2016年度工学院大学 先進工学部

複素関数論(Elementary Complex Functions)[5329]

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2単位
疋田 光孝 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2016/10/27

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
本授業科目では、初めに2次元のベクトルを元に、類似性から複素数でも同様に2次元場の表現が可能なことを学ぶ。また、ベクトル演算と複素数演算を対比させ複素数の特徴、種々の計算方法等を勉強する。複素平面と極座標表示、その物理的な対応も把握する。テーラー/マクローリン展開からオイラーの公式を導出し、複素指数関数で回転現象を記述出来ることを学ぶ。更に2階の微分方程式の解が複素指数関数で与えられ、それが回転、振動等に対応することも習得する。

<受講にあたっての前提条件>
本科目を履修するに当たり、微分、積分、線形代数1、線形代数2を履修し合格しておくことが望ましい。

<具体的な到達目標>
本科目の到達目標は、複素数の演算、複素数の極座標表示、オイラーの公式とその応用、複素平面と複素数による回転の表現、2階の微分方程式の複素解の意味と物理的対応等を勉強し理解することです。本科目で履修した内容は、電磁気学、回路理論、応用力学、量子力学、半導体工学、制御工学などの専門科目の履修において基礎知識として用います。

<授業計画及び準備学習>
1. ガイダンスと2次元ベクトル:初めに「複素関数論」の位置づけ、学習内容、他の科目との関連付け等に関して説明し、基本的な点を把握する。複素関数と類似性の高い2次元のベクトルに関して復習し、キーポイントを再度勉強する。1年次前期の微分、積分、線形代数1、2を復讐しておくこと、また授業資料の「2次元ベクトル」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
2. 2次方程式の解、ベクトルと複素数の対応:2次方程式の根と係数の関係から、実数と虚数の関係を学ぶ。実数をX成分、虚数をY成分に対応させることで、ベクトルと同様に複素数を用いて2次元面上の任意の点を記述出来ることを学ぶ。また、このX、Y平面を複素平面と呼ぶことを学び、ベクトルとの記述形式の違いを把握する。授業資料の「2次元方程式の解」、「ベクトルと複素数の対応」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
3. ベクトルと複素数の極座標表示:ベクトルをX、Y座標からr、シータの極座標を用いて表す。ベクトルの絶対値、偏角の意味を理解する。複素数も同様に実部をX軸、虚部をY軸に対応させることで、絶対値と偏角で表されることを学ぶ。また、絶対値が実部と虚部の二乗和の平方根で与えられること、偏角は実部と虚部で形成する直角三角形の内角で与えられることを学ぶ。授業資料の「ベクトルと複素数の極座標表示」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
4. ベクトルの和/差/内積/(外積)、複素数の和/差/積/商:ベクトルの基本演算である和/差を復習し、複素数でも同様に和/差が定義されることを学ぶ。積に関してはベクトルと複素数では大きく異なることを学ぶ。更に商は複素数では存在するが、ベクトルでは存在しない点、ベクトルの内積/(外積)、複素数の積/商の定義に関して学ぶ。授業資料の「ベクトルの和/差/内積/(外積)」、「複素数の和/差/積/商」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
5. 複素数の分数を含む計算、共役複素数:種々の複素数の表現形態に関して、それらを用いた場合の計算例を学ぶ。特に複素数の分数を含む計算に関して精通する。同時に複素数に固有の共役複素数の概念を学ぶ。授業資料の「複素数の分数を含む計算、共役複素数」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
6. ド・モアブルの定理と三角関数:複素数の極座標表示を基本に、ド・モアブルの定理に関して学ぶ。初めに基本となる三角関数に関して復習する。簡単な例でド・モアブルの定理を証明し、一般的なn乗解へ拡張する。ド・モアブルの定理は複素平面上では偏角分の回転をn回繰り返すことに対応することを学ぶ。授業資料の「ド・モアブルの定理と三角関数」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
7. 指数関数、常用対数と自然対数:複素指数関数の前に通常の指数関数について学ぶ。初めに指数関数とは逆関数の関係にある対数に関して学ぶ。電卓のキーボードを基に常用対数と自然対数の違いを学び、各々が意味する内容を把握する。更に、自然対数の底eに関しても学ぶ。授業資料の「指数関数、常用対数と自然対数」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
8. 指数関数の微分、積分:複素指数関数の微分、積分を学ぶ前に通常の指数関数の微分、積分について学ぶ。特に指数関数と対数関数の微分および積分の関係について学ぶ。授業資料の「指数関数の微分、積分」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
9. テーラー/マクローリン展開:実関数のテーラー展開およびマクローリン展開に関して学ぶ。例題を用い、実際に種々の関数を展開形で表す。また、簡単な関数に関して原関数と展開関数を数値的に図示し、両者が変数の小さい範囲で良く一致することを確認する。授業資料の「テーラー/マクローリン展開」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
10. 複素関数のテーラー/マクローリン展開、オイラーの公式:最初に実関数のテーラー/マクローリン展開を複素関数に拡大し同様に成り立つことを学ぶ。次に、正弦波、余弦波のテーラー/マクローリン展開結果と複素指数関数のテーラー/マクローリン展開結果を比較し、実部は余弦波、虚部は正弦波のテーラー/マクローリン展開結果と各々一致することよりオーラーの公式を導く。授業資料の「複素関数のテーラー/マクローリン展開、オイラーの公式」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
11. ド・モルガンの定理の一般化、複素指数関数と実関数の微積分:オーラーの公式がド・モルガンの定理を一般化したものであることを学ぶ。すなわち、複素指数関数を掛けることにより、複素平面上の複素数を任意の角度回転させることが出来ることを学ぶ。また、正弦波、余弦波の微積分は複素指数関数の微積分結果から容易に導かれることを学ぶ。授業資料の「ド・モルガンの定理の一般化、複素指数関数と実関数の微積分」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
12. 複素指数関数の積と回転の関係:オイラーの公式を基に、複素数の偏角が時間に比例して増加する場合を考察する。これは物理的には、複素平面上で原点の周りを一定振幅で回転する点を表すことを学び、モーターや発電機にも対応することを理解する。また、発電機から発生する電気の基本である交流は複素電圧の実部あるいは虚部に対応することを学ぶ。授業資料の「複素指数関数の積と回転の関係」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
13. 1階の微分方程式と指数関数の関係:1階の微分方程式の解が実の指数関数で与えられることを学ぶ。初めに自然対数と指数関数の関係の復習を行う。多くの物理現象が1階の微分方程式で記述されることを把握する。いくつかの物理現象を例に実際に1階の微分方程式を解き、物理現象と対応が取れることを確認する。授業資料の「1階の微分方程式と指数関数の関係」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
14. 2階の微分方程式と複素指数関数の関係:2階の微分方程式の解が複素指数関数で与えられることを学ぶ。2階の微分方程式を正弦波、余弦波による解法と複素指数関数による解法で求め、オイラーの公式を適用することにより両者は一致することを確認する。また、2階の微分方程式は物理的には振動を表しており、交流回路、振り子やバネの振動の記述に良く用いられることを学ぶ。授業資料の「2階の微分方程式と複素指数関数の関係」関係を予習しておく。ホームワークを行い復習する。
本回は、「全学習内容の振り返り」も実施する。

<成績評価方法>
授業中の中間試験3回(各100点満点)と期末試験(100点満点)の点数を各々1/4:1/4:1/4:1/4の比重で配合し合計点が60点以上を合格点(GPA Grade D以上)とし、60点未満は不合格(GPA Grade F)する。ただし、無断欠席は3までとし、4回以上は履修放棄と見なす。

<教科書>
授業の初日に、用いる授業資料を配布します。

<参考書>
神保道夫、“複素関数入門”、岩波書店
小野寺嘉孝、“なっとくする複素関数”、講談社
今吉洋一、“複素関数概説”、サイエンス社
など

<オフィスアワー>
八王子:
金曜日3時限授業前後の講師室
新宿:
火曜日 18:00-19:00
水曜日 16:00-18:00
木曜日 16:00-18:00
問い合わせは、hikitami@cc.kogakuin.ac.jp へ行うことも可。

<学生へのメッセージ>
基礎的なことから例題を用いて丁寧に説明しますが、分からないことがあったら、授業中に積極的に質問して下さい。毎回ホームワークを出しますので、次回にコピーを提出して下さい(原紙は保管。学んだことはその週の内に理解して下さい)。本科目は、あらゆる科目の基礎となると同時に、将来社会に出てから技術者として必要な基本的な知識の一つともなります。


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