2017年度工学院大学 先進工学部応用物理学科

制御工学(Control Engineering)[3E26]

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2単位
疋田 光孝 非常勤講師  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2018/09/28

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本授業科目は将来の高度な物理実験、ロボット、産業機械などに必要な装置等の制御に関して学ぶ。共通の知識をベースとする電気回路の過渡現象に関しても学ぶ。初めに、時間領域での解法とラプラス変換による解法を勉強する。次に、1次遅れ系、CR、LR、LCR回路を例にインパルス(デルタ)関数/ステップ関数入力に対する応答を勉強し、そこから伝達関数の概念を把握する。また、伝達関数を基にボード線図、周波数特性、利得と位相の概念を勉強し、それらが物理現象とどのように結び付くかも学ぶ。最後に系にフィードバック要素を含むPID制御の基礎も学ぶ。

<受講にあたっての前提条件>
本科目を履修するに当たり、微分、積分、線形代数、物理学、複素関数論、電気回路I、II、応用力学Iを履修し合格しておくことが望ましい。

<具体的な到達目標>
本科目で履修した内容は、工学の基本を形成し、電気回路や応用力学などの専門科目の理解を一層深めると同時に、将来実社会で遭遇する類似の課題においても基礎知識として役立つものです。目標は、物理的な実験や装置の組み合わせなどで工学上良く直面する比較的簡単な制御に関する課題に対処出来るようになることです。

<授業計画及び準備学習>
1. ガイダンスと制御工学概論:初めに「制御工学」の位置づけ、学習内容、他の科目との関連等に関して説明する。また、なぜ制御が必要かを把握する。1年次の物理学を復習しておくこと。ホームワークを行い復習する。
2. 実時間領域での解法:落下問題と車の加速を例に、系に摩擦を含む場合について学ぶ。一階の非斉次微分方程式で表される簡単な例(プロセス)を実時間領域で解き、単純なエネルギー保存則は成り立たないことを把握する。配布テキストの「補足資料(2)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
3. ラプラス変換による解法(基礎):ラプラス変換の定義と基礎的な応用を学ぶ。車の加速を例に取り、一階の非斉次微分方程式で表される簡単なモデルをラプラス変換を用いて解くことにより、新しい解法を把握する。配布テキストの「補足資料(3)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
4. ラプラス変換による解法(応用):ラプラス変換の応用に関して学ぶ。車の加速を例に、加速時間が有限の場合について、ラプラス変換を用いて解く。微分関数や指数関数のラプラス変換と「時間関数とラプラス変換の対応表」も同時に学ぶ。また、伝達関数、ブロック線図の概念も同時に把握する。配布テキストの「補足資料(4)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
5. 学習成果の確認(授業内試験):「補足資料(1)〜(4)」の内容に関する試験。試験範囲内の「補足資料」、対応するホームワーク等を十分勉強しておく。
6. CR電気回路の過渡現象(実時間領域での取り扱い):容量Cと抵抗Rの直列回路をステップ関数的な入力電圧で充電する場合の過渡現象に関して学ぶ。一般的な時間領域での解法を用いて各部の電圧の過渡特性を求める。配布テキストの「補足資料(5)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
7. LR電気回路の過渡現象(実時間領域での取り扱い):インダクタンス(コイル)Lと抵抗Rの直列回路にステップ関数的な入力電圧を印加する場合の過渡現象に関して学ぶ。コイルに流れる電流の変化と励起電圧の関係を復習する。一般的な時間領域での解法を用いて各部の電圧の過渡特性を求める。配布テキストの「補足資料(6)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
8. ラプラス変換によるCR、LR回路の過渡現象の取り扱い:CR、LR回路の過渡現象は、時定数の導入により同じ一階の非斉次微分方程式で表されることを確認する。一階の非斉次微分方程式をラプラス変換することで、これらの過渡現象は「時間関数とラプラス変換の対応表」を用いて容易に解ける(これを逆ラプラス変換と言う)ことを学ぶ。また、解は従来の時間領域での解法結果と一致することを確認する。配布テキストの「補足資料(7)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
9. デルタ関数的な入力に対する振動系の扱い:初めにデルタ(インプルス)関数の定義とその性質およびラプラス変換に関して学ぶ。実社会で良く遭遇する例の簡易モデルとして、損失の無い「スプリング - マス系」にインパルスハンマーで打撃を加えた場合を扱う。出力は伝達関数そのものが得られること、更に対応表を用いて逆ラプラス変換すると、時間関数出力は永久に続く振動で表されることを学ぶ。物理的には、伝達関数の絶対値(ボード線図の一部)が振動周波数で無限大となることに対応することを確認する。配布テキストの「補足資料(8)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
10. 学習成果の確認(授業内試験):「補足資料(5)〜(8)」の内容に関する試験。試験範囲内の「補足資料」、対応するホームワーク等を十分勉強しておく。
11. LC共振回路へのデルタ関数/ステップ関数的な入力に対する扱い:力学的に無損失な「スプリング - マス系」に対応する電気的な例として、「LC共振回路」にデルタ(インプルス)関数的な入力電圧を加えた場合について学ぶ。「スプリング - マス系」の場合と同様に永久に続く振動(共振)で表されることを確認する。更に、より現実的な入力電圧として、ステップ関数的な電圧を加えた場合についても学ぶ。対応表を用いて逆ラプラス変換すると、時間関数出力は同様に共振が永久に続くことを学ぶ。配布テキストの「補足資料(9)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
12. 抵抗を含むLCR共振回路の過渡現象の扱い:自然界の現象は良く電気回路で置き換えて議論する。系の摩擦などの損失は抵抗Rで表される。LCR共振回路は類似の物理現象を等価的に表すことが出来る。LCR共振回路にデルタ(インパルス)関数的な入力電圧を加えた場合の過渡現象をラプラス変換、対応表による逆ラプラス変換を用いて求める。時間関数出力は減衰しながら共振し、良く遭遇する物理現象を表すことを学ぶ。また、減衰と共振は伝達関数の絶対値と位相を表す「ボード線図」を用いることで、理解出来ることを学ぶ。配布テキストの「補足資料(10)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
13. 負帰還を掛けた制御系の扱い:物理実験などで温度条件等を迅速に制御する場合、系の減衰と共振を最適化することが必要である。最も効果的な手法が出力の一部を入力に戻す「負帰還」である。ハードディスクのヘッドの移動を例に、負帰還の扱いに関して学ぶ。初めに、ブロック線図を用いて負帰還の概念を把握する。ラプラス変換、逆ラプラス変換により、損失と負帰還定数を組み合わることで最適な解が得られることを学ぶ。配布テキストの「補足資料(11)」を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
14. 学習成果の確認(授業内試験):「補足資料(9)〜(11)」の内容に関する試験。試験範囲内の「補足資料」、対応するホームワーク等を十分勉強しておく。

<成績評価方法>
毎週のホームワークの提出で50点(授業に欠席した場合は無効)、授業中の試験3回の平均点で50点とし、これらの和で評価する(和が60点以上で合格)。ただし、無断欠席は3回までとし、4回以上は履修放棄と見なす。

<教科書>
授業の初日に、用いる授業資料(テキスト)を配布します。

<参考書>
山本重彦、加藤尚武“PID制御の基礎と応用”、朝倉書店
など多数あるが、なるべく易しく書かれた本を勧める。

<オフィスアワー>
八王子(1Q):
水曜日12:50-13:10 @ 講師室
土曜日12:50-13:10 @ 講師室
新宿:
水曜日(3~4Q) 12:50-13:10 @ 講師室
金曜日(1~4Q) 12:50-13:40 @ 講師室
その他、メール(hikitami@cc.kogakuin.ac.jp)
は何時でも受付ます。

<学生へのメッセージ>
基礎的なことから例題を用いて丁寧に説明しますが、分からないことがあったら、授業中に積極的に質問して下さい。毎回ホームワークを出しますので、次週にコピーを提出して下さい(学んだことはその週の内に理解して下さい)。本科目は、将来社会に出てから、技術者として必要な基本的な知識の一つともなります。


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