2015年度工学院大学 第2部建築学科

宗教論B(Religious Studies B)[3664]

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2単位
田口 博子 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/01/21

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
文化人類学の「通過儀礼」と精神分析学の「喪の作業」という概念を理解して、そのうえで信仰と「喪の作業」の関連を明らかにすることを目指します。

<受講にあたっての前提条件>
特にありませんが、慰霊関係のニュースに関心を持つようにしてください。

<具体的な到達目標>
ジークムント・フロイトの「喪の作業」は、愛する対象を喪失した者が、深い悲哀から日常生活にもどる過程を解明しています。精神分析家のメラニー・クラインと児童精神科医のD・W・ヴィニコットは「喪の作業」を基にして、幼児の他者認識についての理論をそれぞれの方向性で創り上げました。実は「喪」自体、20世紀初頭の文化人類学での一つの有力なトピックだったのです。
2014年度の宗教論Aに引き続き、「喪の作業」をキーワードとして、今回はキリスト教、とくに神秘主義の事例をもとに考察を行います。信仰の核には<喪失>が関連しているのではないか。そして先回取り上げることができなかった近代国家と死者の「記憶」の問題を討論したいと思っています。戦後70周年を迎えるにあたって死者祭祀をめぐってさまざまな問題が生じています。われわれはひょっとすると「喪の作業」を完遂することができなかったのではないか。この点を、半期をかけて深く掘り下げようと思っています。

<授業計画及び準備学習>
第1回  導入
第2回 『通過儀礼』:葬礼について
第3回 『神話と古代宗教』:宗教的観念としての非存在      
第4回 「喪とメランコリー」(1):悲哀
第5回          (2):メランコリー
第6回 フロイトの死の欲動について
第7回 メラニー・クラインの「抑うつポジション」について
第8回 D・W・ヴィニコットの「移行対象」について
第9回 ミシェル・ド・セルトーのフロイト解釈
第10回 セルトーの神秘主義研究
第11回 ユダヤ教について
第12回 原始キリスト教について
第13回 『悲劇と福音』:キリストの弟子たちの「喪の作業」
第14回 『慰霊の系譜』(1):近代国家と死者の「記憶」の問題
第15回       (2):戦後における罹災者に対する慰霊・追悼
準備学習:あらかじめ授業で使用するテキストを配布しますので、授業前に目を通してきてください。

<成績評価方法>
(1)評価方法:平常点で評価。毎回提出のリアクションペーパーと学期末3000字程度のレポートで評価。
(2)成績の配分:レポート80%、リアクションペーパー(15回)15%、授業への貢献度5%で評価。

<教科書>
・授業時にプリントを適宜配布します。

<参考書>
・授業で一部分を講読する著書は以下の通りです。
ファン・ヘネップ、『通過儀礼』、弘文堂
カール・ケレーニイ、『神話と古代宗教』、筑摩書房(ちくま学芸文庫)
フィリップ・アリエス、『死と歴史−西欧中世から現代へ』、みすず書房
ジークムント・フロイト、「喪とメランコリー」『フロイト全集14』(新宮一成他訳)、岩波書店
メラニー・クライン、『メラニー・クライン著作集3−愛、罪そして償い』、誠信書房
D.W.ヴィニコット、『遊ぶことと現実』、岩崎学術出版社
佐藤研、『悲劇と福音−原始キリスト教における悲劇的なるもの』、清水書院
村上興匡・西村明[編]、『慰霊の系譜−死者を記憶する共同体』、森話社

<オフィスアワー>
水曜日6限、授業の前後

<学生へのメッセージ>
昨年度の宗教論Aの続きとなりますが、前回受講しなかったかたも受講してください。補足説明をいたします。


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