2015年度工学院大学 第1部応用化学科
錯体化学(Coordination Chemistry)[2D13]
2単位 奥村 和 教授 [ 教員業績 JP EN ] 永井 裕己 助教
- <学位授与の方針>
○ | 1. 基礎知識の習得 | ◎ | 2. 専門分野知識の習得 | | 3. 汎用的問題解決技能 | | 4. 道徳的態度と社会性 | | 5. 創成能力 |
- <授業のねらい>
- 金属と配位子が結合した化合物である錯体の基礎と応用を学び、その多様性の理解を目的とする。錯体化学は、無機化学と有機化学が統合した分野であるのみならず、生命科学と材料科学に広く応用が広がっていることについて、具体例を通して理解する。錯体の構造と反応の多様性と、それらを理解するための物理化学的な理論の習得を目的とする。錯体の構造を調べるための分析手法も理解する。
- <受講にあたっての前提条件>
- 予め基礎的な無機化学と有機化学、物理化学を受講していることが望ましい。習得後は、生命科学や材料科学が関わる応用分野に展開できる。なお、構造決定法で触れるX線回折は、「結晶構造解析学」を学ぶための基礎となる。
- <具体的な到達目標>
- 1)配位結合と配位化合物の特徴と性質を理解する。
2)金属錯体の反応性について理解する。 3)有機金属錯体の結合の特徴を理解する。 4)有機金属錯体の反応とその応用を理解する。。 5)生体系における金属錯体の役割について理解する。 6)錯体を調べるための分析方法について理解する。
- <授業計画及び準備学習>
- 1.錯体化学とは
[学習内容] 錯体の構造を正しく説明した配位説が登場した歴史的な経緯から、その発展を概観し、無機金属錯体や有機金属錯体などの種類や特徴を大局的に理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 2.配位立体化学 [学習内容] 中心金属や配位子の特徴に依存する配位数と立体配置、および異性現象について具体的に学び、X線回折法による構造決定の有用性を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 3.配位化合物の命名法 [学習内容] IUPAC無機化学命名法に則り、錯体の命名法の基本的な規則について具体的に理解する。また、配位子の名称や略号を学び、多核錯体の命名法も具体例を通して理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 4.配位結合の理論 [学習内容] まず初期の原子価結合論や電子対反発則を学び、さらに直感的に錯体の構造、磁性やスペクトルを説明する結晶場理論を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 5.配位子場理論と分子軌道法 [学習内容] 結晶場理論を発展させた配位子場理論を理解する。さらに厳密に議論するための分子軌道法について学び、錯体中の逆供与や金属-金属間結合について理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 6.錯体のスペクトル [学習内容] 配位結合や電子状態が錯体の吸収スペクトルに反映していることを学び、分光化学系列や電荷移動吸収帯、さらに円二色性や発光スペクトルについて理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 7. 錯体の磁性 [学習内容] 磁性の分類と錯体の磁気モーメントを理解する。磁気共鳴(電子常磁性共鳴と核磁気共鳴)の基礎を学び、錯体構造の研究における有用性を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 8. 配位子置換反応と活性度 [学習内容] 錯体の溶液内反応である配位子置換反応と活性度を決める要因について学び、酸・塩基の“硬さ”と“柔らかさ”、安定度定数やキレート効果について熱力学的に理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 9. 配位子置換反応とメカニズム [学習内容] 配位子置換反応を有機化合物の反応と対比させて学び、解離的置換反応と会合的置換反応を学び、各種置換反応のメカニズムについて速度論的考察の有用性を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 10.立体選択性と不斉反応 [学習内容] 錯体の多様性の一因である立体異性体について学び、立体選択性とその応用としての不斉反応と不斉触媒反応を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 11. 酸化還元反応と電気化学 [学習内容] 錯体の酸化還元反応について学び,反応に伴う電子移動の機構や錯体の関わる電気化学反応の測定法について理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 12. 配位子の反応と有機合成反応 [学習内容] 配位子の酸化的付加と還元的脱離反応について学び、有機合成反応との関わりと、錯体の関わる工業的な合成反応、触媒反応を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 13. 生命科学と金属錯体 [学習内容] 生理活性をもつ金属錯体や金属タンパク質について学び、生命科学と錯体の関連について学び、医薬分野における錯体の重要性を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 14. 材料科学と金属錯体 [学習内容] さまざまなデバイスを形成するナノテクノロジーや材料分野における錯体の役割を学び、錯体の特徴を生かして材料科学分野で錯体を設計する重要性を理解する。 [学習準備] 教科書の該当箇所を参照しつつ授業ノートを復習し、知識を定着させること。 15. 講義のまとめ [学習内容] 第14週までの授業をまとめる。 [学習準備] 第14週までのノートと配布資料を再読し、知識を定着させること。
- <成績評価方法>
- 原則として定期試験(70%)および演習問題の成績(30%)の合計で評価する。
- <教科書>
- 「新版 錯体化学 基礎と最新の展開」 基礎錯体工学研究会編(講談社サイエンティフィク)
- <参考書>
- 「錯体化学の基礎」渡部正利、矢野重信、碇屋隆雄著(講談社サイエンティフィク)などの参考書は、適宜授業で紹介する。
- <オフィスアワー>
- 奥村:平日午後.居室:12号館208室
E-mail: okmr@cc.kogakuin.ac.jp 永井:メールでの約束の上,対応可。 E-mail: nagai@cc.kogakuin.ac.jp
- <学生へのメッセージ>
- 錯体は、配位化合物とも呼ばれます。ふつう関連が少ないと思われている無機物質の典型である金属(イオンを含む)と有機化合物(場合によっては無機イオンや化合物も)が織りなす多様な化合物を指しています。「配位」は耳慣れない用語ですが、“coordinate”と翻訳されており、「ファッションコーディネート」などとして一般的に使われています。人間がご都合で分類した無機化合物や有機化合物の垣根を取り払って、豊かな自然の仕組みを学び、次世代の科学技術に貢献する意欲を期待します。
このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2015 Kogakuin University. All Rights Reserved. |
|