2017年度工学院大学 建築学部まちづくり学科

事業運営の基礎知識(Management of enterprise and business activities)[4E06]

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2単位
玉川 雅之 特任教授  
最終更新日 : 2018/09/28

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性

<授業のねらい>
本授業の副題は「ものづくりなどの事業に役立つ会計・ファイナンス・経営論の基礎知識」である。「ものづくり」など理工系の技術を生かして事業に参加し、社会で活躍しようとする本学院の学生に焦点を合わせて、事業を実際に運営し、成功させていく上で有益と考えられる会計、ファイナンス(金融、財務)、経営戦略、リスク管理などについての基礎知識を習得させるとともに、基本的な概念(キーコンセプト)やそれらを使った思考方法に馴染めるようにする。

<受講にあたっての前提条件>
工学院大学で専門的に習得する科学技術や工学を経済社会の中で生かしながら、企業に就職したり起業したりすることを含めて、関連するプロジェクトや事業に積極的に携わり、成功させたいと思う方に受講してほしい。

<具体的な到達目標>
1 事業とはどのようなものか、技術やものづくりとどのような関係になるのか、事業を成功させるためにはどのようなことが必要なのかを考察・理解を理解する上で有用な基本コンセプトやキーワードを習得する

2 事業の状態や成果を正しく観測するために必要な会計(アカウンティング)の基礎概念を理解し、財務諸表の作られ方、読み方についても馴染めるようにする

3 事業の行う上で必要になるお金・貨幣(マネー)の意義や、その使い方、調達方法(ファイナンス)の基礎概念を理解する

4 競争的な環境の下で事業を存続させ、成功させていく上ではどのようなことが重要か、「勝つための戦略」としてどのようなことが論じられてきているかについて理解する

5 不確実性を伴う環境の下で事業を行う上で向き合わなければならない「リスク」とその賢明な対応方法について理解する

6 日本経済・企業をとりまく19世紀や20世紀の事業環境から大きく変貌しつつある21世紀型の環境のもとでの事業活動の在り方や今後のチャレンジについて理解する

7 キーワードについては、英語でどう表現するかについても紹介するので馴染んでほしい

<授業計画及び準備学習>
I 事業運営への入門
第1週 事業活動とはどのようなものか
 事業活動とはどのようなものかについて説明する。
とくに「ものづくり」の技術などを生かして自分で起業を行う場合、企業のビジネスに携わる場合、公的な事業に携わる場合あるいは何か重要なプロジェクトの実行に関わる場合などを想像しながら、事業は何のために行っているのか、そのような活動がうまくいくためにはどのような知識が必要か、そのような課題を解決しなければいけないかを考えながら次回以降の講義に積極的に参加できるため導入(イントロダクション)を行う。

準備学習:シラバスをよく読んでおく。

II 事業活動と会計 
第2週 経済取引と会計の基礎概念
 事業活動を行う上では“もの”を売買する、“人”を雇う、“お金”を受けとったり、使ったり、貸したり、借りたりするなどの様々な経済活動、経済取引を積み重ねていくことになる。
そのような経済活動をどうやって記録し、集計し、その結果をまとめるかという観点から、簡単な取引を行う事例に即して、会計の基礎概念を説明し、「売上、キャッシュフロー、経費、収益、資産、負債、企業価値」などの会計用語の意味を理解し、利用可能にするための基礎知識を提供する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第3週 会計関連情報の集計方法
 事業活動の結果は、資産負債残高表(BS)、損益計算書(PS)などの財務諸表として集計、整理されて、企業の業績を分析、理解、説明する際などに利用される。経済取引の集積からBS、PLなどがどのように集計されていくのか、BSやPLの中の主要項目が何を意味するのかを説明し、経済取引に関する基本情報である会計関連情報の集計結果(会計データ)を、事業活動がうまく運営されるために必要な基本的な知識、思考方法などを教授する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第4週 会計データの使い方
 会計データを使った思考方法や、BLやPSなどの財務諸表の読み方に馴染んでくると、実際にはどのようなことが分析、理解できるのか。事業活動の成果や変化が会計データに反映され、それをもとに企業経営の今後の方針を策定したり、問題を解決することが必要になる具体的な事例をいくつか紹介しながら、会計データの使い方について解説し、さらに会計を勉強したり、深く理解したい者があれば、学習方法や参考文献を教示する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

III 事業活動とファイナンス
第5週 貨幣(マネー)、金融(ファイナンス)とはどのようなものか
 経済活動は貨幣(お金)を使って行われることがほとんどであり、事業活動の成果も貨幣の額で計算され、お金がたまったり、失ったり、余ったり、不足するといったマネーに関わる事態にしばしば遭遇し、問題解決を迫られる。同時に貨幣の融通などを事業の柱とするする金融サービス事業者が存在し、事業活動においては金融サービス事業者との取引や活用が必要になる。
今回は「マネー、ファイナンスの世界」がどのようなものかを想像・理解するのに必要な基礎知識などを「金融取引」、の概念を出発点として使って説明し、事業活動に貨幣や金融がどのように関わるのかを理解するためのイントロダクションとする

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第6週 資金調達、資金運用および資本戦略
 事業活動に則して、マネーが関わってくる局面について、 経済取引の支払いと貨幣の移転(キャッシュフロー)に関する実例をスタートに「資金調達」、「資産運用」、「資本戦略」などの基本について説明する。
 さらにマネー、ファイナンスの基礎知識を使って、事業活動をうまく運営していくためにはどのようなことを理解し、考察することが必要かについて解説する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第7週 リスクや失敗可能性、困難への対応 
 事業活動は成功することを夢見て行われるが、当初に予想しなかった事態や困難に直面したり、判断のミスが重なったりして、うまくいかずに不振となり失敗し、倒産、破産、事業活動の停止、解体などに追い込まれケースも多々ある。
 今回は将来展望が不確実な状況で失敗する可能性を「リスク」としてとらえ、そのコンセプトを説明するとともに、会計とファイナンスのこれまで説明した基礎知識を使って、企業が失敗、倒産、破たんなどに至る事例をいくつか説明し、そのような失敗をさけるためにはどうすればいいかについて、議論する。

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

III 企業戦略とビジネスモデル
第8週 競争的環境と企業戦略
 企業は、似たような商品・サービスを生産・販売する事業者するなど、競争相手がいる中で活動を行い、そのような競争に勝ち抜き、あるいは生き残り、繁栄や高収益を実現するためにはどうすればいいかについて、経営戦略、企業戦略、競争戦略などの「戦略」が議論されて、多くの書物が書店にも並んでいる
 今回の講義では、競争的環境や変化する環境に対応して、企業は繁栄していく上では何が必要かについて、代表的な戦略論の実例を紹介して、その基本的考え方などを紹介する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第9週 ビジネスモデルの基本コンセプト
 事業活動が、似たよう事業者と異なってユニークな強みを持ち、その結果、顧客から選ばれ、売り上げが伸び、収益があがっているあるいは長期にわたって存続しているなど競争的な優位を獲得している状況を説明する上では、ビジネスモデルの用語が最近ではよく使われている。
 今回の講義では、ビジネスモデルの基本コンセプトについて説明し、ある企業のビジネスモデルの特徴や、その強み、弱みなどを理解する上では、そのような面に着目して、分析。すればいいかにつき、会計、ファイナンスの基礎知識も活用しながら、解説する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第10週 ビジネスモデルの比較、理解、分析方法
 ビジネスモデルの概念を活用すると、様々な企業とくに成功している企業の特徴が大雑把に理解できるようになる利点があり、ビジネスモデルを表現する方法も「ブルーオーシャン」、「剃刀と刃」など様々な示唆に富む用語が生まれてきている
今回の講義では、いくつかのユニークなビジネスモデルの実例を紹介し、事業活動が成功し、繁栄する上での方法も多彩であることを説明する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

IV 組織運営とリーダーシップ
第11週 組織とその運営
ほとんどの事業活動は、個人単独でというよりは、チームあるいはより大きな組織を編成して営まれている。多くの人は自ら事業を行うよりも、事業活動を行っている組織に参加して事業活動に携わることになる。
本講義で事業活動を行う様々な組織の特徴、組織編成の基本原則、企業と公的部門の組織運営の違いなどについてのべる

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第12週 組織運営とリーダーシップ
 組織を円滑に運営して事業を成功させていく上では、様々なレベルでリーダーシップを発揮できる人材が必要である、リーダーシップのあり方、望ましい経営者やリーダーのあり方、そのための自己開発方法などについては様々な議論が行われている。
 今回の講義では、組織の様々なレベルでリーダーシップがどのように発揮される必要があるかを整理しながら、21世紀型の組織、事業運営にとってのリーダーシップのあり方を議論する

準備学習:前回の授業内容を復習して、理解したことを整理しておくとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

第13週 21世紀型のものづくりと事業運営
 日本経済にとっては、21世紀においても、技術進歩や環境の変化に対応して、付加価値の高いもの(物質やサービスや情報の組みあわせ)を創出していく、21世紀型のものづくりをリードしていくような事業が活発に行われていくことが必要だが、21世紀型の環境の中で事業運営には何が求められるか、本講義の中で取り上げたことを振り返りつつ、議論を行う。

準備学習:これまでの授業内容を復習して、理解したことを整理し、翌週の期末試験のため準備を進めるとともに、あらかじめ配布された資料などを読んでおく

<成績評価方法>
リアクションペーパー、課題レポートおよび定期試験期間に実施する期末試験で評価を行い、A+〜Fの6段階評価でD以上の者を合格とします。リアクションペーパー、課題レポートと期末試験との評価割合は3:7。期末試験のために準備しておくべきことは第13週の講義までに示唆します。

<教科書>
特に指定しない。授業中に資料を配布する。

<参考書>
読んでおくと今後のために役に立つと思われる書籍を、授業開始時および授業中に積極的に紹介します。

<オフィスアワー>
木曜13:00〜13:30 新宿校舎13階(常務理事室)電話 3340-0120

<学生へのメッセージ>
本年度からの新規授業ですが、皆さんが工学院大学で学習された科学技術の知識や習得された理数系の学力を、経済社会や企業経営などにも生かしていくための橋渡し役を努め、今後のキャリアデベロップメントに貢献したいと願っています。

<備 考>
前期科目の「日本経済分析入門」(ものづくりなどの事業に役立つ日本経済の観察・理解・分析入門)とは補完的な関係にあり、経済社会と企業活動に関心のある方、就職活動の準備等に役立てたい方は両者を合わせて受講することを歓迎します。
本事業の履修にあたっては前期の事業の履修や予備知識は必要ありませんが、3年生の方には、来年前期の授業の履修にも役立つと思います。


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