2016年度工学院大学 第1部機械工学科 メカノデザインコース

高分子材料工学(Highpolymeric Material Engineering)[3E04]

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2単位
西谷 要介 准教授  [ 教員業績  JP  EN ]
最終更新日 : 2016/10/27

<授業のねらい>
 高分子材料は機械,自動車,装置などの工業用途をはじめとし,容器・包装などの日常生活用途,携帯電話・OA機器などの電気電子用途,宇宙・航空分野などの先端分野など幅広く使用されており,今後も益々その展開が期待されている.しかしながら,高分子材料の特徴を十分理解しないまま使用し,材料の選択を誤り,機械等の性能を発揮できていないことが見受けられる.したがって,機械技術者が設計・製作時に必要な高分子材料の基礎知識を習得し,最適な材料を選択できるようになることが,とても重要である.本授業では,機械技術者として必須な高分子材料について種類,性能,構造,成形加工方法および複合化に関する基礎事項を中心に,機械部品への応用や材料の選択方法なども習得することを目的する.

<受講にあたっての前提条件>
 本科目を履修する前に「材料基礎工学」を学習・履修すること.本科目学習後は材料・設計系科目や,必修科目の機械設計総合演習に役立つ.さらに,「卒業論文」などにおいて,具体的な装置や部品の設計・製作に進むことができる.

<具体的な到達目標>
(1)機械材料としての高分子材料について理解を深める.
(2)高分子材料の分類,種類,特性について習得する.
(3)高分子材料の構造と物性について理解を深める.
(4)高分子系複合材料について学習する.
(5)高分子材料の成形加工法について学習する.
(6)最適な材料を選択する方法を習得する.

<授業計画及び準備学習>
1.ガイダンスおよび高分子材料の概要
本講義のガイダンスを行い,達成目標を明確にする.高分子材料について,自動車や航空宇宙機器を例にとり,機械材料としての実例を中心に紹介するとともに,本講義の概要を述べる.
準備学習:「材料基礎工学」などで学習した機械材料や高分子材料などの復習をしておくこと.また,教科書P.11 〜16を予習しておくこと.

2.工業材料の性質と機能(1):プラスチックの分類,種類,特性を理解する.
キーワード:熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂,結晶性樹脂と非晶性樹脂,汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチック
準備学習:教科書P.14〜17,P.32〜36,およびP.145 〜148を中心に各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

3.工業材料の性質と機能(2)ゴム・エラストマー:ゴムの分類,種類,特性を理解する.
キーワード:天然ゴム,合成ゴム,熱可塑性エラストマー
準備学習:ゴム・エラストマーについて,各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

4.高分子材料の構造と物性(1):高分子材料の構造とそれに起因する性質を理解する.
キーワード:一次構造,二次構造,高次構造,および構造に起因する各種性質
準備学習:高分子材料の構造について,各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

5.高分子材料の構造と物性(2)熱的性質:高分子材料の熱的性質について学習する.
キーワード:ガラス転移点,融点,p-V-T特性
準備学習:熱的性質について各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

6.高分子材料の構造と物性(3)粘弾性:高分子材料として最も重要な物性である粘弾性について学習する.特に,粘弾性の現象論(クリープ,温度依存性,ワイゼンベルグ効果,バラス効果など)を中心に理解する.さらには,流動体成形における基礎物性であるレオロジー的性質についても学習する.
キーワード:粘弾性,クリープ,流動体成形,レオロジー,材料試験法
準備学習:教科書P.95 〜99,P.134 〜141をはじめ,粘弾性・レオロジーについて各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

7.高分子材料の構造と物性(4)機械的性質:機械材料として用いられる場合に,基本となる機械的性質について理解する.
キーワード:機械的性質,材料試験法,s-s曲線
準備学習:教科書P.79〜103,P.125〜134を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

8.高分子材料の構造と物性(5)トライボロジー:機械材料として利用する場合に重要なトライボロジー的性質(摩擦摩耗特性)について学習する.
キーワード:トライボロジー,摩擦,摩耗,省エネ,環境負荷低減,材料試験法
準備学習:教科書P.173 〜221を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

9.ポリマーアロイ・ポリマーブレンドおよび複合材料:高分子材料の高性能・高機能化する手法として重要なポリマーアロイ・ブレンドおよび複合材料の概念を学習する.
キーワード:ポリマーアロイ・ブレンド,複合材料
準備学習:ポリマーアロイ・ブレンドについて,各自予習しておくこと.また,複合材料(教科書P.41〜44)についても予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

10.高分子複合材料:複合材料の特徴,性質,種類を理解する.更に複合効果を定量化するための複合則を学習する.航空宇宙機器/システム,ロケット,人工衛星などの実例を通して複合材料の性質・機能を学習し,その発現機構や設計・制御方法についても理解を深める.
キーワード:複合材料,構造の軽量化,ロケット,人工衛星,航空宇宙機器/システム
準備学習:教科書P.125〜173を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

11.成形加工(1):プラスチックの成形加工
高分子材料の成形加工の概念,および三大成形法(射出成形,圧縮成形,押出成形)を学習する.特に,熱可塑性樹脂について,結晶性樹脂と非晶性樹脂の違いが成形加工法に及ぼす影響を中心に学習する.
キーワード:成形加工,流動体成形,流す・形にする・固める,射出成形,加工機械,流動体成形
準備学習:教科書P.44〜61を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

12.成形加工(2):射出成形および新成形加工技術
工業的に重要な射出成形や金型について理解を深める.また,CAD/CAM/CAEや付加製造(Additive Manufacturing, AM,3Dプリンタ)どのデジタルエンジニアリング技術,およびマイクロ/ナノ加工などの新しい成形加工法についても学習する.
キーワード:射出成形,流動体成形,加工機械,金型,Additive Manufacturing,CAD/CAM/CAE
準備学習:教科書P.44〜61を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

13.機械設計と高分子材料
機械設計を例にとり,最適な高分子材料の選択方法を学習するとともに,本講義のまとめを行う.
キーワード:設計法,工業材料の性質と機能,機械設計,構造の軽量化
準備学習:教科書P.113〜124を各自予習しておくこと.また前回までの授業内容を復習しておくこと.

14.学習内容の振り返り
準備学習:これまでに学習した内容を全て復習しておくこと.

<成績評価方法>
 成績評価は定期試験70%および小レポート30%の比重で配点を行い,総合評点が60点以上のものを合格とする.これは「機械工学エネルギー・デザインプログラム」の学習・教育到達目標(D)に対応する.

<教科書>
「JIS使い方シリーズ 新版 プラスチック材料の選択のポイント」山口章三郎編(日本規格協会)

<参考書>
教科書に記載されていない事項を中心に,必要に応じて授業中に印刷物を配布します.予習・復習に使用して下さい.
また,特に購入の必要はないが,更に勉強したい者は下記の参考書(図書館に有)などを参考にして下さい.
・高分子材料全般
「流す・形にする・固める―プラスチック成形加工学〈1〉」,プラスチック成形加工学会編,森北出版(シグマ出版)「高分子材料の基礎と応用―重合・複合・加工で用途につなぐ」伊澤槇一著(内田老鶴圃)
・成形加工関連
「最先端プラスチック成形加工シリーズ第4巻 先端成形加工技術T」,プラスチック成形加工学会編,プラスチックエージ
「ポリマープロセッシング・レオロジー入門」,大柳康,アグネ承風社
・ゴム・エラストマー関連
「図解入門よくわかる最新ゴムの基本と仕組み」伊藤眞義著(秀和システム)

<オフィスアワー>
水曜日13:00〜14:00,新宿校舎1666室
at13152@ns.kogakuin.ac.jp

<学生へのメッセージ>
 機械技術者として,材料の基礎知識を理解・習得することは必須です.高分子材料は幅広く使用されている材料の一つであるが,十分理解されないまま使用されていることが見受けられます.機械技術者を目指す皆さんが高分子材料を深く理解し,性能・機能を十分発揮することができれば,設計・製作する機械・装置類は高寿命かつ高性能なものをつくることができます.
なお,授業を受ける際には,必ず教科書を購入・持参し,予習・復習を心がけて下さい.授業は通常の講義形式の他に,毎回の授業で学んだ内容の理解度および達成度をみるものとして,小レポートを併用します.この小レポートとは,授業トピックスに関して,毎回授業の最後に書いてもらうレポートのことであり,当日の授業内でのみ提出可能なものです.ただし,一定レベルに達していない小レポートに関しては再提出してもらう場合もあるので,良いレポートを書くように心がけて下さい.なお,良いレポートとは,自分の言葉で独自の考え方が表れているものです.感想や質問,単語の羅列とは異なります.
 わからないことや質問があれば,遠慮なく声をかけてください.一緒に考えて,高分子材料に関する理解を深めていきましょう.


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