2018年度工学院大学 情報学部システム数理学科

応用情報システム(PBL)(k)[1B15]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

1単位
三木 良雄 教授  
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本授業は一般社団法人 高度ITアーキテクト育成協議会の寄附講義を受けて実施する。
IoTやビッグデータといった、ネットワークを介してデータを収集し、計算資源を構築するサービスインフラが急速に普及している。これは近年クラウドと呼ばれていたネットワーキングとコンピューティングが融合されたインフラをさらに進化させたサービス形態であり、ネットワーク上に存在するソフトウェア部品や、ソフトウェアによって仮想化された計算資源を組み合わせて実現されている。
 そこで本講義では、従来のネットワーク技術とコンピューティング技術の基礎をおさらいし、その知識を基に両分野にまたがって構築されるインフラの要素技術を習得する。具体的には、ネットワーキングとコンピューティングの両方で利用される仮想化技術と、ネットワークを介して呼び出されるAPIの概念を習得し、サービスを構築するにあたっての最適な設計を実現する設計論と技術の選択について実習を通じて学習する。 本科目を通じて、これからのサービスインフラ構築に対応し、ICT技術を達成すべき目標のための武器として活用できる人材の育成を目指す。

<受講にあたっての前提条件>
実習を含む講義であるため、コンピュータの初歩的な利用知識と、ネットワークとOSに関する基礎的な知識を習得していることが前提となる。システム構築論、クラウドコンピューティングの科目を履修することを強く推奨する。
想定受講者 :
• ネットワークと計算機を利用したサービス構築に興味のある学生
• ソフトウェアを用いたサービスインフラ構築技術を習得したい学生
• これからのサービスの構築に関してその設計論を学びたい学生
• IoTでのデータ収集やビッグデータ解析の基盤を構築することに興味のある学生
• クラウドコンピューティングに興味のある学生
• ICT技術を利用して様々な分野の活性化を行うことに興味のある学生

<具体的な到達目標>
本講義では、前述の通りネットワーキングとコンピューティングの両方に精通し、サービスを構築するための設計論を習得することを目的とする。本講義では、前学期に実施した基礎編の講義で学んだ知識に加え、今学期の応用編を習得することでサービス構築にあたっての要求事項からの設計と問題解決ができる人材の育成を目指す。
 従来は、ICT技術のわかる人材が通信キャリアや事業者のみに存在しており、一般のユーザ企業はそれらキャリアや事業者にICTを用いたサービス構築を発注するという構造が成り立っていた。しかし、現在のIoTやビッグデータに代表されるサービス構築においては、ユーザ企業が何をやりたいかを明確に定義し、その定義に基づいた要求事項に従ってICT技術を武器として使い、サービス自体とサービスを用いた戦略を構築する時代となっている。この時代の流れに対応することができる、いわばICT技術の「アーキテクト」を行うことができる人材を育成する。

<授業計画及び準備学習>
第1回 : 本講義の概要と目的
 ICT サービス構築技術の概要と目標を確認する。技術自体を習得するのではなく、構築するサービスの要求事項を把握し、適切に技術を適用できる知識と技能を習得する「サービスを構築する」ということを事例を用いて紹介する。また、本講義を履修するにあたって必要となる知識やツールに関して確認を行う。

第2回 : クラウド技術の概要とクラウドサービス構成法
 昨今幅広く利用されている商用クラウドサービス (Amazon AWS, Microsoft Azureなど) においてその基盤を構成しているネットワーク,仮想化,ストレージ技術について座学を通して理解を深める。

第3回 : ストレージ/データベース技術
 OSのファイルシステムおよび各種ネットワークストレージ技術についてその基礎を学ぶ。加えて,データベースの基礎と設計を学ぶ。

第4回 : 商用クラウドサービスの利用
  商用のクラウド環境を利用し、ウェブサービスの構築実習を行う。実習では、DNS,ロードバランサ,CDNを駆使した動的な負荷分散が可能なシステムの構築を目標とする。 

第5回 : 商用クラウドサービスの活用
  第4回の実習を踏まえて、動的負荷分散が可能なサービスの構築と商用クラウドの提供するAPIを利用して遠隔からのクラウド環境の制御を行う。

第6回 : SDN/NFV技術の概要
 Software Defined Networking (SDN) の概念を学習し、ソフトウェアによるネットワーク制御の基礎を理解する。様々なSDN技術を俯瞰しそれぞれの特色を理解し,SDNを活用したネットワークの長所と短所を事例を通じて学習する。また,ネットワークの機能(ファイアウォール,DPI,ルータなど)を仮想化し柔軟にサービスを提供するNetwork Function Virtualization (NFV) について、NFVの登場した背景と構成する技術やいくつかの実現方法について理解を深める。

第7回 : SDN技術の実習
SDNプログラミングの概要と基礎的な技術を、SDN コントローラとSDNスイッチを用いた実習を通じて学ぶ。演習では、OpenFlowフレームワークを用いてファイアウォールや各種ネットワークアプリケーションの実装と検証を行う。

第8回 : 無線技術の概要
 小型の様々なデバイスが登場し、それらをネットワークに接続し、データ収集を行い多様なサービスに生かすことが行われている。これらのデバイスをインターネットに接続するためには省電力で通信領域が広い無線ネットワークが必要不可欠である。本講義では、複数の無線技術を俯瞰しそれぞれの違いと動向について理解を深める。

第9回 : インフラ構築・監視・管理技術
 本講義では、ネットワーク/サービスインフラの構築の自動化について学ぶ。また、安定したインフラ運用には、ネットワーク, サーバ,サービスの多岐にわたる状態監視と異常検知が欠かせない。そのため、インフラにおいてどのようなデータを取得し、監視すべきかを学ぶ。

第10回 : インフラ構築・監視・管理技術(実習)
 第9回で学んだ内容を実習を通して理解を深める。構築の自動化部分では、AnsibleやNetconfを利用したサーバ、ネットワーク機器の設定を行う。また、監視ではsnmp, sflow/netflowを利用したネットワークおよびトラフィックの状態監視実習を行う。

第11回 : 通信・サービスインフラにおけるセキュリティ
 通信インフラおよびサービスを提供する上で、セキュリティが必要不可欠な要素となっている。本講義では、インフラにおけるセキュリティの重要性を理解し、多種多様なセキュリティ技術を理解し,どのようにして安全な通信を実現するかを学ぶ。

第12回 : ネットワークサービス設計・構築
サービスを構築するにあたってネットワークに求められる要求事項と、要求事項に基づいたネットワークの設計について、事例を用いて紹介する。ネットワークの規模に応じた適用技術とその運用・管理の手法について学習する。

第13回 : ネットワークサービス構築・実習
 前回に引き続き、与えられたグループワークとしての課題に応じたネットワークとサービスの設計と構築を行う。グループワークでは、講師陣が用意したクラウド環境やサーバを利用して課題達成に必要なサーバの構築,プログラムの作成を行う。必要に応じて講師とTA/SAがグループの課題について助言を行う。

第14回 : まとめと振り返り
 第12回,第13回の設計構築実習結果の発表を行い,講評を行う。本講義で得られた知識をどう活かすか、また応用編の講義にどうつなげていくかの解説と検討を行う。

<成績評価方法>
第13回までの実習内容をレポートとして提出し、第14回の発表をレポート:発表=6:4で総合評価する。評価結果はA+,A,B,C,D,Fの段階に分類し、D以上を合格とする。

<教科書>
特に指定しない

<参考書>
特に指定しない

<オフィスアワー>
月曜1限の授業終了後、教室もしくはA2376にて。なお、学外講師の先生においては、ご都合の調整が必要なので、とりまとめ教員から個別に連絡する。

<学生へのメッセージ>
第一線で活躍されている学外講師を招き、実践的知識と技術を修得できる授業である。この授業を通して各企業の現役技術者向け講座との連携やInteropなどの展示会で技術披露まで可能な、まさに実社会、実務と連結した講義である。最新技術の習得や就職活動の情報収集に全面的に活用できる授業であるため、積極的な受講を勧める。


ナンバリングはこちら
このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2018 Kogakuin University. All Rights Reserved.