2015年度工学院大学 第1部電気システム工学科

電力用デバイス(Electrical Power Devices)[5376]

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2単位
大竹  充 助教  
最終更新日 : 2016/01/21

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
発電、送電から電気・電子機器に至るまで電力や電気信号を制御するために半導体デバイスは必須である。抵抗、コンデンサ、コイルなどの受動素子とは異なり、半導体デバイスは能動素子と呼ばれる。その動作原理や利用方法を理解するためには物質や原子の概念を取り入れた基礎から学ぶ必要がある。本講義ではダイオード、トランジスタといった電力用デバイス(半導体デバイス)の基礎を理解することを目的とする。

<受講にあたっての前提条件>
物質の性質を理解するという点からは、「化学I、II」、エネルギーや電気に関しては「物理学I、II」を学んでおく必要がある。2年次以降の科目では、「マテリアル」、「電子回路I、II」、「パワーエレクトロニクス」、「IC応用回路」を学ぶことに繋がる内容である。

<具体的な到達目標>
・半導体におけるエネルギーギャップ、キャリアの概念を理解する。
・真性半導体の電気的特性と上記物性との関連性を理解する。
・不純物半導体におけるキャリアの生成原理を理解する。
・PN接合ダイオードにおけるキャリアの働きと整流効果を理解する。
・バイポーラトランジスタ、サイリスタの構造、働き、使用(設計)上の留意点を理解する。
・以上、個々のデバイスの動作原理を理解し、その応用である整流回路、増幅回路、スイッチング回路の原理を理解する。

<授業計画及び準備学習>
1.真空中の電子: 電子は粒子としての性質と、波としての性質を併せ持つといわれる。電気伝導を担うキャリアの一つである電子の性質を理解する。
2.固体中の電子: 電子が原子中に存在する場合、ある特定の状態をとる。これをエネルギー準位と呼ぶ。さらに原子が集まって固体となった場合はバンドを形成することがある。こうした種々の状態における電子の性質と電気的特性の関係を理解する。
3.電気伝導と伝導体の種類: 電気伝導は固体中を電子や正孔(場合によってはイオン)が移動することによる。電気伝導率は固体中のエネルギーバンド状態に大きく依存する。これらを踏まえ、絶縁体と半導体の違いを理解する。
4.移動度: 移動度は電気伝導率を決める要素の一つであり、物質の構造とも密接に関連している。キャリアの微視的な動きをもとに移動度、電気伝導率とは何かを理解する。
5.半導体中のキャリア密度: 半導体の性質はバンドギャップのほかに、キャリア密度も大きく寄与する。真性半導体・不純物半導体においてのキャリア密度の求め方を理解する。
6.pn接合の電気的特性(1): 2種類の不純物半導体(p型とn型)を接合させると整流効果が生まれ、ダイオードとして働く。この回はpn接合における空乏層・ビルドイン電圧の生成、キャリアの拡散といった微視的視点からダイオードの特性を理解する。
7.pn接合の電気的特性(2): pn接合ダイオードの順方向・逆方向特性をキャリアの動きをもとに定式化し、ダイオードの特性を理解する。また、整流・スイッチングなどへの利用方法を理解する。
8.前半のまとめ: 前半部分の重要部分を復習し、練習問題を解く。
9.バイポーラトランジスタ: バイポーラトランジスタについて、その基本的な構造と増幅作用の原理を理解する。また、諸電気的特性と利用方法を理解する。
10.電界効果トランジスタ: FETについて、その基本的な構造と動作原理を理解する。また、その電気的特性と利用方法を理解する。
11.集積回路: 集積回路化する意義、生産方法、具体例を理解する。
12.光電子素子: 半導体素子には光と関係するものがある。受光素子や発光素子である。半導体の光学的性質の基本を理解し、光・電気変換素子、電気・光変換素子の実例を理解する。
13.プロセス技術(1): 半導体素子やICの製造には種々の工程(プロセス)が含まれているが、もっとも代表的なプレーナプロセス技術を採りあげ、概要を理解する。
14.プロセス技術(2): 前回の続きとして、プロセス技術の前工程、後工程、および周辺技術を理解する。
15.学習成果の確認(試験) 

毎回、受講後、各章の演習問題を解いて復習すること。

<成績評価方法>
期末試験において60点以上を合格とする。なお、5回以上欠席した場合は期末試験を受けることはできない。

<教科書>
渡辺英夫、「半導体工学」、コロナ社
(ISBN978-4-339-01190-6)

<参考書>
なし

<オフィスアワー>
後期・金曜 15:00-17:00
予め、電子メール(宛先 ct13087@ns.kogakuin.ac.jp)で連絡すること。

<学生へのメッセージ>
教科書は必ず用意すること。また、この科目は電力用分野だけではなく、アナログ回路やセンサーなど、半導体を使う色々な分野の基礎になりますので、それらの分野を目指す学生も受講するようにしてください。


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