2016年度工学院大学 情報学部コンピュータ科学科

ディペンダビリティ概論(Introduction to Dependability)[4L28]

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2単位
小野  諭 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
本講義では、人々が信頼し安心して使える「ディペンダブルシステム」について、基礎概念とそれを支えるアプローチについて学ぶ。
加えて、身近かな事例を検討することで、学んだ知識を簡単なシステムに展開する力をつける。
また、関連する新しいトピックスについて知る。

<受講にあたっての前提条件>
前提となる科目はない。ただし、「情報ネットワーク論」を履修していることが望ましい。
(ただし、履修の必須要件ではない。)

<具体的な到達目標>
以下の各項目について、専門知識を具体例とともに理解し習得する。
さらに、事例検討を通して、比較的単純な場合について、自ら知識を適用できるようにする。
また、最新のトピックスについて概要を紹介し、さらなる学習を自ら進める基礎をつくる。

*ディペンダビリティの基礎
*ディペンダビリティへの主要なリスクとその対策
*ディペンダビリティの技術基盤
*クラウドのディペンダビリティ
*安全クリティカルシステム

<授業計画及び準備学習>
1. ガイダンスと事例検討 (第1〜2回)

情報システムの分類
  (組織)情報システム, 安全クリティカルシステム
システム、リスク、セキュリティ、ディペンダビリティとは
セキュリティ関連講義・演習の内容と相互関係
ディペンダビリティ達成へのアプローチ
事例検討1A: データ保護
事例検討2: 航空機 ETOPS

2. ディペンダビリティの基礎  (第3〜4回)

システム、リスク管理の基礎概念
評価尺度:可用性、信頼性、拡張性、安全性
ディペンダビリティへのリスク
リスクへの対応手段
 *冗長性と多様性(管理的、物理的、技術的)を用いた対応手段
 *形式的検証 (モデル検査技術)
 *その他のディペンダビリティ向上手段
事例検討3: 銀行基幹システムの長期障害


3. ディペンダビリティへの主要なリスクとその対策 (第5〜6回)

ハードウェアの故障・性能低下
ソフトウェアの欠陥・非互換性
担当者の操作・運用の問題
局所的な災害、広域の災害
過負荷・サービス妨害攻撃、サイバー攻撃
保守・システム更改
法的紛争と強制
事例検討4: データセンターのティアレベル

4.ディペンダビリティの技術基盤 (第7〜10回)

情報システムの構成要素と主なリスク
構成要素別の向上技術
 *ネットワークの可用性向上
 *サーバの可用性向上と負荷分散
 *データの機器障害・災害からの保護
事例検討1B: データ保護のティアレベル

(以下のふたつのトピックスは、事例検討中心で体系的なものではない。)

5.トピックス1: クラウドのディペンダビリティ (第11回)

重要インフラとしてのクラウドの利点とリスク
クラウドの可用性・信頼性への対策
事例検討5: クラウドを利用した医療情報処理のリスクと対策

6.トピックス2: 安全クリティカルシステム (第12〜13回)

安全クリティカルシステムとは
安全性分析と評価
モデル検査技術
安全性確保のための開発プロセス
事例研究6: 自動車安全システム

7. 全体の振り返り(第14回)

<成績評価方法>
期試験期間に試験を実施する。講義資料のプリント、自筆ノート持ち込み可。
講義内容を理解し、簡単な課題に応用できるレベル。
単位取得には、授業の 2/3 以上の出席が必要。(初回および補講は出席とみなす。)

<教科書>
資料を kuport にて電子配布する。
必要に応じて、印刷プリントを配布する。

<参考書>
講義の中で、適宜、参考となる資料を紹介する。

<オフィスアワー>
前期の期間、毎週木曜3限
新宿キャンパス 中層棟 B0530

<学生へのメッセージ>
システムに様々なトラブルが発生しても、所定のサービスを提供し続けるディペンダブルシステムの歴史は長く、それらを扱う体系的な方法や技術が、ある程度確立しています。
ここに、「ITサービス停止が日常生活にもたらす影響の重大化」と、「クラウドによるネットワーク化」という新しく強い流れが押し寄せ、ビジネスのスタイルやシステムの目的・目標も大きく変化し、新しいリスクと対策が生まれています。

この講義では、こうした伝統的・体系的知識と、新しい動きをバランスをとりながら講義していきます。
また、学生が日常生活の中で身近かに感じているクラウドサービスを事例にして、「頼れるシステム」の重要性とそれを支える技術基盤について、興味を持ちながら理解し、将来に活用できるようにしていきたいと思います。

なお、この講義では、情報の漏洩や改ざんの防止、プライバシーなどに関しては扱いません。
これらの分野に興味がある学生には、「セキュアシステム」の受講を勧めます。


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