2015年度工学院大学 第2部情報通信メディア工学科
○線形代数学I(Linear Algebra I)[6661]
2単位 片野 修一郎 非常勤講師
- <学位授与の方針>
◎ | 1. 基礎知識の習得 | ○ | 2. 専門分野知識の習得 | ○ | 3. 汎用的問題解決技能 | | 4. 道徳的態度と社会性 | | 5. 創成能力 |
- <授業のねらい>
- 線形代数は大学で初めて組織的に学ぶものである。大雑把に言うと、“真っ直ぐなもの”の構造を調べる方法論であって、数学の一分野というより、数理的な現象を解析するに当たって必ず必要になる一種の道具とか手法と思ってもらったほうがよい。卒業生に聞いてみても、微積分より線形代数の方が使う機会が多いそうである。実際、CTなどの医療機器の基本原理は線形代数である。ただし、グラフを描いたりして視覚に訴えることのできる微積分に比べて、抽象的でとっつき難く感じるかもしれない。また、本講義は後期線形代数学IIと一体化しており、前期Iの理解が後期IIの学習の大前提となるのでしっかり勉強して欲しい。具体的には、(1)行列と数ベクトルの基本的な演算がすらすらできること(2)基本変形に十分慣れ、それを用いて一般の連立1次方程式が解けること(3)行列式の性質を理解し、その計算ができること、を課題としたい。
- <受講にあたっての前提条件>
- 一から話すので、予備知識にあまり神経質になる必要はない。ただし、中学数学の基本が不完全だとその影響が次第に色濃く現れてくるから注意してほしい。高等学校数学Bのベクトルの箇所を復習しておくことを勧める。
- <具体的な到達目標>
- 行列の基本演算を確実に実行できる。
- 行列の基本変形に十分に慣れ親しみ、それを用いて一般の連立方程式を解き、解を数式に正しく表現できる
- 行列式の性質を理解し、高次の行列式を上手に計算できる。
- 基本変形の応用として逆行列を求めることができる。
- <授業計画及び準備学習>
- 1.ガイダンス/イントロダクションのお話/行列とは?
準備学習:特になし。中学校の連立方程式に不安があるなら復習しておくこと。 2.行列や数ベクトルにまつわる諸定義や書き表し方などのビギナーズ・マニュアル 準備学習:特になし。中学校の連立方程式に不安があるなら復習しておくこと。 3.行列の演算 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。 4.行列と連立1次方程式 一般の連立方程式の解の書き表し方を身につける 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。 5.基本変形を使って連立1次方程式を解く(1)行基本変形の説明 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 6.基本変形を使って連立1次方程式を解く(2)実際に解いてみる 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 7.基本変形を使って連立1次方程式を解く(3)演習 小テスト 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 8.正則行列 正則性の定義と意義 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 9. 基本変形を使って逆行列を計算する 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 10.行列式の定義と諸性質(1) 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 11.行列式の定義と諸性質(2)続き 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 12. 行列式の定義と諸性質(3)演習 小テスト 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 13.正則行列と行列式の関係/余因子行列 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 14.演習時間をとるための予備(時間に余裕があればCramerの公式) 準備学習:プリントを復習して前回の内容を消化しておくこと。プリントや手持ちの本の同様な練習問題を解いておくこと。 15. 学習成果の確認(前期末試験) 準備学習:前期のトピックスについて復習・整理して、計算練習をしておくこと。 前期の内容の理解は後期の線型代数学IIに必須である。
- <成績評価方法>
- 期末試験100点の他に、いくつかある最重要概念を学習し終わった段階で10〜15点程度の小テストを2回実施する予定である。また、講義中にできるだけ演習時間を設け、その際に黒板で解答を発表した者には5点程度の平常点を与える。また、授業時の質問に答えた場合やレポート課題を提出した場合にも適宜平常点を与える。以上を全て合計し、得点分布を調べて他の箇所に比べて大きく点差の開いている箇所で切って合格点とする。通例、50点とれれば不合格にはならないと思う。ただし、その程度のギリギリの合格点では後期が非常に辛いことになるはずである。評価は厳格に行い、追試措置等は一切しない。
- <教科書>
- 指定教科書なし。自前のプリントを配ってテキストとする。
- <参考書>
- 三宅敏恒『入門 線形代数』(培風館)
薄くて見易くてとても良い本だと思う。ただし、本講義よりはレベルの高い所まできちんと書かれているので、本気で勉強したい人は授業と平行して読み進めるといいだろう。昨年までと同じ本である。
- 薩摩順吉・四ツ谷晶二『キーポイント 線型代数』(岩波書店)
いま自分が学んでいることは要するにどういうことなのか、という本質的理解を深めるには格好の本。寝ながら?読める。
- <オフィスアワー>
- 授業の前後の休み時間、新宿校舎12階講師室で。質問歓迎します。
- <学生へのメッセージ>
- 線形代数というのは真っ直ぐな世界の話なのでやっていることはそんなに難しくはないのだが、微積分に比べて、抽象化された概念を扱うことが圧倒的に多く、概念を説明するために多くの言葉を要する。数学を、単なる計算の手続きを覚えるもの、という了解で今までずっとやってきた者にとっては、説明の日本語の意味が全くわからない、ということにもなりかねない。そのような態度でしか数学の勉強をしてこなかった者にとって、線型代数はわけがわからん、となってしまう所以であろう。そういう意味では、大学に入って新しいものの考え方・姿勢を身につける格好の題材でもあると思う。数学は公式を覚えて計算して答えを出すもの、という固定観念に縛りつけられている人は特に、それをいったん白紙に戻して、言葉の意味や概念をきちんと理解するという態度で臨んでほしい。
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