2016年度工学院大学 建築学部建築学科

複素関数論(Elementary Complex Function)[2E21]

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2単位
鈴木 敏行 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
今まで扱ってきた変数が実数である関数を,変数が複素数である関数にした場合にできる理論が複素関数論である.
複素数と複素関数に触れることで,その有用性を理解する.

<受講にあたっての前提条件>
最低限,1変数関数の微分積分の知識は必要なので,よく復習しておくこと.
2変数関数の微積分は,理解が不十分でも適宜復習すればカバーできる.

<具体的な到達目標>
(1) 基本的な複素関数の値が計算できる.
例えば、「i^iの主値が実数になる」ことが理解でき,その値を自力で計算できれば完璧である.
(2) 複素数関数の正則性を判定できる.
z=x+iyと表されるとき,u(x,y)+iv(x,y)がzの関数として正則となる条件がわかり,判定できるようにする.
(3) 複素積分の計算ができる.
まずは計算ができるようにすること.
これを次の実関数の定積分に応用できれば完璧である.
∫_[0→2π] 1/(2+cos(x)) dx , ∫_[-∞→∞] 1/(1+x^4) dx
(広義積分に応用する際には考察すべき部分があるが,それを無視して形式的にでいいから計算できることが最低限大事であると考える.)

<授業計画及び準備学習>
第01回: 複素数と複素平面
 授業計画を説明したのち,複素数についての四則演算を実行する.i=√(-1)に親しむ.
 また,複素平面と極形式の概念に慣れ親しむ.
 極座標のことを知っていれば怖くはないが,前提とはしない.
 
 【事前学習】
 2次方程式の解の公式・判別式と解の性質(2つの実数解 or 重解 or 2つの複素数解)
 三角関数の定義(高校の教科書を参照のこと)・無理数の有理化
第02回: 複素関数入門
 複素数から複素数への関数を考える.
 まずは多項式関数や分数関数を中心に扱う.実関数なら1/(1+x^2)は実数全体で定義できるが,複素関数なら1/(1+z^2)はz=±iでは定義できなくなることを理解する.
 また,複素平面や極形式の復習をしながら,絶対値は1価関数(通常の意味の関数)だが,偏角は多価関数(値をいくつも取り得る)であることを理解する.
 また,オイラーの公式に親しむ[e^(iθ)=cos(θ)+i sin(θ)].
 
 【事前学習】
 前回までの内容を完璧にしておく.また,三角関数(sin(x)・cos(x))が基本周期2πという事実を理解する.
第03回: べき級数と複素関数
 指数関数(e^z)・三角関数(sin(z)・cos(z)・tan(z))・双曲線関数(sinh(z)・cosh(z)・tanh(z))を考える.複素数特有の現象を理解する.
 より一般のべき級数で表される関数について、収束性の判定法を紹介する.
 
 【事前学習】
 指数法則・三角関数の加法定理・基本的な関数のマクローリン展開(e^x・sin(x)・cos(x)・1/(1-x))
第04回: 逆関数と複素多価関数
 対数関数(log(z))・累乗根(m√z)・一般の指数関数(z^w)などを定義する.多価関数なので,主値という概念を導入する.
 具体的にi^iを計算する.
 
 【事前学習】
 極形式・指数関数や三角関数が含まれた方程式を解けるようにしておくこと.
第05回: 複素関数の微分法
 複素数における極限について理解したのち,微分の定義をする.微分の基本的な性質は実関数と同じである.
 微分可能と正則の微妙な違いを理解する.複素関数の意味で微分可能な関数は少ないことも理解する.
 
 【事前学習】
 実関数(1変数関数)の微分の定義や公式を思い出しておく.
 x^m・sin(x)・cos(x)・e^x・積や商の微分公式・合成関数の微分法
第06回: 正則関数とコーシー・リーマンの方程式
 複素関数の微分を復習して,f(x+iy)=u(x,y)+iv(x,y)と表されるような関数が正則であるための条件を理解する.
 
 【事前学習】
 偏微分のことを知っていれば理解しておくとよいが,前提とはしない.
第07回: 複素関数の微分までのおさらい
 ここまでの復習を演習しながら行う.わからない点を質問できるように準備しておくこと.
第08回: 複素関数の積分法
 積分の定義を理解する.∫f(z)dz と ∫f(z)|dz| の2つがあり,違いに注意すること.
 
 【事前学習】
 定積分における置換積分を復習しておくように.
第09回: コーシーの積分定理と2πiの法則
 正則関数を1周する積分路で積分すると0になる.
 一方、1/zを0を囲むような積分路(反時計回り)で積分すると2πiになる.
 
 【事前学習】
 複素関数の積分の計算方法を復習しておくように.
第10回: 複素積分の練習
 複素関数の積分の計算を演習を通して理解する.わからない点を質問できるように準備しておくこと.
第11回: コーシーの積分公式&グルザの定理
 コーシーの積分公式を理解する.
 また,複素関数で重要な法則[正則関数は無限回微分可能]を理解する.
 
 【事前学習】
 コーシーの積分定理と2πiの法則を復習しておくように.
第12回: ローラン展開
 正則でない点の扱いを理解する(孤立特異点・極).
 テーラー展開の一般化と思っていただければよい.
 
 【事前学習】
 1変数関数のテーラー展開(具体例を含めて)をおさらいしておく.
第13回: 留数の定理・実積分への応用
 ローラン展開できてしまえば,その表示だけで積分が計算できてしまう.
 その一般化である留数定理を紹介する.また,それを実積分に応用してみる.
 
 【事前学習】
 定積分における置換積分や複素関数の積分の計算方法をよく復習しておくこと.
第14回: 学習成果の確認(授業内試験)

講義の予定は以上のとおりであるが,理解度に応じて内容が前後する場合がある.

講義の内容を理解してもらうために,ほぼ毎回レポートを課す(計12回予定).採点して返却し,成績にも反映するので,取り組むようにしてください.
レポートを含め,日頃の学習への取り組みは大事である.これまでの復習が次につながってくるので,事前学習以上に復習は重要である(事前学習が疎かになっていても,復習を十分にやればカバーできる).
講義プリントにも問題を載せるので,積極的に解いてください.

<成績評価方法>
・定期試験の点数(7割ほど)
・レポート課題の解答状況(3割ほど)
これで100点満点の素点を計算する.素点に基づき60点以上を合格とする.

<教科書>
指定しない. プリントを配布する.
また, KUPORT等でもプリントを配布できるようにする予定である.

<参考書>
授業内で適宜紹介する.
「複素関数」や「函数論」などとタイトルで書かれている本は授業に直結する内容になっている.

<オフィスアワー>
授業の前後で受け付ける(12階講師室).
念のためにメールアドレスを載せておく. fu41118@ns.kogakuin.ac.jp


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