△数学教育の研究Ａ（Study on Mathematics Teaching A）[9121]

＜授業のねらい＞

　数学は物事を数量の面から把握・分析しようとするもので，人間の生活や活動と深く結びつき，重要な役割をはたしている。しかし，今日の数学教育は入試などで不可欠の教科とされながらも，「できない生徒」「数学ぎらいの生徒」の問題が深刻になるなど，数学について興味をもたせ，理解を進めたり，実生活でその知識や技能を生かすことが出来るものとはなっていない。
　この授業では特に数学教育に実際に携わる立場からこれらの問題をとりあげ考えられるようにすること，数学教師としての力量を身につけていくこと，数学教育を人間教育という広い視野からとらえることができるようにすることをねらいとする。
　数学教育の研究Aでは，指導論，学力論を中心にとりあげる。この視点から，今日の数学教育の問題点を生徒の学習意欲と学力の低下に焦点をあてて考察し，それを改善するための教育方法と学習指導論を理解し実践ができることをねらいとする。

＜受講にあたっての前提条件＞

現代教職論、教育原論を修得済みか同時に履修していること。なお通年開講の本授業では1、2年生の履修を認めない。
中学校の教員免許希望者は，A，Bをともに履修すること。高校の場合は，A，Bいずれか一つでよい。すでにBを修得済みの者はその学習をふまえてより高度の自分の学習目標を持って臨むこと。

＜具体的な到達目標＞

今日の数学教育で数学学習の意義が明らかにされていないことの問題を理解すること，数学を学ぶことが，現代人にとってきわめて重要になっていることを認識して，その立場から指導法の改善にとりくむ視点をもつこと, 様々な数学教育論の特徴を理解することを目標とする。更にこれらをふまえて数学の授業を行う上で何が必要であるか，学習指導案作成，模擬授業の実施などを通して理解することを目標とする。
また中学校または高校の数学教材の一つを取り上げ指導案を作成できること、数学の授業を行うにあたって配慮すべき事項について理解することを目標とする。

＜授業計画及び準備学習＞

1. 数学教育　今日の問題　生徒はなぜ数学ができないか
2. 数学教育の課題について　（ショートスピーチ）
3. 学習指導案の書き方（指導を中心に）
4. 教科書の検討（指導の視点から）
5. 学習指導要領と改訂の動向について／教育課程の意義と編成
6. 学習指導要領と数学の指導
7. 指導の進め方 （１）導入−動機づけを中心に
8.　　　　〃　　（２）展開とまとめ生徒の学習活動，考えることを中心に
9. 　 　　〃　　（３）生徒の関心と意識，学習環境
10.　　　 〃 　 （４）数学学力の現状と問題
11.　　　 〃　 （５）数学学習の指導、情報機器の活用
12. 世界の数学教育（１）数学教育の目的を中心に
13. 　　　　　〃　（２）教科書をみる。
14. 数学教育の目的を考える　 前期のまとめ
15. 数学教育の歴史（１）幾何を中心に
16. 　　　　　〃　（２）代数・関数を中心に
17. 　　　　　〃　（３）実用教材を中心に
18.　　 　　　〃　（４）現代化とコンピュータ利用をめぐって
19. 学習指導案の講評
20. 特別授業(現場教員ないし教員経験者を招いての模擬授業)
21.〜26. 授業をやって考えよう（１）〜（６）（学生による模擬授業と講評）
27. 数学教師のあり方を考える／授業のまとめ
28. 学習成果の確認

　この授業は，生徒の身につけさせる数学の「学力」という視点から，数学教育の現状や課題を考えることを目的としているので，準備学習としては自分の受けた数学（算数を含む）教育を思い返し，問題をほり下げるよう努力すること。また新聞報道などにも注意して今日の数学教育の課題を考察することや教科書や学習指導要領，各種の指導法について，「学力」という視点から考察を深めるておくこと。数学教育に関わる論文・著書を読んで感想をまとめる。
中学校及び高校の教科書を見直し，どの教材（テーマ）で学習指導案を作成するかを考えておくこと。中学校・高校の教材を一つ選び、指導案を作成して提出する。コメントを付けて返却された後、修正のうえ再提出すること。
最終的には、学習指導を行う上で必要なことがらを知り，生徒の学力向上をめざす効果的な指導ができるための基礎について学習したことを踏まえて、学習指導案を作り，模擬授業を行うことができるようにする。模擬授業では授業者として実施できない場合でも生徒役としても積極的に取り組むこと。

なお、数学教育の研究Aは今年度は通年授業である。夏期の課題として蔵原清人の書いた論文について感想をまとめること。この課題については授業中に具体的に指示する。

＜成績評価方法＞

レポート及び最終試験による。指定レポートは2件必須(指導案の再提出を含む）とし、このレポートを提出しない場合は履修の放棄とみなし、試験を受験しても採点しない。
試験の答案がこの授業の達成目標に達している者を60点以上とし，単位を認定する。
すでに数学教育の研究Ｂの単位を修得済の者は試験ではなく第3レポートを提出すること。くわしくは授業中に指示する。

＜教科書＞

指定教科書なし。必要な資料は授業中に配付する。

＜参考書＞

中学，高校の数学教科書を用意すること。
「中学校学習指導要領解説数学編」（文部省）教育出版刊　※これは全員が購入しておくこと。
「高等学校学習指導要領解説数学編」（文部省）実教出版刊　※これは全員が購入しておくこと。
そのほか藏原の執筆した論文を参考文献として配布する。

＜オフィスアワー＞

授業終了後、教室または12階の講師室で行う。その他の時間については、事前にアポイントを取ること。

＜学生へのメッセージ＞

討論や意見交換，模擬授業などの機会を設け，皆で学びあいたい。授業への学生の積極的参加を期待する。模擬授業は，教育実習の準備として大変自信になるので，特に３年生は積極的に行うことを期待したい。