2015年度工学院大学 情報学部情報デザイン学科

経済学入門(Introduction to Economics)[1133]

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2単位
遠山 智久 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/01/21

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
この講座では、近代経済学の基本を解説しながら、経済学的な観点で社会・経済をみる力を養うことを目指します。

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざを聞いたことがありますか?「風が吹けば体が汚れてお風呂屋にたくさん人がやってきます。そこでお風呂屋さんはたくさんの桶が必要になり、桶屋が儲かる」という経済の連鎖です。風が吹くということがこのような経済の連鎖を通じ、社会経済現象として現れるのです。

近代経済学による経済の理解は、まさにこのような経済の連鎖構造の仕組みを解明することです。みなさんが「寒いな」とおもったその気持ちがお買い物にも影響して経済の流れを大きく変えることもよくあります。このような経済学的な社会の見方に慣れるのがこの講座のメインテーマです。これらを考えるヒントは身近なところにたくさん転がっています。講義ではできるだけ身近な事例を題材に経済・社会を考えることの意味を考えます。

経済学を一通り学べば、新聞の経済記事はある程度理解できるようになります。この講座でも、トピックとしてニュースで話題になりやすい社会・経済問題を経済学の基本に当てはめて分析していきます。

<受講にあたっての前提条件>
近代経済学は経済現象を数学を使って、経済の構造を分析します。
主に、中学で学んだ連立方程式、高校で学んだ微分、および等比数列の和の公式を使います。(そんなに難しい数学は使いません)

<具体的な到達目標>
新聞記事や政府の財政金融政策、為替レートについてのニュースを理解できるようになることがこの講義の第1の目標です。

また、ビジネスの世界は企業戦士の名のごとく「戦い」なので損得感情で行動することが多いです。経済学の人間観はまさにそうした人間像を想定します。相手を出し抜こうとみんなが考えたときどのようなことが起こるのか?そのような社会の見方が瞬時にできるようになるのが第2の目標です。

<授業計画及び準備学習>
【第1回】学問の考え方 観察と理論

学問は言葉による物事の理解です。理科系は言葉によって伝えられる部分が多いため時代を通じて積み重ねることが容易です。社会科学では「悲しみ」「怒り」といった感情が絶えず社会問題の背後に見え隠れするため、言葉にならない感情にも目を向けなければなりません。そういった社会科学特有の問題を意識しつつ、学問的な「言葉による物事の理解」の一般的な方法について説明します。

【第2回】マクロ経済学ーイントロダクション

経済ニュースを理解するにはマクロ経済学を理解することがその近道です。マクロ経済学はケインズ派と新古典派と呼ばれる2つの流派の対立として理解できます。

【第3回】GDPとGNI、フローとストック、物価水準

経済水準をみるための重要な指標としてGDPとGNIがあります。その意味を理解するのが目的です。同時に経済指標にはフロー変数とストック変数、そしてそれ以外の3つに分類されます。例をみながら雰囲気を理解するのが第2にの目的です。

【第4回】ケインズの乗数モデルと財政政策

ケインズ派の主張するマクロ理論の原型である乗数モデルを学び、消費の循環がどのように需要を作るのかを理解します。

【第5回】金融政策入門

金融政策はあまり身近でなく、少し難しいのでその導入をここで学びます。

【第6回】貨幣の役割と物価の性質

金融政策を理解する上で重要となる貨幣について学びます。そして貨幣が生み出すインフレ、デフレについて重要事項をまとめます。

【第7回】日本銀行の役割と短期金利、および長期金利
現実の金融政策を理解するには短期金利と長期金利の区別が重要となります。

【第8回】IS-LMモデル 1

財政金融政策の基本分析であるIS−LM分析について学びます。本講から経済学の専門的な分析を理解し、経済学の分析手法の一端を味わっていただければと思っています。

【第9回】IS-LMモデル 2

IS-LMモデルを用いて、財政金融政策の有効性について学びます。

【第10回】外国為替レートと経常収支

外国為替レートの決定理論と経常収支について学び、世界経済に目を向けます。

【第11回】ゲーム理論〜囚人のジレンマと支配戦略

この回からミクロ経済学に入ります。ここでは最近のミクロ経済学の流行であるゲーム理論について理解します。

【第12回】ゲーム理論〜ナッシュ均衡とコーディネーションゲーム

ゲーム理論の中心的な概念であるナッシュ均衡について学びます。

【第13回】ゲーム理論〜寡占の理論

ゲーム理論を用いて寡占の理論を学びます。

【第14回】科学哲学入門

今までモデルを用いて社会経済現象を分析するという理論経済学の分析手法を学んできました。このやり方は「科学的理解」といわれますが、科学とはなにか?ここでまじめに考えてその思想的な流れを解説しておきたいと思います。

【第15回】期末試験

最後の授業で期末試験を行います。教科書とノートは持ち込み可能です。授業ノートをしっかり理解しておいてください。

<成績評価方法>
期末試験を行います。
教科書・及びノート・配布プリントは持ち込み可能です。

<教科書>
遠山智久(2013)『サク単!マクロ経済学』(東京図書)
遠山智久(2013)『サク単!ミクロ経済学』(東京図書)

<参考書>
授業中にプリントを配布します。

<オフィスアワー>
授業の後1時間。

<学生へのメッセージ>
経済学は社会分析のための学問ですが、その土台にあるのは人間の心です。欲望、満足、怒りが社会現象を生む原動力になります。社会を見るとき常にその構成要素である人間のそうした感情に目を向けようとしてください。近代経済学の心はまさにそこにあります。


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