ゲーム理論の基本的な考え方を理解し,ゲーム理論の手法を用いて具体的な状況を分析することができる. ○情報の非対称性が引き起こす問題を理解し,説明することができる. ○情報のデジタル表現によって情報に関わるさまざまな費用が変化することを理解し,説明することができる. ○デジタルエコノミーにおけるさまざまな企業行動や産業構造について,ミクロ経済学(ゲーム理論を含む)の分析手法を用いて考察し,説明することができる.
- <授業計画及び準備学習>
- 1. ガイダンス,市場の失敗
準備学習:教科書第4章を熟読しておくこと.
2. 独占,ゲーム理論と経済分析(同時手番のゲーム,ナッシュ均衡) 準備学習:教科書第5章,6.1,6.2を熟読しておくこと.
3. ゲーム理論と経済分析(ナッシュ均衡が実現する理由,個人の利益と社会の利益,クールノー競争,ベルトラン競争,不確実性と期待効用,混合戦略) 準備学習:教科書6.3〜6.7を熟読しておくこと.
4. ゲーム理論と経済分析(時間を通じたゲーム,部分ゲーム完全均衡,シュタッケルベルク競争,コミットメント) 準備学習:教科書7.1〜7.4を熟読しておくこと.
5. ゲーム理論と経済分析(長期的関係と協調),情報の非対称性(モラル・ハザード) 準備学習:教科書7.5,第8章を熟読しておくこと.
6. 情報の非対称性(逆淘汰とシグナリング) 準備学習:教科書第9章を熟読しておくこと.
7. 授業内試験(範囲:第1回〜第6回),情報に関わる様々な費用,サーチ費用の低下 準備学習:製品・サービスをリアルな店舗で購入する場合とネットで購入する場合で価格のばらつきはどちらの方が大きいか,さまざまな製品・サービスについて調べてくること.
8. 互換性とネットワーク効果,技術標準化 準備学習:自分が使っている製品やサービスと同じもの(あるいは互換的なもの)を使う人が多いほど自分が受けるメリットが大きいようなものの例をできるだけ多く探してくること.
9. 情報の蓄積とスイッチングコスト 準備学習:ある製品やサービス,あるいは小売店を長い間使うほどメリットが大きいようなものの例をできるだけ多く探してくること.
10. プラットフォーム市場 準備学習:プラットフォームという言葉の意味を調べたうえで,プラットフォームの例をできるだけ多く探してくること.
11. 複製費用の低下,情報の公共財的性質と知的財産制度 準備学習:日本の知的財産制度の概要を調べてくること.
12. トラッキング費用,本人確認費用の低下 準備学習:ユーザの行動履歴をサービス提供者が活用している事例をできるだけ多く探してくること.
13. AIと労働 準備学習:AIの普及によって働き方はどのように変わっていくか考えてくること.
14. 学習内容の振り返り
- <成績評価方法>
- ○前半(情報の非対称性(逆淘汰とシグナリング)まで)の内容は授業内試験で評価する.
○後半の内容はレポートにより評価する. ○両者の得点を5:5の割合で集計し,A+〜Fの6段階評価を行う.D以上を合格とする.
- <教科書>
- ○神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社.
前半(情報の非対称性(逆淘汰とシグナリング)まで)で用いる.
- <参考書>
- ○岡田章(2014)『ゲーム理論・入門―人間社会の理解のために(新版)』有斐閣アルマ.
○岡田章(監修・著)・加茂知幸・三上和彦・宮川敏治(2015)『ゲーム理論ワークブック』有斐閣. 以上2冊はゲーム理論の教科書とワークブックとしておすすめ.
○カール・シャピロ,ハル・ヴァリアン(大野一訳)(2018)『情報経済の鉄則―ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド』日経BPクラシックス.(原著はShapiro, Carl and Hal Varian (1997), Information Rules: A Strategic Guide to the Network Economy, Boston MA: Harvard Business School Press.) 現在Googleのチーフエコノミストを務めている経済学者ヴァリアンらがデジタル経済の特徴を分かりやすく説明した名著.今や古典と言える.
○Goldfarb, Avi and Catherine Tucker (2017), “Digital Economics,” forthcoming in Journal of Economic Literature. http://www-2.rotman.utoronto.ca/~agoldfarb/digitaleconomics_JEL.pdf 後半の内容に関連した主要な学術論文を紹介する展望論文.この分野に関心があり英語に自信がある学生はぜひ挑戦してみてほしい.
- <オフィスアワー>
- ○授業後に教室で受け付ける.
○また,新宿校舎で次のオフィスアワーを設定している. [前期](新宿校舎A-2778)金曜日2時限 [後期](新宿校舎A-2778)火曜日2時限 ○その他,上記日時以外でもメールで予約の上で面談可.メールアドレスは情報学部学修ガイダンスに記載.
- <学生へのメッセージ>
- ○卒業論文(PBL)でデジタルエコノミーにおける企業戦略や産業構造についての分析を行いたいと考えている学生は,本科目のほか,「応用計量経済分析演習(PBL)」(3年次後期科目)も履修すると良い.
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