2015年度工学院大学 建築学部まちづくり学科

都市社会学(Urban Sociology)[5B73]

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2単位
堀川 三郎 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/01/21

<授業のねらい>
都市は,建築学・都市計画学の専売特許ではない。都市を対象とする学問領域には様々なものがあり,都市社会学もまたそのひとつだ。では,都市社会学から眺めた都市は,建築学・都市計画学から見たものとどのように違うのだろうか。建築学では見ることのできない,何か違う眺めをもたらしてくれるのだろうか。本講義は,「都市と保存」というテーマに焦点をあわせ,都市社会学という方法の基本的発想を理解し,都市社会学ならではの分析結果(眺め)を具体的に味わってみることを目指す。この講義はきっと,諸君の建築学的・都市計画学的認識をより一層深いものにしてくれるはずだ。

<受講にあたっての前提条件>
「社会学」や「現代社会論」を受講していることが望ましいが,受講していなくても構わない。

<具体的な到達目標>
・社会学的な問いの形式の基礎を理解できるようになること
・社会学の都市を捉える技法の基礎知識を身につけること
・具体的な社会学的事例分析の詳細な検討を通じて,建築学・都市計画学の視点との違いを理解することができるようになること

<授業計画及び準備学習>
1.イントロダクション
  大学における学びの原点を再確認し,講義の基本方針を提示する
2.社会学とは何なのか
  社会学的「問い」(あるいは視点)の基本形式を理解する
3.社会学的「問い」の系譜
  「問い」の歴史とその継承者たちについて概説する
4.社会学のI/O
  社会学と社会調査という方法について概説する
5.都市社会学の源流:初期シカゴ学派都市社会学
  その成立とその特徴を,具体的な作品をもとに検討する
6.新都市社会学の台頭
  シカゴ学派批判と認識論的・空間論的転回について理解する
7.日本の都市社会学の系譜(1)
  鈴木栄太郎と磯村英一の理論的貢献を理解しておく
8.日本の都市社会学の系譜(2)
  住民運動論と都市コミュニティ論の論争点を把握する
9.事例研究=小樽運河保存運動と都市(1)
  対象事例の概要について理解する
10.事例研究=小樽運河保存運動と都市(2)
  なぜ保存運動と市行政はすれ違っていったのか,「空間」と「場所」という概念を使って整理する
11.事例研究=小樽運河保存運動と都市(3)
  小樽の事例は,都市計画の何を問題としたのか,その鋭利な問題提起を読み解く
12.事例研究=セントルイスにおける保存運動と都市(1)
  事例について概説し,基本的争点について理解する
13.事例研究=セントルイスにおける保存運動と都市(2)
  事例の細部を分析する中から,日米の保存運動の比較を試みる
14.全体のまとめ:社会学の都市/建築学の都市
  社会学と建築学の共通点と相違点を理解する
15.学習成果の確認(試験)
  講義全体の学習成果をテスト形式で確認する

<成績評価方法>
定期試験を約100%とし,60点以上を合格とします。

<教科書>
指定教科書なし

<参考書>
授業時に適宜紹介します。毎回の講義前には,事前学習として文献を読んできてもらいます。たくさん読んでもらうことになりますが,読みやすいものを厳選し,難易度も考慮してありますので,まったく心配するには及びません。たくさんの読書を踏まえた上で講義に出席すると,非常に密度の濃いものになることに,諸君は驚くことになると思います。

<オフィスアワー>
講義の前後に対応いたします。

<学生へのメッセージ>
“Say it with data.”をモットーに,学生のころから一人で「現場」を歩き,自分の目と足で調査することを続けてきました。1984年早春,北海道小樽市で小樽運河の保存問題に触れて以来,現在も調査を継続中。古い町並み(歴史的環境)を残すことは「好事家の手慰み」ではなく,人間と環境との関係について何か大切なことを語りかけているのではないか。この問題意識が私の研究の原点です。その小樽を基準点として,他の町並み保存の現場(近江八幡,妻籠,伊根,川越,鞆ノ浦,Boston, Cambridge, New York, Tampa, St. Louis, Charlottesville, Williamsburg, Charleston, Savannah, Chicago, Washington, D.C., Venezia, 南京,蘇州など)や公害被害地(水俣や足尾など)を歩き回るうちに,研究することの楽しさや難しさといったものが少し見えてきたように思います。講義を通じて,その楽しさを皆さんと共有できればと願っています。意欲のある4年生の受講を期待しています。

<参考ホームページアドレス>
http://horikawa-seminar.ws.hosei.ac.jp


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