2018年度工学院大学 情報学部情報デザイン学科

情報デザイン先端技術(Technical Topics of Information Design)[2E20]

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2単位
蒲池 みゆき 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
現代社会において、情報に関する技術は、我々が日常生活を送る上で欠かせないものである。しかしながら、情報に関する技術は広範囲にわたっており、分野だけではなく、研究開発のフェーズも、基礎研究から応用、さらには実用化、商品開発まで多岐にわたっている。本講義では、社会の第一線でご活躍されている講師を大学外部からお招きして、オムニバス形式で講義を進める。お呼びする講師陣はすべて、日本の情報科学技術をリードする「NTTコミュニケーション科学基礎研究所(CS研)」よりお招きする。
本講義を通して、情報に関するさまざまな分野の知識と研究開発に触れ、自らの視野を大きく広げてもらいたい。なお、講義の内容は学部・修士課程の両者にとって有益なものとなることから、同時開講とする。

<受講にあたっての前提条件>
各講義分野について、事前によく調べ講義に臨むこと。質問時間がある場合には積極的に質問すること。

<具体的な到達目標>
各回の講義を通して、情報が関係するさまざまな分野の研究、開発状況やその方法論を学修し、他の講義に活かすこと。また就職、進学を考えるヒントを得ること。

<授業計画及び準備学習>
初回、担当蒲池みゆきより、講義の進め方の説明および概要を説明する。続いて講師をお招きし講義を行っていただく。
1. 9月11日 講師:山田武士(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 所長)
講演題目: 「コミュニケーション科学」概要
担当教員: 蒲池みゆき
昨今、人工知能(AI)に関する話題が日々、注目を浴びています。そのうちAIは人間の能力を超えてしまうとか、人間の職を奪う、などの議論もあります。しかし、本来目指すべきAIは決して人の仕事を奪い人と対立する関係ではなく、人の能力を補強して引き出し、その生活を豊かにしていくべきものと考えます。我々はコミュニケーション科学として、情報と人間への深い理解を通じてこれらを実現するための要素技術に様々な角度から取り組んでいます。その一連の取り組みを紹介する本講義シリーズの初回となる本講義では「こころまで伝わる」を目指すコミュニケーション科学の取り組みの全体像をわかりやすくご紹介します。

2.9月18日 講師:柏野牧夫(フェロー スポーツ脳科学プロジェクトマネージャ)
  講演題目: スポーツ脳科学
  内容:スポーツの試合では、状況把握や相手との駆け引き、プレッシャー下での瞬時の意思決定をはじめとするさまざまな脳機能が勝負の鍵を握る。しかもその大半は、本人も自覚できない「潜在的」な脳機能である。2017年1月に発足したNTTスポーツ脳科学プロジェクトでは、トップアスリートの優れた潜在脳機能を解明して勝つための要因を特定し、それに基づいて実際にアスリートのパフォーマンスを向上させることをめざして研究を進めている。本講義では、野球とソフトボールを中心に、研究内容の一端を紹介する。
 
3.9月25日 講師:古川茂人(人間情報研究部長 感覚共鳴研究グループリーダ)
  講義題目:「隠れた」聴覚メカニズムを探る
  内容:われわれを取り巻く音環境は時々刻々と変化する複雑なものであるにもかかわらず、我々は安定な知覚を維持できている。本講義では、それを支える意識に上らないレベルのさまざまな聴覚の働きを解説するとともに、こういった「隠れた」聴覚機構を探るためにNTTの研究室で行ってきた取り組みを紹介する。

4.10月2日 講師:西田眞也(上席特別研究員 人間情報研究部 感覚表現研究グループリーダ)
講義題目:質感の視覚科学
内容:われわれ人間は、見ることにより、目の前にあるものがどのような色や形をしているのかということだけではなく、それがどのような材質でできていて、どのような状態にあり、またどのような感性的価値をもつのか、を判断することができる。講義では、このような人間の質感の認識に関する最先端の研究を紹介する。

5.10月9日 講師: 五味裕章(上席特別研究員 人間情報研究部 感覚運動研究グループリーダ)
  講義題目:感覚運動系における脳の情報処理
  内容: 人はどのような情報処理によって外界から得た感覚情報に基づいて運動を生成するのか?これは多くの人が抱く疑問であり、また学術的・応用的にも極めて重要性の高い問題の1つである。本講義では、腕や眼の運動を題材に、感覚系から入った信号がどのような情報処理を経て運動生成に結びつくかについて様々なレベルで明らかにしようとする、計算論・モデル・心理物理・神経生理学などの研究事例を紹介する。

6.10月16日 講師:柏野邦夫(上席特別研究員 メディア情報研究部長)
  講義題目:メディア情報処理とアルゴリズム
内容:アルゴリズム(計算の方法)を工夫することで、一見不可能に 思えることが可能になったり、桁違いに効率的な情報処理が可能になったりする。本講義では、我々が既に日常生活の様々な場面で利用しているメディア情報処理をいくつかとりあげ、その実現を内部で支えている基本アルゴリズムを説明する。ユーザとしての表面的な理解だけではなく、その中身に立ち入り巧妙な仕組みについての理解を深めることで、アルゴリズムを工夫することの面白さと素晴らしさを体感して頂く。

7.11月6日 講師:中谷智広(上席特別研究員 メディア情報研究部 信号処理研究グループリーダ)
  講演題目: コンピュータにより音を聞き分ける技術
  内容: 近年、AIスピーカに代表されるように、人の声を聞き取り応答するコンピュータが登場しています。本講演では、これらの機能を実現するためのコンピュータの耳にあたる部分「音声音響処理」の技術課題とその解決方法について、最新技術を含めて解説します。

8.11月13日 講師:永田昌明(上席特別研究員 協創情報研究部 言語知能研究グループリーダ)
講義題目:ニューラル機械翻訳
内容:本講義では、ある言語の文を別の言語の文に翻訳する技術である機械翻訳について解説する。まず身近な言語処理技術の代表例としてかな漢字変換を紹介し、次にルールベース翻訳、統計的機械翻訳から現在の主流であるニューラル機械翻訳へ至る機械翻訳の技術の流れを紹介する。そしてニューラルネットに基づく機械翻訳技術がチャットボット、質問応答、文書要約、画像インデックス生成など様々なアプリケーションに応用されていることを紹介する。

9.11月20日 講師:澤田宏(上席特別研究員 協創情報研究部長)
  講義題目: 機械学習
  内容: 本講義では、古くから研究され続けており、近年急速に適用事例が増えている機械学習の技術について基礎的な事柄を学習します。「教師あり機械学習」については、オープンソースツールを使いこなすことを意識して、中身の数式やアルゴリズムには触れずに分かりやすく説明します。「教師無し機械学習」については、音を聞き分けるという身近な実問題を題材にします。これを解くために確率統計の考え方が有用であることを説明します。

10.11月27日 講師:納谷太(企画担当主席研究員)
講義題目:実世界センシングとビッグデータ解析
  内容:IoT技術の進展に伴い、人やモノや環境に付随するあらゆる情報をセンシングしてデータ化し、多種多様なビッグデータ解析により、データに潜む性質や特徴を明らかにし、将来を予測し、人や社会システムを駆動することが可能になりつつある。本講義では、人と環境、社会にまつわる様々な活動のセンシング技術およびビッグデータ解析技術について、多数の事例を交えて紹介する。

11.12月4日 講師:小林哲生(主幹研究員 協創情報研究部)
  講義題目:こどもがことばを覚えていく道筋と仕組みの解明
  内容: こどもがことばをどのように覚えていくかは、人間科学の分野の難問の1つであり、いまだに謎の多い問題である。講義では、(1)語彙発達に関する長期的な追跡調査からわかってきた「語彙爆発」の仕組みや、(2)大規模データ解析からモデル化した各単語の発達特性とそのデータベース化、(3)親の発話スタイルが及ぼす幼児の語彙発達への影響、(4)文法的情報を手がかりとした語彙学習メカニズムの特徴、(5)言語発達遅滞児における語彙獲得の特徴などについて、発達心理学的観点から解説する。またこうした科学的エビデンスに基づいて行っている、(6)絵本検索システム「ぴたりえ」の研究開発と実用化、(7)赤ちゃんのおしゃべりをサポートする絵本監修の活動、(8)NHK教育テレビ「いないいないばぁ」での知育コンテンツ監修の活動などについても紹介する。

12.12月11日 講師:守谷健弘(フェロー 守谷特別研究室長)
  講義題目:音声と音響信号の符号化
  内容:携帯電話やデジタル放送にように電波を使って音声や音楽を伝送するサービスの実現に必須の情報圧縮符号化技術について解説する。双方向と片方向の通信の対比、ひずみを許す符号化と許さない符号化の対比、標準化の動向の紹介の中で、代表的な要素技術と歴史と今後展望を説明する。
参考解説:
・守谷、鎌本、守谷、原田、杉浦、"音声音響符号化技術の進展 -線形予測分析の貢献、" 電子情報通信学会、Fundamental Review, Vol.10, No.4, pp. 246 -256, 2017.
・守谷、小澤、”音声・オーディオ符号化”電子情報通信学会 知識の森 2群8編
http://www.ieice-hbkb.org/portal/doc_449.html

13.12月18日 講師: 谷誠一郎(上席特別研究員 メディア情報研究部  情報基礎理論研究グループリーダ)
  講演題目: 量子コンピュータと量子通信
  内容: 量子コンピュータや量子通信は、将来の革新的情報処理・通信技術として、世界のメディアで大きな注目を集めている。量子コンピュータは、何でも高速にとけるのか? 量子通信は、絶対に安全な通信を実現できるのか? 量子コンピュータと現在のコンピュータとの違いは何か? このような基本的な問いに対する答えを知っておくことは、これからの技術系人材にとって必須であろう。本講義では、量子技術を用いた情報処理・通信に関する基本的かつ重要な話題をとりあげ、上記の問いに対して答える。

14.1月22日 授業の振り返り (担当教員: 蒲池みゆき)

<成績評価方法>
毎回出席を取る。成績は毎回講師が要求するレポート等の合計点で評価する。レポート提出方法は毎回連絡するので、必ず出席の上で確認すること。

<教科書>
指定教科書はない

<参考書>
各講師の指示する参考書、HPなど。

<オフィスアワー>
質問は講義時間中または講義終了後
新宿校舎 原則午前10時から午後5時(ただし講義、会議の時間帯は除く)
面談希望者は事前に蒲池宛、メールで連絡、確認すること

<学生へのメッセージ>
本講義は、2015年度から開講されていた講義をもとに、今年度からリニューアル開講する内容となっている。
情報学に関わるさまざまな分野の高度な知識と経験をおもちの講師をお招きし、ご講演いただく。
大変貴重な機会なので、講義には真摯な態度で、かつ真剣に臨んでもらいたい。


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