2016年度工学院大学 先進工学部応用物理学科

熱・統計力学(Statistical Thermodynamics)[2D29]

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2単位
森田 真人 特任助教  
最終更新日 : 2016/10/27

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
統計力学の基本原理と応用について、熱力学との関係に留意しながら基礎的事項に話題をしぼって講述する。多数の粒子からなる集合体の状態変化や化学反応を、巨視的な観点から議論する熱力学の体系をまず整理し、温度と熱、分子運動、熱平衡と状態方程式、第一法則、熱容量と比熱などの基礎事項を解説する。これらの理解に基づいて、第二法則とエントロピー、熱力学関数、気体分子運動論を詳述する。さらに、ミクロとマクロなレベルのカノニカル分布を通して統計力学の基礎を、またエネルギー等分配則と熱放射の理論を解説する。さらに前期量子論への発展、および物質科学やエレクトロニクスとの関わりについて解説する。多くの事例をこなすことよりも、まず統計力学の基本原理をきちんと抑えるた上で、講義で直接扱う具体例を通して、古典統計から量子統計へ移行する必要性や背景について理解を深めることを目標とする。

<受講にあたっての前提条件>
特になし

<具体的な到達目標>
授業のねらいを参照すること。

<授業計画及び準備学習>
1. 化学平衡の復習、状態量、熱力学0法則、理想気体の分子運動量
2. 実在気体の状態方程式:理想気体の状態方程式を復習しておく。状態方程式からファン・デル・ワールス方程式を導出し,状態の変化と可逆および不可逆過程を説明する。
3. 熱力学第一法則:熱力学第一法則を復習しておく。熱力学第一法則はエネルギー保存の法則であることを確認し,熱力学の基本的な考え方となるカルノーサイクルについて学ぶ。示量状態量について復習しておく。
4. 熱力学第二法則:熱力学第二法則を復習しておく。エントロピーと熱力学第二法則の微視的解釈を説明する。さらに,カルノーサイクルから導かれる熱機関を学ぶ。示強状態量について復習しておく。
5. 相転移と化学反応:多成分での平衡を説明し,ギブズの相律を導出する。ファン・デル・ワールス方程式を解釈する別の方法,マクスウェル則について学ぶ。これらの応用として,質量作用の法則と熱力学法則の関係を説明する。
6. 熱力学ポテンシャル@:エントロピーとエネルギーは熱力学の中心的な状態量であることを説明する。さらに,状態方程式からエントロピーと内部エネルギーの算出が可能なことを学ぶ。
7. 熱力学ポテンシャルA:古典力学でも用いられるルジャンドル変換を説明する。これを用いることで,自由エネルギー,エンタルピーへの応用を学ぶ。
8. 熱力学ポテンシャルB:熱力学ポテンシャルのまとめとして,化学ポテンシャルが与えられた場合を説明する。ヤコビ変換と熱力学的安定性について学ぶ。
9. 微視的な状態の数とエントロピー:これまで学んだ巨視的な熱力学から状態の数を扱う微視的な統計力学とを結びつける。そのために必要な微視的状態の数を位相空間,エントロピーの統計力学的な定義から説明する。
10. アンサンブル理論とミクロカノニカルアンサンブル:アンサンブル理論,微視的状態のアンサンブルであるミクロカノニカルアンサンブルを学び,アンサンブルとエントロピーの関係を説明する。
11. カノニカルアンサンブル:ミクロカノニカルアンサンブルは,ギブズのパラドックスを生み,熱力学と矛盾している。そこで,ギブズの修正因子を説明し,相互作用しない粒子の径について学ぶ。
12. ミクロカノニカルアンサンブルとカノニカルアンサンブルとの関係:カノニカルアンサンブルはミクロカノニカルアンサンブルと本質的には同じ結果を与えることを説明し,揺らぎについて学ぶ。
13. カノニカルアンサンブルの応用:カノニカルアンサンブルの量子力学系への応用として,ボルツマン統計による量子系の扱い,常磁性,2準位系の負の温度等について学ぶ。
14. グランドカノニカルアンサンブル:グランドカノニカルアンサンブルはすべてのカノニカルアンサンブル分配関数に重みを付けて加算したものであることを説明する。最終的に,たくさんの粒子からなる熱力学は,ミクロカノニカル,カノニカル,グランドカノニカルのどのアンサンブルで扱っても同じ結果を与えることを学ぶ。
15. 学習成果の確認(試験)

<成績評価方法>
原則として、期末試験の点数が60点以上を合格とする。ただし、授業中提出課題の評価を50%まで含め、総合評価が100点を超えないようにして規格化して評価する。

<教科書>
W.グライナー 他著 「熱力学・統計力学」 丸善出版

<参考書>
原田義也 著 「統計熱力学」 裳華房
原島鮮 著 「熱力学・統計力学」改訂版 培風館
鈴木彰 他著 「統計熱力学の基礎」 共立出版

<オフィスアワー>
毎週火曜日16:30〜18:00
(八王子;18号館309または12号館305号室,新宿;木曜日4時限A-2718室)

<学生へのメッセージ>
熱力学は、非常に膨大な数の原子や分子の性質を、ほんの数個の物理量(熱力学変数)で記述できてしまう、大変ユニークかつ便利な学問です。様々な学問に精通しますので、一生懸命勉強してください。


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