2014年度工学院大学 第1部機械工学科
△近代の文学(Modern Japanese Literature)[1312]
2単位 永野 宏志 非常勤講師
- <学位授与の方針>
○ | 1. 基礎知識の習得 | ○ | 2. 専門分野知識の習得 | ○ | 3. 汎用的問題解決技能 | ◎ | 4. 道徳的態度と社会性 | ○ | 5. 創成能力 |
- <授業のねらい>
- 新自由主義経済が進行し、不安定な生活を強いられる現代で、安心や快楽は一時的な回避にしか役立てない。リスクとセキュリティーによって管理されたこのサイバーな現実では、クリック一つでデジタル世界に繋がってしまう。この世界によって未来の恐怖が統計で予測され、安全が押し売りされるこの生活は、勝てば終了するゲーム的物語よりも、いつまでも終わらない恐怖小説の空間に似ている。
この講義では、クラウド化し無差別になる恐怖として「Terror(テロ、恐怖)小説」なる現代的テーマを設定し、マルクス『資本論』以後の政治経済のキーワードを紹介しながら進行する。扱う対象は主に1990〜2000年代の日本の恐怖小説だが、日本古来の怪談、西洋のゾンビ伝説、アジアの恐怖小説との比較も含めて、恐怖を古典的/現代的、日本的/西洋的の二つのコードから考察しながら、進行していく予定である。
- <受講にあたっての前提条件>
- テーマの性質上、感情を左右するシーンを扱う場合があるので、予め了承し、心して講義に臨んでもらいたい。
- <具体的な到達目標>
- 不安と恐怖によってコントロールする物語パターンを覚え、それに備えた上で、リスクと管理に塗れるビッグデータ社会を自分のなかに見出し、この社会に抵抗力をつける力を養うことが目標である。
- <授業計画及び準備学習>
- 第1回 暴力的収奪とフィクションとしての土地
準備学習:今まで見た恐怖映画・恐怖小説をリストしておくこと 第2回 「恐怖の家」のグローバりゼーション(1) 準備学習:前回の復習 第3回 「恐怖の家」のグローバリゼーション(2) 準備学習:前回の復習 第4回 IT化における因果関係の「モダン」と無差別的無関係の「ポストモダン」 準備学習:前回の復習 第5回 モダンとポストモダンの東西演出の区別 準備学習:前回の復習 第6回 エレベータ(上昇空間)における東西演出:血と水 準備学習:前回の復習 第7回 過去に縛る操作術(1):血と「純粋/不純」の政治 準備学習:前回の復習 第8回 血の政治のグローバリゼーション:感染という現代的モメント(1) 準備学習:前回の復習 第9回 過去に縛る操作術(2):水と「穢れ/浄化」の政治 準備学習:前回の復習 第10回 水の政治のグローバリゼーション:感染という現代的モメント(2) 準備学習:前回の復習 第11回 ポストモダンと非物質化する時空(1):輪廻転生する時間 準備学習:前回の復習 第12回 ポストモダンと非物質化する時空(2):多世界の中のこの世界 準備学習:前回の復習 第13回 24時間無償労働させられる世界 準備学習:前回の復習 第14回 生政治と知政治の合体としての最悪の現代 準備学習:前回の復習 第15回 教場試験・・・資本主義のキーワードを踏まえて恐怖小説を書く 準備学習:下書き等の準備をしておくこと
- <成績評価方法及び水準>
- 毎回講義後半の10分程度その回のテーマに即した課題をその場で記述して平常点(30点)とし、さらに、期末試験を実施し(70点)、両者併せて総合的に評価する。また、私語、居眠りのたぐいはその場で単位なしとみなし、退室してもらう。
- <教科書>
- 対象とする小説は多岐にわたるので、毎回プリント等を配布し、必要な文献はDVD、ビデオでそのつど提示する。(第1回目に大まかな対象作品リストを配布する。)
- <参考書>
- 荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』(集英社新書)、K・マルクス『資本論 第1巻』全5巻(大月書店)、A・ネグリ/M・ハート『<帝国>』(紀伊国屋書店)、D・ハーヴェイ『新自由主義』(作品社)、M・ラッツァラート『<借金人間>製造工場』(作品社)
- <オフィスアワー>
- 教員室にて、講義の前後10分程度
- <学生へのメッセージ>
- 文学をエンタテーメントとしてでなく、不安と恐怖によって管理する社会のサンプルとして捉え、社会に出るきっかけを少しでも掴んでもらいたい。
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