2016年度工学院大学 建築学部まちづくり学科

都市空間デザイン論(Theory of Urban SpaceDesign)[5E18]

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2単位
遠藤 新 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
都市空間の特質を発見・理解するための視点や考え方を身につけ、そこから展開する都市デザイン(urban design)の考え方と手法について理解する。

<受講にあたっての前提条件>
「都市デザイン」「地区まちづくり論(まちづくり論)」「都市計画」「ランドスケープデザイン」の4科目を履修しておくこと。

<具体的な到達目標>
1) 建築よりも大きなスケールでの空間の捉え方、それに基づく計画・デザインの考え方について理解する。
2) 人の行動や認知に基づく都市空間の捉え方、それに基づく計画・デザインの考え方について理解する。

<授業計画及び準備学習>
1. ガイダンス
・ 授業全体の流れと基本的なポイントを理解する。都市空間や都市環境の特質を発見・理解するための視点と主要な論点を理解する。
・ 準備学習(第1回目〜13回目まで共通):毎回の授業準備として、キューポートにて事前に配信する授業資料を一読して不明点や疑問点をチェックすること。

2. 都市形態の解読とデザイン
・ 都市空間の形態的パターンを読み解く視点と方法を学び、建築単体からは見えてこない都市空間の特性をふまえた空間デザインの方法を理解する。
・ モルフォロジー(morphology)の視点、街路パターンの解読(計画的パターンと有機的パターン、階層性の発見、時代による変化)、街区・敷地パターンの解読(規模・形状の違いと建築のあり方、時代による変化、エリアのまとまり)、建物パターンの解読(F-G Map、Buildings defining Space, Buildings in Space)、20世紀以降の都市化は都市形態をどう変えたか、モルフォロジーから都市空間デザインへの展開

3. 都市の文脈と調和する建物
・ 都市の文脈(context)とは何かを理解し、文脈を可視化する方法を学ぶ。それを踏まえて、都市の文脈と調和する建物のデザインのあり方について考察する。
・ 都市の文脈を分析する4つの軸(自然軸・空間軸・生活軸・歴史軸)、Contextual Designとしての有名建築のデザイン評価、何を文脈として構造化するのか

4. 都市空間における賑わいの特性
・ 都市のストリートに見られる人々の様々な賑わいの特性について、人々の行動と空間の関係、そこに作用する力などを読み解きながら理解する。
・ 人はどこに集まるのか、都市という劇場、屋外空間における活動の3類型(必要活動・任意活動・社会活動)、賑わいと物的環境の関係、プロクセミクス(E.Hallによる4つのコミュニケーション距離、J.Gehlによる距離とコミュニケーションの関係、等)、空間寸法から考える賑わい、人間のための都市空間再生

5. 公共空間としてのストリート
・ 都市のストリートは多様な人が集まる場所であり、公共空間であることがその本質の一つと言える。ストリートの公共性を支えるものはなにか、様々な議論や事例を読み解きながら理解する。
・ グレートストリート、自由空間としての道路、公共空間における異化の原理(排除の論理)、問題を未然に防ぐための空間管理、生きられた空間としての道路、サードプレイス、道路占用と使用(キッチンカー、ストリートパフォーマンス、マルシェ等を事例に)、人間生活のための空間としての道路

6. 空地から都市をデザインする
・ 少子高齢化・人口減少と経済縮退を背景として空地の増加が常態化していく社会において、どのようなアーバニズムが構想され、何がどのように実現されているのか。それを構想し実践する主体は誰なのか。様々な議論や事例を読み解きながら理解する。
・ 空地デザインの視座、プレイスメイキング、未利用地マネジメント、グリーンインフラ、被災地復興と空地デザイン

7. 都市空間における日常性と非日常性
・ 都市のある場所の性格を読み解く上で重要な概念の一つが日常性と非日常性である。都市空間のこうした属性について、図と地の考え方から読み解き、理解する。
・ 都市空間に生じる情景全体に対する人の認知特性、象徴景と生活景、場所の力、日常性と非日常性、ハレとケ、オモテとウラ

8. 都市空間における界隈性
・ 都市のある場所の性格を読み解く上で重要な概念の一つが界隈性である。都市空間のこうした属性について、その場所の作られ方や使い方から読み解き、理解する。
・ 界隈性の特徴、出来事がつくる領域性、なぜ界隈性が問題になるのか、面的な再開発によって失われる出来事、盛り場としての界隈の形成と変容、界隈性を育てる都市デザイン

9. 消費空間としての都市
・ 現代都市における消費空間はどのように発展してきたか。アメリカ都市におけるショッピングモールの誕生と変遷を辿りつつ、消費社会としての変化とその背景を理解しながら、そこにある都市デザインの手法を理解する。
・ ショッピングモールの歴史、アメリカ都市におけるモータリゼーション、郊外型ショッピングモールの普及、ビクターグルーエンの提案、ショッピングモールの現代的変容、都市空間のショッピングモール化、ボードリヤールの消費社会論、消費社会における都市空間のマーケティング、都市空間の劇場化、Theme Districtの計画とデザイン、エリアマネジメント

10. 持続可能な都市のデザイン
・ 現代都市が経験してきた無秩序な郊外化(スプロール)の問題を乗り越えるため、持続可能な都市の姿をめざしたコンパクトシティなどの都市計画が試みられている。これを都市デザインの視点から進めるアメリカのニューアーバニズム運動について、その理論と実践、成果と課題について理解する。
・ コミュニティライフが育ちにくい郊外住宅地の開発パターン、伝統的な近隣住宅地の空間特性、ニューアーバニズムの理論、アワニー原則、TOD(Transportation Oriented Development)、TND(Traditional Neighborhood Development)、Walkable Community

11. 都市空間のデザインマネジメント
・ 都市空間とは、多様な主体の意思や行動が複雑に絡み合った結果としての存在である。地域の計画において目指す方向へと都市空間をデザインするためには、そこに関わるデザイン意思やデザイン行為の適切なマネジメントが必要である。都市デザインをマネジメントするための方法を概括し、行政によるデザイン協議、アーバンデザインセンターが取り組む幾つかの事例をもとにその実践のあり方について考察する。
・ 景観デザイン協議、都市デザインの実務を支える体制、都市デザインのマネジメント、世界のUrban Design Center

12. 都市空間デザインに関するレポート
・ レポート課題を出題し、その要点を解説する。

13. 魅力的な都市空間を体験する
・ 各自がこれまでに訪れたことのない都市を訪れてみる。その都市で体験した魅力的な都市空間について、各自の言葉で考え記述する。現地調査結果の報告も含めて期末レポートを作成する。

14. 授業の振り返り
・ 授業全体を振り返り、都市空間デザインについて総括的に理解する。
・ 準備学習:前回までの総復習を行う。

<成績評価方法>
レポート課題100%、60点以上を合格とする。
ただし、授業への欠席回数が著しく多いと認められる学生は履修放棄とみなし成績評価を行わない。

<教科書>
教科書指定なし。授業で説明する資料はキューポートにて随時配信する。

<参考書>
ヤンゲール「人間の街:公共空間のデザイン」/W.H.ホワイト「都市という劇場」/北沢猛「都市のデザインマネジメント」/倉田直道・倉田洋子「次世代のアメリカの都市づくり」/アーバンデザインセンター研究会「アーバンデザインセンター:開かれたまちづくりの場」/その他は授業時間中に適宜紹介する。

<オフィスアワー>
火曜17:30〜18:00、新宿A2673室。簡単な質問は授業後の教室でも受け付ける。
その他の時間の面談を希望する学生は遠藤までメール等で連絡のこと。arata@cc.kogakuin.ac.jp

<参考ホームページアドレス>
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1045/


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