2016年度工学院大学 情報学部コンピュータ科学科
ディペンダビリティ概論(Introduction to Dependability)[4L28]
2単位 小野 諭 教授 [ 教員業績 JP EN ]
- <授業のねらい>
- 本講義では、人々が信頼し安心して使える「ディペンダブルシステム」について、基礎概念とそれを支えるアプローチについて学ぶ。
加えて、身近かな事例を検討することで、学んだ知識を簡単なシステムに展開する力をつける。 また、関連する新しいトピックスについて知る。
- <受講にあたっての前提条件>
- 前提となる科目はない。ただし、「情報ネットワーク論」を履修していることが望ましい。
(ただし、履修の必須要件ではない。)
- <具体的な到達目標>
- 以下の各項目について、専門知識を具体例とともに理解し習得する。
さらに、事例検討を通して、比較的単純な場合について、自ら知識を適用できるようにする。 また、最新のトピックスについて概要を紹介し、さらなる学習を自ら進める基礎をつくる。
*ディペンダビリティの基礎 *ディペンダビリティへの主要なリスクとその対策 *ディペンダビリティの技術基盤 *クラウドのディペンダビリティ *安全クリティカルシステム
- <授業計画及び準備学習>
- 1. ガイダンスと事例検討 (第1〜2回)
情報システムの分類 (組織)情報システム, 安全クリティカルシステム システム、リスク、セキュリティ、ディペンダビリティとは セキュリティ関連講義・演習の内容と相互関係 ディペンダビリティ達成へのアプローチ 事例検討1A: データ保護 事例検討2: 航空機 ETOPS
2. ディペンダビリティの基礎 (第3〜4回)
システム、リスク管理の基礎概念 評価尺度:可用性、信頼性、拡張性、安全性 ディペンダビリティへのリスク リスクへの対応手段 *冗長性と多様性(管理的、物理的、技術的)を用いた対応手段 *形式的検証 (モデル検査技術) *その他のディペンダビリティ向上手段 事例検討3: 銀行基幹システムの長期障害
3. ディペンダビリティへの主要なリスクとその対策 (第5〜6回)
ハードウェアの故障・性能低下 ソフトウェアの欠陥・非互換性 担当者の操作・運用の問題 局所的な災害、広域の災害 過負荷・サービス妨害攻撃、サイバー攻撃 保守・システム更改 法的紛争と強制 事例検討4: データセンターのティアレベル
4.ディペンダビリティの技術基盤 (第7〜10回)
情報システムの構成要素と主なリスク 構成要素別の向上技術 *ネットワークの可用性向上 *サーバの可用性向上と負荷分散 *データの機器障害・災害からの保護 事例検討1B: データ保護のティアレベル
(以下のふたつのトピックスは、事例検討中心で体系的なものではない。)
5.トピックス1: クラウドのディペンダビリティ (第11回)
重要インフラとしてのクラウドの利点とリスク クラウドの可用性・信頼性への対策 事例検討5: クラウドを利用した医療情報処理のリスクと対策
6.トピックス2: 安全クリティカルシステム (第12〜13回)
安全クリティカルシステムとは 安全性分析と評価 モデル検査技術 安全性確保のための開発プロセス 事例研究6: 自動車安全システム
7. 全体の振り返り(第14回)
- <成績評価方法>
- 期試験期間に試験を実施する。講義資料のプリント、自筆ノート持ち込み可。
講義内容を理解し、簡単な課題に応用できるレベル。 単位取得には、授業の 2/3 以上の出席が必要。(初回および補講は出席とみなす。)
- <教科書>
- 資料を kuport にて電子配布する。
必要に応じて、印刷プリントを配布する。
- <参考書>
- 講義の中で、適宜、参考となる資料を紹介する。
- <オフィスアワー>
- 前期の期間、毎週木曜3限
新宿キャンパス 中層棟 B0530
- <学生へのメッセージ>
- システムに様々なトラブルが発生しても、所定のサービスを提供し続けるディペンダブルシステムの歴史は長く、それらを扱う体系的な方法や技術が、ある程度確立しています。
ここに、「ITサービス停止が日常生活にもたらす影響の重大化」と、「クラウドによるネットワーク化」という新しく強い流れが押し寄せ、ビジネスのスタイルやシステムの目的・目標も大きく変化し、新しいリスクと対策が生まれています。
この講義では、こうした伝統的・体系的知識と、新しい動きをバランスをとりながら講義していきます。 また、学生が日常生活の中で身近かに感じているクラウドサービスを事例にして、「頼れるシステム」の重要性とそれを支える技術基盤について、興味を持ちながら理解し、将来に活用できるようにしていきたいと思います。
なお、この講義では、情報の漏洩や改ざんの防止、プライバシーなどに関しては扱いません。 これらの分野に興味がある学生には、「セキュアシステム」の受講を勧めます。
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