2015年度工学院大学 第1部機械工学科

政治と法(Law and Politics)[1107]

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2単位
井上 知樹 非常勤講師  
最終更新日 : 2016/01/21

<授業のねらい>
日本国憲法が規定する統治機構条項の学習を通じて、歴史感覚と時代感覚の練磨、個人尊重の価値観の練成、立憲民主主義という統治原理の理解、及び、国政における主権者としての意識・自覚と責任感の彫琢を目指したい。併せて、それらの前提として文章の読解力・表現力の鍛錬を図りたい。

<受講にあたっての前提条件>
期中に数回課す課題を通じて読書に親しみ、読書を通じて知見を広げ、その知見を文章化して自己の見解を述べる能力、端的に言って国語力が全ての前提条件である。したがって、読書に親しみたくない学生にとっては苦痛以外の何ものでもないので、受講を控えた方が良い。教師になろうとする者にとって読書をしない者は、実質的に教師の資質を欠くであろう。

<具体的な到達目標>
上述のように、国語力を鍛錬することを基本として、それを通じで、現代日本社会に瀰漫する政治に関わる諸問題の知見を広め、自己の権利、他者の権利と共に社会性・公共性にもセンシティブな人間の育成を目指したい。それと共に、法律の専門知識に依拠することで、日本の小学校から高校までに猖獗を極める学級会民主主義の弊害を認識し是正する視点を、涵養したいと考えている。

<授業計画及び準備学習>
第1回 ガイダンス・オリエンテーション(大学における勉強とは? 本講座の方針)
第2回 憲法史(市民革命史・近現代史)
第3回   続き
第4回 明治憲法から日本国憲法へ
第5回 象徴天皇制
第6回 権力の民主化と権力の分立
     自分「たち」のことは自分「たち」で決める
     自分のことを自分「たち」で決めてはいけない
第7回 権力の民主化:自分たちのことは自分たちで決める
第8回 国民主権・選挙権・政党
第9回 国会・国会議員・議院
第10回 内閣・議院内閣制・財政
第11回 権力の分立:自分のことは他人に決めさせない
第12回 裁判所・違憲審査権
第13回 地方自治
第14回 野党・市民的公共圏
第15回 まとめ・総括

<成績評価方法>
授業への出席を単位認定のための前提とし、期末に実施される筆記試験を基準にして期中に数回課される小論文を加味し、以上を総合的に勘案して60点以上の者に単位を認める。委細については期首の授業時に説明するので、必ず出席すること。

<教科書>
特に指定することはせず、期中に数回課されるレポート時に参考文献を配布する。

<参考書>
特に指定することはせず、期中に数回課されるレポート時に参考文献を配布する。

<オフィスアワー>
授業の開始前又は終了後に、講師控室にて。

<学生へのメッセージ>
2009年8月の衆議院議員総選挙で、日本史上初めて国民自身の手による政権交代が起こった。これによって発足した鳩山政権は、国民の大きな期待と支持をもって迎えられた。ところが、それから僅か8ヵ月後鳩山内閣は退陣し、代わって菅内閣が発足したものの、震災対応の不手際や人望喪失により退陣し、三代目の野田内閣も支持率漸減で、遂に2012年12月の総選挙で自民党が再び政権を奪回した。猫の目内閣と小学生並みの学級崩壊の民主党に国民は辟易した結果である。では、自民党に期待が持てるのか。今は昔の話になってしまったが、自民党政権時代も、末期は、安倍、福田、麻生と三代続けて1年で政権が崩壊し、その間に格差は拡大して行ったために、民主党が政権を獲得したのである。従って、自民党の政策傾向からすれば、再び格差拡大は容易に推認し得るのであり、そのように持てる者と持たざる者に分裂した日本国民を再統合するために、歴史や伝統・民族性の共有とそれを象徴する国旗国歌への忠誠を扇動することで、持てる者にとって好都合な社会を形成し、持たざる者の中のはねっかえりには、罰則強化による威嚇と国防強化による男らしいmachoismを示し、持たざる者の中のか弱き子羊たる一般大衆は、苛斂誅求に苦しみつつも何も行動することなく、只管朝早くから満員の通勤電車に揺られてスマホを弄り回し、帰宅の電車では深い眠りに落ちる、という単調な日々を毎日繰返すことになるだろう。ここから見えてくるのは、自民がダメだ、民主がダメだというよりも、何も変わらない日本の「民主政治」がダメだということであり、国「民主」権の「政治」である以上、変身しようとしない国民がダメだということである。なぜそうなのか。本講座では、日本国憲法の統治機構の概説・概観をする前に、民主政治に至る世界史的展開の中に日本史を位置づけることによって見えてくる、民主政治に向けた国民自身の覚悟の欠落、民主政治における当事者意識の欠如から繙くことで、日本の政治システム、統治制度を学ぶための問題意識を、共有したいと考えている。


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