2017年度工学院大学 情報学部コンピュータ科学科
セキュアシステム(Secure System)[1H19]
2単位 小野 諭 教授 [ 教員業績 JP EN ]
- <学位授与の方針>
○ | 1. 基礎知識の習得 | ◎ | 2. 専門分野知識の習得 | | 3. 汎用的問題解決技能 | | 4. 道徳的態度と社会性 |
- <授業のねらい>
- 講義では、企業や組織の活動を支えるビジネス情報システムについて、その安心・安全を支えるセキュリティ管理の概念とプロセス、技術について学ぶ。
加えて、関連のある最近の興味深い事例を検討することで、学んだ知識を簡単なシステムに展開する力をつける。
具体的には、以下の項目への理解を深め、応用力をつける。 *セキュアシステムの基礎 *情報セキュリティマネジメントとセキュリティアーキテクチャ *セキュアシステムの技術基盤 *クラウドコンピューティングのセキュリティ *プライバシーと匿名加工情報
- <受講にあたっての前提条件>
- 前提となる科目はない。ただし、「情報ネットワーク論」を履修していることが望ましい。
(ただし、履修の必須要件ではない。)
- <具体的な到達目標>
- 以下の各項目について、専門知識を具体例とともに理解し習得する。
さらに、事例検討を通して、比較的単純な場合について、自ら知識を適用できるようにする。 また、最新のトピックスについて概要を紹介し、さらなる学習を自ら進める基礎をつくる。
*セキュアシステムの基礎 *情報セキュリティマネジメントとセキュリティアーキテクチャ *セキュアシステムの技術基盤 *クラウドコンピューティングのセキュリティ *プライバシーとパーソナルデータ
- <授業計画及び準備学習>
- 1. ガイダンスと事例検討 (第1〜2回)
- システム、リスク、セキュリティ、プライバシー、ディペンダビリティとは - セキュリティの対策とその実現手段とは - セキュリティ関連講義・演習の内容と相互関係 - 事例検討1: 情報セキュリティに関する最近の重大なトラブル
2. セキュアシステムの基礎 (第3〜5回) - システム、リスク管理の基礎概念 - 評価尺度:機密性, 完全性, 可用性, 真正性, 責任追跡性, 否認防止 (注: 信頼性は、本講義ではなく、別講義の「ディペンダビリティ概論」で扱う。) - リスクアセスメントとリスク対応(管理的、物理的、技術的) - 事例検討2A: 米国医療情報システム (米国連邦法 HIPAA)
3.情報セキュリティマネジメントとセキュリティアーキテクチャ(第6〜8回) - ISMS の目的とプロセス - 情報セキュリティ目的・目標の設定 - リスクアセスメントとリスク対応 - 情報セキュリティアーキテクチャ - 情報セキュリティアーキテクチャの構成要素とプロセス - 情報セキュリティ管理策 - 事例検討3: 重要インフラのための最重要技術的対策 (米国 CAG)
4.セキュアシステムの技術基盤 (第9〜11回) - 技術的対策の全体像 - 識別・認証、認可 (IAA) - 暗号化、電子署名と否認防止 - タイムスタンプと長期的改ざん防止 - システムへの攻撃と技術的対策との関係 (注: データ保護・災害対策は、「ディペンダビリティ概論」で扱う。)
(以下のふたつのトピックスは、事例検討中心で体系的なものではない。)
5.トピックス1: クラウドコンピューティングのセキュリティ (第12回) (注: この項目は、体系的には扱わず、事例を中心に扱う。) - クラウドコンピューティングの基礎 - クラウドに求められるセキュリティとコンプライアンス - 事例検討2B: Cloud に業務委託する HIPAA コンプライアンス
6.トピックス2: プライバシーと匿名加工情報 (第13回) - プライバシーとは - 個人情報と匿名加工情報 - 新個人情報保護法と国際的な規制 - EU データ保護規制とプライバシーシールド - 事例検討4: 航空機旅客予約情報 PNR の国際移転をめぐる最近の話題
7. 全体の振り返り (第14回)
- <成績評価方法>
- 期試験期間に試験を実施する。講義資料のプリント、自筆ノート持ち込み可。
講義内容を理解し、簡単な課題に応用できるレベル。 単位取得には、授業の 2/3 以上の出席が必要。(初回および補講は出席とみなす。)
- <教科書>
- 資料を kuport にて電子配布する。
必要に応じて、印刷プリントを配布する。
- <参考書>
- 講義の中で、適宜、参考となる資料を紹介する。
- <オフィスアワー>
- 前期の期間、毎週木曜3限
新宿キャンパス 中層棟 B0530
- <学生へのメッセージ>
- セキュリティやセキュアシステムの歴史は長く、それらを扱う体系的な方法や技術が、ある程度確立しています。一方、最近、モバイル、クラウド、対テロ対策などで、新たなリスクが生まれ、より高度な対策が求められています。
この講義では、伝統的・体系的知識と、新しい動きをバランスをとりながら講義していきます。また、学生が身近かに感じられる事例を通して、「安心・安全」の重要性とそれを支える技術基盤について、興味を持ちながら理解し、将来に活用できるようにしていきたいと思います。
なお、この講義ではシステムの信頼性やスケーラビリティ、データ保護に関しては扱いません。これらの分野に興味がある学生には、「ディペンダビリティ概論」の受講を勧めます。
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