2016年度工学院大学 先進工学部応用物理学科
△数値計算法(Numerical Methods)[2K10]
2単位 斎藤 秀俊 教授 [ 教員業績 JP EN ]
- <学位授与の方針>
◎ | 1. 基礎知識の習得 | | 2. 専門分野知識の習得 | ○ | 3. 汎用的問題解決技能 | | 4. 道徳的態度と社会性 | ○ | 5. 創成能力 |
- <授業のねらい>
- 皆さんが,これまで学んだ「数学T・U」といった数学分野では,線形代数,微分・積分,ベクトルや行列などを用いて,数式を変形させながら解を求めていくのが一般的でした.コンピュータはどうかと言うと,人間のように数式を理解することはあまり得意ではありません.それでは,人間とは異なるコンピュータに対して,「どのようにして数学の問題を理解させて,そして解かせるのか?」という率直な疑問が皆さんの頭に浮かぶと思います.この講義では,そのような疑問に答えるものとなっています.つまり,この講義を通して,コンピュータに数学の問題を解かせる「方法」を学ぶことが出来ます.数値計算法は,様々な分野において活用されています.本講義で取り扱う「手法」は,コンピュータが数学の問題を解く「プログラム」による計算のための方法論であり,「アルゴリズム」と呼ばれています.よって,本講義では,コンピュータが実行処理するプログラムにおいて,計算の中核をなす「アルゴリズム」を取り扱います.このため,数値計算法は,様々な科学や工学分野における重要な基礎科目と位置付けられ,コンピュータを用いる「プログラム」の開発にも関わる要素技術とも言えるでしょう.数値計算法において,十分に注意を払う必要があるのは,コンピュータによる「計算誤差」を小さくすること,コンピュータによる「計算時間」を短くすることです.前者の「計算誤差」に関しては,計算手段の選択を誤れば,「正しい解」との差が広がるために「誤った解」となってしまうことも成りかねず,大きな支障が生じることも有り得ます.このような事態を避けるためにも,数値計算法を良く理解し,習得することが大切なことがわかります.本講義は「プログラミング論T・U」を履修した後で,数学の理論を活用する「プログラミング応用」として位置付けられます.
- <受講にあたっての前提条件>
- 本科目を履修するに当たり,微分,偏微分,積分,編積分,線形代数1, 2, 3, 4,プログラミング論T,U,情報処理概論演習を履修し合格しておくことが望ましいです.
- <具体的な到達目標>
- 本講義を履修することで,次のことを理解したり,身に付けたりすることができます.
・コンピュータにおける数値の精度や取り扱いを理解できるようになります. ・数学的な思考が必要とされる問題を,コンピュータを用いて数値的に解く手法を身に付けることができます. ・コンピュータを用いて,数値的な解法を用いるプログラムを開発することが出来るようになります.
- <授業計画及び準備学習>
- 1.数値計算と数値表現
「数学」と「コンピュータ」による計算との関係を理解し,数値計算法を学ぶ必要性,数値計算法の重要性について認識し,コンピュータによる数値表現と,コンピュータを用いる計算で発生する誤差や桁落ちに関して理解します. 2.基本的な操作と演算 プログラムの設計方針,領域の動的確保,データの入出力,行列とベクトル,並び換え,ノルム,和と丸め誤差,乱数を用いたデータ生成について学び理解します. 3.連立一次方程式の解法(1):ガウス消去法,LU分解 連立一次方程式の直接解法であるガウスの消去法,LU分解を用いた解法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 4.連立一次方程式の解法(2):ヤコビ法 連立一次方程式の反復解法であるヤコビ法を用いた解法の理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 5.[演習] 連立一次方程式のための解法をとりあげ,理解を深めるための演習を行います. 6.関数近似と補間(1):最小2乗近似,ラグランジュ補間 最小2乗近似を用いた関数近似法,ラグランジュ補間を用いた関数の補間法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 7.関数近似と補間(2):ニュートン補間,スプライン補間 ニュートン補間,スプライン補間を用いた関数の補間法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 8.[演習] 関数近似と補間のための解法をとりあげ,理解を深めるための演習を行います. 9.非線形方程式の解法(1):二分法 二分法を用いた非線形方程式の解法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 10.非線形方程式の解法(2):ニュートン法 ニュートン法を用いた非線形方程式の解法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 11.[演習] 非線形方程式の解法をとりあげ,理解を深めるための演習を行います. 12.数値積分:台形公式,シンプソンの公式 台形公式,シンプソンの公式という数値積法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. 13.常微分方程式:オイラー法,ホイン法,ルンゲ・クッタ法 オイラー法,ホイン法,ルンゲ・クッタ法を用いた常微分方程式の解法を理解し,そのプログラムを作成することを学びます. [演習]:数値積分,常微分方程式の解法をとりあげ,理解を深めるための演習を行います. 14.学習成果の確認(これまでの学習がどれだけ身に付いたか,学力の達成度を確認します) ただし,開講年次により講義で扱うテーマの変更もしく進捗状況を判断して修正する場合があります.その場合には講義などを通じて別途通知します.また,第14回目までの講義に必要となる準備学習については,事前に教科書の指定された箇所や配布したプリントを読むなどの準備をして下さい.また必要となる場合には,講義時間中に理解を深めるための小テストを実施する場合があります.講義終了後には,講義で得た知識を基に,与えられた課題を解くことや,各自で不明箇所について復習して下さい.また,第15回目の講義における準備学習は,第14回目までの学習事項を復習しておいてください.
- <成績評価方法>
- 授業期間内の確認テストと課題による平常点,及び期末定期試験による両者の評価をします.共に,100点満点中,60点以上の評価をされた場合にのみ,D以上の評価を以って合格とします.他の履修条件は,学生便覧に記載されている各種規定に従います.
- <教科書>
- 『C言語による数値計算入門 -解法・アルゴリズム・プログラム-』皆本晃弥,サイエンス社
- <参考書>
- 『数値計算の常識』伊理 正夫,藤野 和建,共立出版
『数値計算(理工系の基礎数学8)』高橋大輔,岩波書店
- <オフィスアワー>
- 金曜日15:00-15:30 八王子校舎総合教育棟1N-125講師室,もしくは電子メールによる連絡でも良いです.連絡用の電子メールは講義開始後に通知します.
簡単な質問は,講義後に教室で受け付けます.
- <学生へのメッセージ>
- 数値計算の知識を身に付ければ,研究においてデータの解析や分析などをする時に役立ちます.興味のある人は,受講して下さい.
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