2014年度工学院大学 第2部建築学科

数学I(Mathematics I)[1605]

試験情報を見る] [授業を振り返ってのコメント(学内限定)

2単位
片野 修一郎 非常勤講師  
最終更新日 : 2015/02/13

<学位授与の方針>
1. 基礎知識の習得
2. 専門分野知識の習得
3. 汎用的問題解決技能
4. 道徳的態度と社会性
5. 創成能力

<授業のねらい>
専門課程で数学が必要になった時、きちんと使えるように、微積分の概念的な理解と実際の運用技術の修得の両方を目標とする。余裕があれば、論理体系の典型としての、また人類が築いた壮大な思想体系としての数学の側面も味わって欲しい。具体的には、(0)関数概念および三角関数・指数関数・対数関数についてよく理解すること(1)極限・微分の意味を理解し、いろいろな関数の導関数が求められること。特に重要なのは、合成関数の微分である。これがきちんとわかるかどうかが運命の分かれ道だと思っても良い(2)Taylorの定理の意味を理解し、いろいろな解析関数のTaylor展開ができること(3)積分の計算技術を身につけること、を主な目標とする。

<受講にあたっての前提条件>
昨年度は、三角関数・指数関数・対数関数の復習をかなり念入りに行ってから本論である微分法に入った。今年度も同様になることと思うが、学生諸君の状況と相談しながら臨機応変に決めたい。近年、三角関数や指数・対数関数をほとんど理解しないまま理科系大学に入学するケースを目の当たりにすることが多い。本講義では、根本から丁寧に解説するつもりだが、限られた授業時間では自ずと限界がある。高等学校数学IIIの予備知識は一切仮定しない予定だが、数学IIの三角関数・指数関数・対数関数はよく復習しておいて欲しい

<具体的な到達目標>
  • 三角関数・指数関数・対数関数について改めて腹の底から理解する。
  • 微分の意味を理解し、具体的な初等関数に対して計算が確実に実行できる。
  • 特に、合成関数微分に習熟する。
  • Taylor展開の意味や意義を理解し、具体的にそれを計算できること。
  • 積分の意味を理解し、特に置換積分・部分積分の計算が確実にできること。

<授業計画及び準備学習>
1.ガイダンス/数学をやっていく上での基本事項の確認(時間不足なので、2.の話に入る予定)
  準備学習:自分としては、基本さえ身についていれば授業を聞くだけで自然にわかるように話すつもりです。従って、いきなりわからないということは、最低限の基本が身についていないということを意味します。そのような人にとっては、授業を聞いてからでなく、授業を聞く前の準備学習が非常に重大な意味を持ちます。高等学校の教科書は無味乾燥ではありますが、これだけの内容をこれほど要領よくコンパクトにまとめた本は他にありません。短期間で一通りのことを身につけるのに教科書より優れた本はなかなかありません。従って、高等学校の数学I、数学IIの教科書を十分に読んで(きちんと理解して)おくことを強く強く要求します。
2. 関数概念と重要な関数(多項式、三角関数、指数・対数関数)の性質(高校の復習)
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
3.1回目の続き/関数の極限
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
4.導関数の定義とその基本的性質 三角関数の導関数 
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
5.自然対数eの導入とそのストーリー
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
6.初等関数の導関数(合成関数の微分法。ここが最大の山場です) 
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
7.逆関数とは?(逆三角関数/逆関数の微分法) 
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
8.初等関数の導関数のつづき(対数関数の導関数および対数微分法)と演習
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
9.高次導関数と演習
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
10.予備日 演習用に使いたいがたぶん時間不足になっているであろう(場合によっては小テスト)
  準備学習:微分について一通り終わったところで全般的にもう一度よく復習して分からないことを後に残さないこと。特に合成関数微分は徹底的に理解しておくこと。
11.Taylor/Mac'Laurinの定理とその意味・演習
準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
12.積分とは?(Riemann積分の定義と微分の逆の意味での基本的な関数の積分公式)
準備学習:高等学校数学IIの教科書の積分の箇所をよく読んで復習しておくこと。
13.不定積分の計算技術I(置換積分法)と演習
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
14.不定積分の計算技術II(部分積分法)と演習
  準備学習:前回の内容を消化しておくこと。必要なら高等学校の教科書および下記参考書等で補って、かつ練習問題をできるだけ数多く(よく考えながら)解いてみること。
15. 学習成果の確認(前期末試験)
  準備学習:理解しないで公式だけ覚えても無駄です。パニックに陥るだけです。全般に復習して十分に計算練習を積むこと。
丁寧に話している(つもりな)ので、上記の内容のうち、後半の積分が近年時間不足で後期にずれこむことが多くなっています。今年度は可能な限り前期のうちに済ませたい。

<成績評価方法及び水準>
期末試験100点の他に、時間の許す限り授業時に演習を行うので、黒板で解答を発表した者には1回につき5点程度の平常点を与える。また、授業時の質問に答えた場合や少し手間のかかるレポート課題を提出した場合も適宜平常点を与える。以上を合計し、得点分布を調べて他よりも大きく点差の開いている箇所で切って合格点とする。通例、50点とれれば不合格になることはないと思う。

<教科書>
片野修一郎『微分積分学講義』(DTP出版、ISBN 978-4-86211-355-9)
私が長年やってきた講義を基に書いた教科書である。付録には三角関数や指数・対数関数などについて、高等学校の教科書とは違った筆致で書かれているので、不安な人はぜひ事前に読んでおいて欲しいと思います。

<参考書>
基礎学力が十分な人は、自分で書店に足を運んで面白そうな本を選べばよい。たとえば、志賀浩二さんの本は読み物としてどれも面白い。そうでない人は、高等学校の数学IIおよび数学IIIの教科書を傍らに置いておくのが良いと思う。

<オフィスアワー>
授業の前後の休み時間、新宿校舎12階講師室で。質問歓迎します。

<学生へのメッセージ>
なるべく基礎・基本から話すつもりだが、半期で14回の授業で手取り足取りあらゆることをカバーするのは不可能である。授業が本格化する前に、高等学校の数学はできる限り復習しておいて欲しい(これは強くお願いする)。近年、意味もわからないまま、ただ問題の解き方だけを丸暗記しようとする傾向が非常に強く、教員として危機感を強くしている。概念をきちんと理解しないまま解き方の丸暗記をすることは全く勉強したことにならないので、空しい作業に過ぎず、結局時間の無駄です。きちんと理解することのみがあなたの頭脳を本当に耕すことになります。そしてそのように耕された頭脳は将来、あなたに絶大な力を貸してくれるでしょう。高等学校で数学をあまり学んでこなかった人は、学習支援センターを積極的に利用することを推奨します。


このページの著作権は学校法人工学院大学が有しています。
Copyright(c)2014 Kogakuin University. All Rights Reserved.