2016年度工学院大学 第1部応用化学科

錯体化学(Coordination Chemistry)[2L11]

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2単位
堤 健 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
錯体は、合成化学や生命科学、材料科学分野などの様々な研究分野で利用されている。それは、錯体が無機金属と有機配位子の融合により多様な構造、電子状態を創出するからであり、今後も科学技術の進展に重要な役割を担うであろう。本授業では、金属と有機分子により創成される多様な錯体の電子構造と物性、反応性を体系的に理解する。さらに錯体化学の実用例について学ぶことで、化学技術者としての考察力と応用力を身に付ける。

<受講にあたっての前提条件>
予め基礎的な無機化学と有機化学、物理化学を受講していることが望ましい。

<具体的な到達目標>
1)金属錯体の結合様式と配位構造の特徴を理解する。
2)金属と配位子により形成される電子状態を理解する。
3)錯体の物性について理解する。
4)錯体を調べるための分析方法について理解する。
5)金属錯体の基礎的な反応性について理解する。
6)錯体を利用した触媒反応について理解する。
7)医薬品や機能性材料における錯体の役割について理解する。

<授業計画及び準備学習>
1.錯体化学関連のノーベル化学賞受賞研究
[学習内容] 錯体化学を基盤としたノーベル化学賞受賞研究内容について学び、錯体化学の登場からその歴史的な発展を大局的に理解する。
[学習準備] 教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
2.錯体化学とは
[学習内容] 錯体を構成する金属イオンと配位子の多様性を学ぶとともに、それらから創出される錯体の特異な構造と物性について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
3.錯体の命名法
[学習内容] IUPAC無機化学命名法に則り、錯体の命名法の基本的な規則について具体的に理解する。また、配位子の名称や略号を学び、多核錯体の命名法も具体例を通して理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
4.錯体の構造と結合様式
[学習内容] 中心金属の種類、酸化状態、および配位子の特徴に依存する配位数と立体構造、および金属と配位子の結合様式について具体的に学ぶ。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
5.配位子場理論と分子軌道法
[学習内容] 結晶場理論と配位子場理論を理解する。さらに分子軌道法について学び、錯体中の逆供与や金属-金属間結合について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
6.錯体の電子数と酸化数
[学習内容] EAN則に基づく中心金属の電子数と形式酸化数の数え方について具体的に学び、錯体の算定な電子構造について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
7.錯体のスペクトルと磁性
[学習内容] 錯体の特異な吸収スペクトルや発光スペクトル、磁気的性質について学び、錯体の電子構造に基づく多様な物性について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
8.錯体の構造決定
[学習内容] 単結晶X線構造解析、核磁気共鳴NMR、X線吸収微細構造XAFS測定解析の基礎を学び、それらの錯体構造の研究における有用性を理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
9. 配位子置換と錯体の安定性
[学習内容] 溶液中における錯体の配位子置換反応について学び、HSAB則やキレート効果による溶液中での錯体の安定性について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
10.錯体の立体異性体と不斉反応への展開
[学習内容] 不斉反応や酵素の性質などを理解するために重要な錯体の立体選択性について学び、その応用としての不斉反応と不斉触媒反応を理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
11.錯体の基本反応
[学習内容] 工業的な合成反応や生体反応に重要な錯体の基本反応(配位子置換、酸化還元、酸化的付加、還元的脱離など)について学ぶ。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
12.触媒反応への展開
[学習内容] 工業的に行われている触媒反応とその反応機構について学び、触媒反応サイクルにおける錯体の役割について理解する。
[学習準備] 教科書と授業ノートを復習し、知識を定着させるとともに、教科書の該当箇所を参照して学習内容と疑問点を整理しておくこと。
13. 錯体化学の応用
[学習内容] 医薬品やセンサー、発光材料、色素増感太陽電池など金属錯体の応用例を学び、錯体の特異な構造と機能の巧みな利用方法を理解する。
14.学習内容の振り返り
[学習内容] 錯体化学に関する学習を通して得られた知識の再確認と疑問点の解消を行う。
[学習準備] 前回までの教科書と授業ノートを復習し、錯体化学に関する理解度と疑問点を整理しておくこと。

<成績評価方法>
授業にきちんと出席することが成績評価の前提。授業内実施の確認テストで平均点を算出すると共に、試験期間に授業内容すべてを範囲とする学期末試験を実施、さらに課題レポートの提出を求める。平均点、学期末試験、レポートの評価割合は3:3:4。A+〜Fの6段階評価でD以上の者を合格とする。

<教科書>
「新版 錯体化学 基礎と最新の展開」基礎錯体工学研究会編(講談社サイエンティフィク)

<参考書>
「有機金属化学」中沢 浩、小坂田耕太郎 編著(三共出版)、「錯体化学 基礎から応用まで」長谷川靖哉、伊藤 肇 著(講談社)などの参考書は、適宜授業で紹介する。

<オフィスアワー>
授業の後に教場で。事前にメールで連絡を入れることが望ましい。


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