2014年度工学院大学 第1部応用化学科
無機固体化学(Solid State Chemistry)[1D05]
2単位 池上 隆康 非常勤講師
- <学位授与の方針>
○ | 1. 基礎知識の習得 | ◎ | 2. 専門分野知識の習得 | | 3. 汎用的問題解決技能 | | 4. 道徳的態度と社会性 | | 5. 創成能力 |
- <授業のねらい>
- 無機化合物の材料特性はその製造履歴に強く依存するという、金属材料やプラスチックス材料にはあまり見られない特徴が有る。これは材料に対する信頼性を損ねている面もあるが、製造プロセスの最適化で従来の常識では考えられないほど優れた材料創製の可能性を秘めていることも意味する。本授業は、高機能性無機材料の製造に欠かせない基礎知識を得る目的で行う。具体的には、
・ 無機材料創製に必要な固体化学に関する基礎学理を習得する。 ・ 状態図等の無機固体化学に関する図や表から材料の特性を読み取り、材料設計に生かせるようにする。 ・ 無機材料の製造プロセスの全体像を把握する。
- <受講にあたっての前提条件>
- ・基礎的物理化学で、エントロピーやGibbsの自由エネルギー等の熱力学に関する基礎概念を理解しておくこと。
・化学基礎を学習しておくこと。
- <具体的な到達目標>
- ・状態図を見て、与えられた組成や温度、圧力ではどの相になるかが分かる。
・表面の曲率半径から、表面にかかる圧力を計算できる。 ・結晶中に発生する点欠陥の生成機構が分かる。 ・固体状態の化学反応を点欠陥の拡散係数で説明できる。 ・気孔の無い焼結体を造る必要条件を理解する。
- <授業計画及び準備学習>
- 1. 無機固体材料合成に必要な基礎化学の概要
無機材料、金属、プラスチックの材料的特徴を比較し、材料の高機能化に活用できる無機固体の特徴を詳細に解 説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書55〜57 ページを熟読しておくこと。 2. 結晶相の制御 相転移速度と転移の型の関係、および一成分系状態図を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書56〜58 ページを熟読しておくこと。 3. 状態図I 二成分系状態図で、全率固溶型および共融型状態図の読み方及び、何故それらの状態図が得られるかを液体と固体の自由エネルギーで解説する 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書58〜65 ページを熟読しておくこと。 4. 状態図II 二成分系状態図で包晶型状態図、二成分系融液の状態図、および三成分系状態図を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書66〜72ページを熟読しておくこと。 5. 固体表面I 表面の原子は結合が切れていることから、表面は過剰の表面エネルギーが存在する。表面エネルギーの概念と、表面エネルギーで生じる色々な現象を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書72〜78 ページを熟読しておくこと。 6. 固体表面II 表面エネルギーで生じる毛細管現象や濡れ現象を解説する。また、粉体を特徴づける。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書78〜84 ページを熟読しておくこと。 7. 泥しょうのレオロージー 無機材料製造の出発点となる粉体の最適なスラリーを製造するための基礎を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書85〜93 ページを熟読しておくこと。 8. 格子欠陥I 結晶内で生じる三種類の欠陥(点欠陥、線欠陥、面欠陥)を紹介し、固相反応で重要な役割をする点欠陥(格子欠陥)の生成機構と拡散現象を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書93〜96 ページを熟読しておくこと。 9. 格子欠陥II 格子欠陥の記述法を学習し、格子欠陥の拡散を利用した材料を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書96〜99 ページを熟読しておくこと。 10. 格子欠陥III 巨視的拡散現象の解析法と原子オーダーでの拡散プロセスを解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書99〜109 ページを熟読しておくこと。 11. 格子欠陥IV 色々な拡散経路及び、拡散が関与する現象を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書109〜112 ページを熟読しておくこと。 12. 無機材料の合成技術 粉体や単結晶、薄膜、繊維などの合成について解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書24〜48 ページを熟読しておくこと。 13. 焼結 圧粉体を高温で焼成した時に起こる焼結現象と、その現象の解析法を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書112〜119 ページを熟読しておくこと。 14. 緻密焼結体の製造技術 緻密化が難しい粉体の緻密焼結体を得るための技術を解説する。 準備学習:電子教材で配布の資料、および教科書119〜125 ページを熟読しておくこと。 15. 学習成果の確認(試験) 準備学習:前回までの総復習を行う。
- <成績評価方法及び水準>
- 必要に応じて小テスト等を複数回行う。その合計を40点満点で評価する。期末テストの配点を100点満点で評価し、その60%の点と小テスト等の評価点の合計で評価する。ただし、この評価点よりも期末試験の評価点の方が高い場合は、後者で評価する。60点以上の者に単位を認める。
- <教科書>
- 応用化学シリーズ「機能性セラミックス化学」掛川一幸他著、朝倉書店
- <参考書>
- 「初級セラミックス学」 曽我直弘著、アグネ社
- <オフィスアワー>
- 授業開始前及び終了後,兼任講師室で。
- <学生へのメッセージ>
- 化学系の専門家に要求される無機固体材料製造に関する基礎的知識の習得が、授業の一つの目的である。これまで学んでこられた純学問と見方が若干異なり戸惑うことがあるかとは思うが、社会に出たときの有用性に期待して頑張ってほしい。
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