2016年度工学院大学 第2部建築学科

建築法規(Architectural Regulation)[2W01]

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2単位
小林 直弘 特任助教  
山岸 竜司 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
これから皆さんが携わるであろう「建築」 という行為は、社会環境に大きな影響を与えます。
記憶に新しいところでは、昨秋発覚した横浜市の分譲マンションにおいて、虚偽データに基づいた工事が行われ、複数の杭が地中の強固な地盤に届いておらず建物が傾いているという前代未聞の不祥事。ここ数年、建築業界では不祥事が相次ぎ、港区の高級分譲マンションでは、配管や配線を通すための「スリーブ」といわれる貫通孔が、設計図が示す通りに入っておらず、完成直前にも関わらず全て解体して建替えることとなりました。欠陥が発覚したきっかけは、インターネット掲示板への匿名の書き込みだったと伝えられています。本来は事業主が購入者に直接伝えなければならないのに、そうでなかったのは消費者対応に問題があると思います。失敗学の畑村洋太郎東大名誉教授は、「失敗を恐れ、失敗を恥じ、失敗を隠そうとするのではなく、白日の下にさらすことで、同じ失敗を繰り返すことを防げ」と唱えています。建築業界でも、失敗の中身と今後の対応策を探求し、情報をすべて開示して、二度と同じ過ちを繰り返さないように努力していかなくてはなりません。
東京オリンピックの影響もあり、まだまだ建設ラッシュは続いていますが、これから建築に携わる者は、その建築が社会から求められる「安全」「健康」「環境」に関する質を具備するものであることを「常識」として行動できなければ社会から淘汰されることになるでしょう。
この「常識」を身に着けるためには、まず、“社会の規範を知ること・守ること”から始まります。
「ごみ」を「ごみ箱」に捨てるのは、当たり前のことですが、現代社会においては、旅先などにおいて、海や山の恵みを享受された後は、“ごみを持ち帰る”ことから始めて、次には“ごみを減らす工夫”が求められています。アウトドア派のBBQでも、このような取り組みが顕著になってきているようです。
「建築法規」の授業を通して、社会生活の中での規範を学び、そのことが“建築”にどう関わっているのかを知ること・考えることによって、設計であれ、現場であれ、建築に携わる者として、自分たちの将来の“ものづくりに対する工夫“に繋げてもらいたいと思います。

<受講にあたっての前提条件>
講義後にKUPORTにUPされた資料の復習(主に例題)を必須とする。
※ 後述の<参考書A>については、誰でも読みやすい内容となっているため、準備学習として、予め一読しておくことを推奨します。

<具体的な到達目標>
私たちの暮らす日本国は、言わずと知れた「法治国家」です。
国が保障している安全・安心と、健全な生活を維持するためには、法令や規範も含め、大変多くのルールがあります。これらのルールをきちんと守り、実践するためには、そのルールの意味を理解することが最も大切です。
「建築法規」の授業について、具体的な達成目標としては、各条文をバラバラに理解するのではなく、建築関連法規の全体像を体系的に捉えることに力点を置きます。
加えて、第10週目からは、建築(本授業では主に設計監理)行為のプロセスに応じた法令・規制について、ボリューム・スタディなどの実例を取り上げながら、初歩的な実務をイメージできるレベルまで、ステップ・アップしていきたいと思います。また、実際に設計や工事監理業務を行う上での、法律上の留意点などについて、私の体験談を交えながら、伝えて行きたいと思っています。
建築法規を学びながら、実務をシミュレーションできる講義を目指しています。

<授業計画及び準備学習>
第1週:授業のガイダンス
■授業の進め方 (授業計画及び準備学習)

第2週:法令の基本中の基本を学ぶ (総則)
■建築基準法のしくみ
■用語の定義その1

第3週:法令の基本中の基本を学ぶ (総則)
■用語の定義その2

第4週:法令の基本中の基本を学ぶ (総則)
■面積・高さの算定方法
■次回小テストについて

第5週:建築法規小テストその1
■小テストその1

第6週:一般構造等
■小テストその1解説
■建築士とは

第7週:一般構造等
■採光・換気

第8週:一般構造等
■一般構造規定
■次回小テストについて

第9週:建築法規小テストその2
■小テストその2対策
■小テストその2実施

第10週:都市計画区域等の制限その1
■小テストその2解説
■道路・壁面線
■用途地域その1

第11週:都市計画区域等の制限その2
■用途地域その2

第12週:都市計画区域等の制限その3
■容積率・建ぺい率その1

第13週:都市計画区域等の制限その4
■容積率・建ぺい率その2
■高さ制限
■敷地面積・低層住居専用地域内の制限

第14週:定期試験の説明
■定期試験対策
■フリートーキング

第15週:学習成果の確認(定期試験)
■定期試験

<成績評価方法>
原則として定期試験による評価とする。60点以上の者に単位を認める。
ただし、試験の点数が50点以上60点未満の者で、かつ、授業内で実施した2回の小テストを全て受けた者は、小テストの結果等を加味し、内容が単位認定相当と判断される場合には、最終成績を60点とする。また、不定期に実施する出席確認において、全て欠席の者の成績評価は「A」を上限とする。

<教科書>
■基本建築基準法関係法令集「平成28年版」建築資料研究社他、建築士試験会場に持込可能な建築基準法関係法令集であれば可。
■その他、オリジナル資料を授業の都度に配布する。

<参考書>
■@建築申請メモ2016(新日本法規出版)
■A日本で一番やさしい建築基準法算定ガイド(エクスナレッジ)

<オフィスアワー>
授業終了後適宜対応する。または、別途指定する。

<学生へのメッセージ>
どのような職業についても、社会にはルールがあり、そのルールの上に「仕事」は成り立っています。
私自身、日々、通勤通学時における、満員電車のアナウンスには感心させられています。整列乗車の呼び掛けに始まり、“もっと奥まで”誘導や、換気の“窓開け”お願いに至るまで…。JRと私鉄でも違いますし、路線によっても違いますが、他人同士が“満員電車”という、およそ“快適ではない空間“を共有するため、みんなが暗黙のうちにルールを守っています。
人々に“快適な空間”を提供することを使命とする私たちが、社会のルールを守らずして、良い建築など生まれるはずもありません。
難解な建築法規ですが、様々な事例とともに、出来るだけ平易に楽しく進めたいと思います。
一緒に頑張りましょう!


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