2016年度工学院大学 第1部機械システム工学科

流体力学及演習(Fluid Mechanics and Exercise)[6G03]

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3単位
佐藤 光太郎 教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2016/10/27

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
航空機,船舶から気象予測や野球ボールの運動まで流体力学が取り扱う分野は多岐多様である.また,一見,流体とは全く無関係に見える工業製品であってもその生産工程では流体力学の恩恵を受けている場合も多い.ここでは機械工学の立場から重要であると思われる内容を中心に,できる限り具体例を紹介しながら授業を展開する.また物理,工業力学等で学習した質点の力学と流体の力学との関係,考え方の同異について考察するよう履修期間中常に求めていく.以下に具体的な授業のねらいを示す.(1) オイラー的方法とラグランジュ的方法の記述方法の違いがわかること.(2) オイラーの運動方程式の物理的意味を理解すること.(3)保存則の意味を理解し,使用できること.(4)機械工学で重要とされる基本的な流体諸現象についての概略を理解し,詳細については専門書を参考にしながら考察できること.(5) ナビエーストークスの運動方程式の考え方を知ること.

<受講にあたっての前提条件>
数学,物理,力学系の科目を既習あるいは並行履修していること.特に数学1,数学演習1で勉強するテイラー展開について理解しておくこと.本授業では必ず手書きのノートを作成すること.

<具体的な到達目標>
機械技術者として必要な流体力学の基礎的知識を身につける.流体の定義を明確にして,静力学での圧力の計算ができること,運動方程式から質点の力学と流体の力学との同異を知ること,連続の方程式を用いて流速の計算ができること,ベルヌーイの定理により,単純な流れ場の計算できること,運動量方程式から物体にかかる力の計算ができること.初歩的な非粘性流れの計算ができること,粘性流体の支配方程式を知り,レイノルズ数の物理的な意味を理解すること,クエット流れ・ハーゲン−ポアズユ流れなど代表的な粘性流体の速度分布などが計算できること,層流と乱流の区別がつくこと,境界層厚さという考え方を理解すること.
(JABEE機械システム基礎工学プログラムの学習・教育目標)D-1:◎
(JABEE 基本キーワード)流体力学
(JABEE 個別キーワード)流体の物性、静圧と動圧、ベルヌーイの定理、層流と乱流

<授業計画及び準備学習>
毎時間,授業終了後は必ず学習内容を復習しながらノート整理をすること.
1.[ガイダンス]流体とは何か?流体力学は何の役に立つのかあるいは現在の問題点は何かをジェットエンジン,ファンの原理や空力騒音,鳥の飛行原理,流体関連振動による事故を例に取りながら説明する.
2.[静力学]流体の静力学について学ぶ.特に圧力,表面張力に対する理解を深める.【演習】具体的な圧力,表面張力の計算,【演習または宿題】圧力計算
3.[流れの記述方法]質点系との対比からオイラー的方法とラグランジュ的方法について学ぶ.[運動方程式]テイラー展開と実質微分・実質加速度の考え方,オイラーの運動方程式について学ぶ.【演習】1次元オイラーの運動方程式,【演習または宿題】テイラー展開
4.[質量保存則]連続の方程式の考え方と適用方法について学ぶ.【演習】連続の式の適用,【演習または宿題】非圧縮流れの連続の方程式
5.[エネルギー保存則]ベルヌーイの定理の導出について解説する.流れの計測法並びにベルヌーイの定理(圧力方程式を含む)の成立条件について学ぶ.【演習】トリチェリの定理を用いた計算,連続の式とベルヌーイの式に関する応用問題,【演習または宿題】ピトー管の原理
6.[運動量保存則]運動量方程式の一般的な導き方,考え方について解説する.また,運動量方程式の応用例から力の計算方法について学ぶ.【演習】噴流衝突により平板にかかる力の計算,【演習または宿題】移動平板にかかる力の計算.さらに運動量方程式の応用例を紹介する.
7.[粘性流体の基礎方程式]ナビエーストークスの方程式,レイノルズ数およびレイノルズの相似則について学ぶ.【演習】粘性に関する問題,【演習または宿題】無次元数について
8.[ナビエーストークス方程式の厳密解]代表的な粘性流れの例について学ぶ.【演習】クエット流れとハーゲン−ポアズユ流れ,【演習または宿題】速度勾配とせん断応力
9.[境界層方程式]境界層の概念と境界層方程式について学ぶ.【演習】境界層厚さ,境界層排除厚さ,【演習または宿題】運動量方程式による抗力計算と境界層運動量厚さ
10.[物体周りの流れと流体力]円柱,翼周りの流れについて学ぶ.このとき物体にかかる流体力の計算方法について解説する.また,カルマン渦とストローハル数,についても触れる.【演習】抗力係数と揚力係数の求め方,【演習または宿題】速度欠損と抗力について.
11.[ポテンシャル流れ]流関数と速度ポテンシャルの定義について学ぶ.複素関数で表わされる基本的流れ(一様流,角を回る流れ)について学ぶ.【演習】一様流,渦糸,湧出し,【演習または宿題】角を回る流れ,二重湧出し
12.[循環と渦度]循環の定義,渦度の定義,渦度方程式について学ぶ.【演習】循環量の計算,【演習または宿題】渦度の計算
13.[乱流]乱流とは何かを考え,乱流の観察例を紹介する.[流体力学の応用例]最新の流体機械などでの応用例を紹介する.【演習】総合演習,【演習または宿題】総合問題
14.授業の振り返り

授業中に行った演習および宿題は必要に応じて提出してもらうが,その際には必ずノートに提出内容を記述しておくこと.整理して記録を残す能力は理系の研究者・技術者にとっては重要な能力のひとつであることから,本授業ではノート作成を重視する.ノートは授業内で演習・宿題解説時の自己採点にも使用する.提出物の原本を確認したい場合には個別に対応する.また,定期試験をノート持ち込み可にした場合にはノート提出を求める場合がある.

<成績評価方法>
演習・宿題20%,定期試験80%で最終成績を評価,Grade D 以上の者に単位を認める.ただし,試験の得点が原因で僅かに合格点に届かない場合でも授業での積極性,演習問題・宿題の状況など,普段の学習状況を総合的に判断し,一定基準以上と認めた者にはレポート提出を認め,レポート内容により再試験を実施する場合がある.本科目では授業の出席確認はカードリーダーで行なう.

<教科書>
「図解によるわかりやすい流体力学」中林功一・山口健二著(森北出版)

<参考書>
「流体力学」日野幹雄著(朝倉書店)
「Fluid Flow」R.H. Sabersky A.J. Acosta E.G. Hauptmann and E.M. Gates(Prentice Hall)
「流体の力学」中山泰喜著(養賢堂)

<オフィスアワー>
火曜日:八王子11号館365号室 12:00−13:00
水曜日:八王子11号館365号室 12:30−13:00

<学生へのメッセージ>
1年次に学習した数学,物理,工業力学の復習を期待する.流体力学の理解が困難な場合には,もう一度,質点の力学の勉強に立ち返ること.

<備 考>
メールでの試験結果・成績に関する問い合わせには応えません.

<参考ホームページアドレス>
http://www.ns.kogakuin.ac.jp/~wwa1038/


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