2018年度工学院大学 情報学部コンピュータ科学科

ディペンダビリティ概論(Introduction to Dependability)[4M04]

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2単位
小野  諭 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2018/12/14

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
止まらない安全なシステムを求める歴史は長く、それらを扱う体系的な方法や技術が、ある程度確立しています。
一方、我々の生活がネットワークサービスに強く依存するようになってきており、また、自動車の運転の自動支援など、これまでより高度な対策が社会から求められつつあります。
情報技術者としての活躍の場が広がっているといえます。

この講義では、こうした伝統的・体系的知識と、新しい動きをバランスをとりながら講義していきます。学生が日常生活の中で身近かに感じられる事例を数多く紹介し、特にその事故事例の分析を通して、「安心・安全」の重要性とそれを支える技術基盤について、興味を持ちながら理解し、将来に活用できるようにしていきたいと思います。

<受講にあたっての前提条件>
前提となる科目はない。ただし、「情報ネットワーク論」を履修していることが望ましい。
(ただし、履修の必須要件ではない。)

<具体的な到達目標>
以下の各項目について、専門知識を具体例とともに理解し習得する。
さらに、数多くの事例検討を通して、比較的単純な場合について、自ら知識を適用できるようにする。
また、最新のトピックスについて概要を紹介し、さらなる学習を自ら進める基礎をつくる。

I: ディペンダビリティの重要性
II: ディペンダビリティへのリスクと対策
III: ディペンダビリティ達成への技術的対策
IV: 安全クリティカルシステム

<授業計画及び準備学習>
I: ディペンダビリティの重要性

1. ガイダンス
- 対象とする情報システムの分類
  (組織)情報システム, 安全クリティカルシステム
- システム、リスク、セキュリティ、ディペンダビリティとは
- 情報セキュリティとの相互関係

2. 重大なシステム障害の事例検討
- 事例検討1A: 重要 IT システムの大規模障害例
- 事例検討2A: ネットワークに発生した重大障害の例
- 事例検討3A: ビジネスへのメリット: 航空機 ETOPS
- ディペンダビリティ達成へのアプローチ

II: ディペンダビリティへのリスクと対策

3. ディペンダビリティの基礎概念と評価尺度
- システム、リスク管理の基礎概念
- 評価尺度:可用性、信頼性、拡張性、安全性

4. ディペンダビリティへのリスクと対応へのアプローチ
- ディペンダビリティへのリスク
- リスクへの対応手段
 *冗長性と多様性(管理的、物理的、技術的)を用いた対応手段
 *形式的検証 (モデル検査技術)
 *その他のディペンダビリティ向上手段
- 事例検討4: 銀行基幹システムに発生した大規模障害

5. ディペンダビリティで考慮すべきリスクの全体像
- システムが停止する理由の分析 (技術、運用、自然災害など)
- 事例検討5: 運用者の操作ミスが引き起こした大規模障害

III: ディペンダビリティ達成への技術的対策

6. 情報システムの構成要素と主なリスク
- 事例から学ぶシステムの構成要素と「止まる理由」
- ディペンダビリティ達成への技術的対策の全体像

7. 構成要素別の向上技術 1
- ネットワークのディペンダビリティ向上への技術的対策
- 事例検討2B: ネットワークに発生した重大障害の例

8. 構成要素別の向上技術 2
- データ保護と災害への技術的対策
- 事例検討1B: 重要 IT システムの大規模障害例(データ消失)

9. 構成要素別の向上技術 3
- サーバのディペンダビリティ向上への技術的対策
- 事例検討1C: 重要 IT システムの大規模障害例(サービス停止)

10. 構成要素別の向上技術 4
- データセンタファシリティのディペンダビリティ向上への対策
- 事例検討1D: 電源トラブルが大規模サービス停止を招いた例

IV: 安全クリティカルシステム

11. 安全クリティカルシステムとは
- ハザードとインシデント
- システムの故障の仕方とその影響: 確率的なものと系統的なもの
- 事例検討6: ロケット Arian 5 爆発事故に見る系統故障の重大性

12. 安全性分析と評価
- 設計・運用への要求
- 事例検討3B: 航空機 ETOPS における認証プロセス例

13. 安全性達成へのプロセスと対策
- ソフトウェア成果物の品質測定法
- リスクアセスメント: FTA と FMEA
- 事例検討7: 自動車自動走行Drive-by-Wire

14. 全体の振り返り

<成績評価方法>
期試験期間に試験を実施する。講義資料のプリント、自筆ノート持ち込み可。
講義内容を理解し、簡単な課題に応用できるレベル。
単位取得には、授業の 2/3 以上の出席が必要。(初回および補講は出席とみなす。)

<教科書>
資料を kuport にて電子配布する。
必要に応じて、印刷プリントを配布する。

<参考書>
講義の中で、適宜、参考となる資料を紹介する。

<オフィスアワー>
前期の期間、毎週木曜3限
新宿キャンパス 高層棟 A-1577

<学生へのメッセージ>
この講義では、情報漏洩・不正アクセス・改ざんを防ぐなどの情報セキュリティに関する項目は扱いません。これらの分野にも興味がある学生には、サイバーセキュリティやセキュアシステムに関する授業や PBL の受講を強く勧めます。


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