2016年度工学院大学 第1部応用化学科

鉱物と結晶(Mineral and Crystal Chemistry)[4P11]

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2単位
野津 憲治 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
鉱物は、天然に産するほぼ均質で一定の化学組成と物理的性質をもつ物質で、大部分が結晶質の無機固体化合物である。われわれは鉱物の集合体である岩石から成る地殻の上で生活を営んでおり、特定の元素が濃集している鉱物を資源として利用し生活を豊かにしていることからしても、鉱物は人間生活と切り離せない存在である。
本講義では、鉱物についての地球科学的な基礎知識、結晶化学的な基礎知識を学ぶことから始める。その上で、色々な鉱物がどのようなプロセスで生成するかを理解する。鉱物には不純物が入っておりその性質を利用することもあるが,物理的,化学的に特化した性質は人工的に合成した鉱物(結晶)で得られるので,結晶成長、結晶合成を学ぶ。さらに、鉱物が工業の原材料としてどのように利用されているかも学び、地下資源としての鉱物の利用には採取に限界があることを学ぶ。受講者それぞれが鉱物と結晶の知識を身につけ、自身の仕事や生活に生かせるるようになる。

<受講にあたっての前提条件>
2年生で地学Tや地学Uを履修して地学の基礎知識を持っていることが望ましいが、受講の前提条件とはしないので、鉱物や結晶を学びたい学生は誰でも受講できる.

<具体的な到達目標>
受講者は鉱物と結晶の基礎知識を身につけ、その知識を応用する鉱工業に就職したとき、自身の仕事に生かすことができる。鉱物は資源として人類の発展に生かされおり,将来にわたる人類生存と鉱物資源の開発についての自分なりの意見が持てるようになる。.

<授業計画及び準備学習>
1.(ガイダンスに続き)鉱物、結晶とは:
  鉱物や結晶の概念、岩石や鉱石との違い、鉱物の化学元素発見に果たした役割
2.鉱物の化学組成による分類:
  鉱物結晶の化学結合、陰イオンの種類による鉱物の分類、ケイ酸塩鉱物の分類
3.結晶化学の基礎:
  空間格子、単位格子、7つの結晶系、格子の幾何学、結晶の対称性
4.鉱物の結晶構造:
  元素鉱物の結晶構造、イオン結晶の結晶構造、鉱物の代表的な結晶構造
5.鉱物の物理的性質:
  形態、機械的な性質、電気的磁気的な性質、光学的な性質、その他の物性
6.結晶成長:
  結晶成長の駆動力、結晶成長の種類、結晶成長の3段階、形態との対応
7.造岩鉱物と岩石の成因:
  岩石と造岩鉱物、火成岩の造岩鉱物、マグマからの鉱物晶出、変成岩堆積岩の造岩鉱物
8.資源鉱物(鉱石鉱物)と鉱床の成因:
  鉱石と鉱床、火成鉱床(正マグマ鉱床)、熱水性鉱床、堆積鉱床  
9.気相成長鉱物と生体鉱物:
  地球上での気相成長鉱物、宇宙環境での気相成長鉱物、生体鉱物の種類、形態、特徴、機能 
10.鉱物合成(結晶作成):
  メルトからの合成、溶液からの析出、気相からの析出、固相からの析出   
11.造岩鉱物を利用するセラミック製造(窯業):
  ガラス製造、セメント製造、陶磁器(焼き物),耐火レンガ製造
12.資源鉱物から金属素材の製造(冶金業):
  製鉄、アルミニウム製錬、銅製錬、希土類元素の製錬
13.鉱物資源の枯渇とリサイクル:
  地球資源問題とは、金属鉱物資源の耐用年数、枯渇対策
14.学習内容の振り返り

◯教科書は指定せず、毎回資料を配布して講義を行う。
◯講義の前日までに、講義内容の概要をKuportの電子教材に掲載し、準備学習を指示する。
◯毎回の講義時間の最後の15〜20分を使って、小テストを行ない、授業の理解度を確かめる。なお、この小テストは講義の出席の確認も兼ねる。翌週の講義時には、小テストを添削して返却し,内容の説明を行ない、学習内容の復習に役立てる。

<成績評価方法>
定期試験期間に実施する試験の得点(100点満点)と、試験得点60%+毎回講義時に行なう小テストの累計得点40%で計算した得点との、高得点の方をその学生の成績とする。

<教科書>
本講義の内容を一冊にまとめた著書はないので,教科書は使用しない。講義に必要な資料はその都度配布し、Kuportの電子教材に掲載する。

<参考書>
青木正博「鉱物図鑑」誠文堂新光社(2008)
赤井純治ほか「鉱物の科学」東海大学出版会(1995)
森本信男ほか「鉱物学」岩波書店(1975)
藤野清志「結晶学・鉱物学」共立出版(2015)
砂川一郎「結晶(成長・形・完全性)」共立出版(2003)
佐々木義典ほか「結晶化学入門」朝倉書店(1999)
庄野安彦、床次正安「入門結晶化学」(増補改訂版)(2009)
都城秋穂、久城育夫「岩石学T(偏光顕微鏡と造岩鉱物)」共立出版(1972)
森本信男「造岩鉱物学」東京大学出版会(1989)
飯山敏道「地球鉱物資源入門」東京大学出版会(1998)
加藤誠軌「標準教科セラミックス」内田老鶴圃(2004)
中村崇ほか「サステナブル金属素材プロセス入門」(2009)
野津憲治「宇宙・地球化学」朝倉書店(2010)
西村祐二郎ほか「基礎地球科学(第2版)」朝倉書店(2010)
ニューステージ「新地学図表」浜島書店(2013)

<オフィスアワー>
講義終了後、新宿キャンパス非常勤講師室
E-mailでの連絡、質疑応答もできます:notsu@cc.kogakuin.ac.jp

<学生へのメッセージ>
鉱物は人間生活に欠かせない物質です。鉱物を自然科学として理解するには結晶化学の知識が必要で、化学系の学生には必要な基礎知識の一つでもあります。鉱物学や結晶学は応用面が広く,人類が快適な生活を維持するために必要な学問であることが分ります。近い将来に直面する鉱物資源枯渇の問題に思いを巡らせ、皆さん各自が解決策を考えてみて下さい。


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