2015年度工学院大学 第1部応用化学科

鉱物と結晶(Mineral and Crystal Chemistry)[4E17]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
野津 憲治 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/01/21

<授業のねらい>
鉱物は、天然に産するほぼ均質で一定の化学組成と物理的性質をもつ物質で、大部分が結晶質の無機固体化合物である。われわれは鉱物の集合体である岩石から成る地殻の上で生活を営んでおり、特定の元素が濃集している鉱物を資源として利用し生活を豊かにしていることからしても、鉱物は人間生活と切り離せない存在である。
本講義では、鉱物についての地球科学的な基礎知識、結晶化学的な基礎知識を学ぶことから始める。その上で、色々な鉱物がどのようなプロセスで生成するかを理解する。鉱物には不純物が入っておりその性質を利用することもあるが,物理的,化学的に特化した性質は人工的に合成した鉱物(結晶)で得られるので,結晶成長、結晶合成を学ぶ。さらに、鉱物が工業の原材料としてどのように利用されているかも学び、地下資源としての鉱物の利用には採取に限界があることを学ぶ。受講者それぞれが鉱物と結晶の知識を身につけ、自身の仕事や生活に生かせるるようになる。

<受講にあたっての前提条件>
2年生で地学Tや地学Uを履修して地学の基礎知識を持っていることが望ましいが、受講の前提条件とはしないので、鉱物や結晶を学びたい学生は誰でも受講できる.

<具体的な到達目標>
受講者は鉱物と結晶の基礎知識を身につけ、その知識を応用する鉱工業に就職したとき、自身の仕事に生かすことができる。鉱物は資源として人類の発展に生かされおり,将来にわたる人類生存と鉱物資源の開発についての自分なりの意見が持てるようになる。.

<授業計画及び準備学習>
1.(ガイダンスに続き)鉱物、結晶とは:
  鉱物や結晶の概念、岩石や鉱石との違い、鉱物の化学元素発見に果たした役割
2.鉱物の化学組成による分類:
  鉱物結晶の化学結合、陰イオンの種類に鉱物の分類、ケイ酸塩鉱物の構造の多様性
3.鉱物の物理的性質とその利用:
  鉱物の形態、機械的な性質、電気的な性質、光学的な性質、それらの性質を生かし鉱物の利用
4.結晶化学の基礎:
  空間格子、単位格子、7つの結晶系、結晶格子の幾何学、結晶の対称性
5.鉱物の結晶構造:
  元素鉱物の結晶構造、イオン結晶の結晶構造の法則性、代表的な結晶構造
6.造岩鉱物と岩石の成因:
  岩石と造岩鉱物、火成岩と構成鉱物、マグマからの鉱物晶出、変成作用堆積作用で生じる鉱物
7.資源鉱物(鉱石鉱物)と鉱床の成因:
  鉱石と鉱床、火成鉱床(正マグマ鉱床)、熱水性鉱床、堆積鉱床  
8.気相成長鉱物:
  鉱物の気相成長の場、火山昇華物、星間塵、隕石鉱物と凝縮過程による生成 
9.生体鉱物とバイオミネラリゼーション:
  生体鉱物の分類、機能と形態、生物進化上での位置付け、鉱物生成の特徴
10.結晶成長:
  結晶成長の熱力学、結晶成長の進行、核形成、結晶界面上での成長、形態との対応
11.鉱物の合成(結晶作成):
  メルトからの成長、溶液からの析出、気相からの析出、固相からの析出   
12.造岩鉱物を利用するセラミック製造(窯業):
  ガラス製造、セメント製造、陶磁器(焼き物),耐火レンガ製造
13.資源鉱物から金属素材の製造(冶金業):
  製鉄、アルミニウム製錬、銅製錬、希土類元素の製錬
14.鉱物資源の枯渇とリサイクル:
  地球資源問題とは、金属鉱物資源の耐用年数、枯渇対策
15.学習成果の確認(試験)

◯教科書は指定せず、毎回資料を配布して講義を行う。
◯配布資料は講義前にKuportの電子教材に掲載するので、準備学習に利用して欲しい。
◯授業の理解度を確かめ、授業内容を発展させるために、5回程度レポート課題を出題し、翌週の講義時に解答を提出する。レポートは添削して返却し,適時授業時間内に解説を行い,学習内容の復習を行う。

<成績評価方法>
第15回目に行う試験の得点(100点満点)と、試験得点50%+レポート結果50%で計算した得点との、高得点の方をその学生の成績とする。

<教科書>
本講義の内容を一冊にまとめた著書はないので,教科書は使用しない。講義に必要な資料はその都度配布し、Kuportの電子教材に掲載する。

<参考書>
青木正博「鉱物図鑑」誠文堂新光社(2008)
赤井純治ほか「鉱物の科学」東海大学出版会(1995)
森本信男ほか「鉱物学」岩波書店(1975)
砂川一郎「結晶(成長・形・完全性)」共立出版(2003)
佐々木義典ほか「結晶化学入門」朝倉書店(1999)
庄野安彦、床次正安「入門結晶化学」(増補改訂版)(2009)
都城秋穂、久城育夫「岩石学�鵯(偏光顕微鏡と造岩鉱物)」共立出版(1972)
森本信男「造岩鉱物学」東京大学出版会(1989)
飯山敏道「地球鉱物資源入門」東京大学出版会(1998)
加藤誠軌「標準教科セラミックス」内田老鶴圃(2004)
中村崇ほか「サステナブル金属素材プロセス入門」(2009)
野津憲治「宇宙・地球化学」朝倉書店(2010)
西村祐二郎ほか「基礎地球科学(第2版)」朝倉書店(2010)
ニューステージ「新地学図表」浜島書店(2003)

<オフィスアワー>
講義終了後、新宿キャンパス非常勤講師室
E-mailでの連絡、質疑応答もできます:notsu@cc.kogakuin.ac.jp

<学生へのメッセージ>
鉱物は人間生活に欠かせない物質です。鉱物を自然科学として理解するには結晶化学の知識が必要で、化学系の学生には必要な基礎知識の一つでもあります。鉱物学や結晶学は応用面が広く,人類が快適な生活を維持するために必要な学問であることが分ります。近い将来に直面する鉱物資源枯渇の問題に思いを巡らせ、皆さん各自が解決策を考えてみて下さい。


このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2015 Kogakuin University. All Rights Reserved.