2013年度工学院大学 第1部電気システム工学科
△近代の文学(Modern Japanese Literature)[1312]
2単位 永野 宏志 非常勤講師
- <授業のねらい及び具体的な達成目標>
- 違和感、不安、恐怖、パニック・・・安定状態から離脱すると生じるこれらの感覚や事態を、恐怖小説を題材として、管理社会が強化され個々の生活が不安定さを増す現代資本主義社会の我々の生と相関して考察する。
今日、メディアは現実を情報によって地球大に肥大させている。このサイバーな現実は、光の速度にモノの重さを持つ物流が追いつこうとしてシステム全体にアクシデントが生じ、日常を一気に崩壊させる危険を孕む。クリック一つで世界に繋がっているのにそれに追い付けない生きた身体は悲鳴をあげ続けている。何事も先回りされ選択肢が与えられて、その中から選ぶのが自由であるかのように思いこまされているこの閉塞感は、出口なしの世界をさまよう小説の登場人物たちに似ている。 前期のテーマは恐怖を作る物語パターンの分類と分析である。恐怖小説の題材は、物語パターンを知るために近現代の日本のものから、海外の恐怖小説・映画(アメリカ、イギリス、スペイン、韓国など)まで多岐にわたる。恐怖小説・映画の主人公は恐怖小説を読んだことがないから恐怖に陥るが、そのパターンを疑似体験することで、現実に起こる不安や恐怖に対する態度を養うのがこの講義の目的である。 後期と相関しているが、単独で受講しても差し支えはない。なおテーマの性質上感情を左右するシーンを扱う場合もあるので、あらかじめご了承いただく。
- <授業計画及び準備学習>
- 第1回 心身状態の変化(1)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:恐怖小説の流れ
準備学習:今まで見た恐怖映画・恐怖小説をリストしておくこと 第2回 心身状態の変化(2)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:恐怖を呼ぶ場所 準備学習:前回の復習 第3回 心身状態の変化(3)・・・違和感・不安・恐怖・パニック:近代の因果と現代の無差別 準備学習:前回の復習 第4回 環境の変化(1)・・・出口なし(a)-密室としての空間- 準備学習:前回の復習 第5回 環境の変化(2)・・・出口なし(b)-先に進まない時間- 準備学習:前回の復習 第6回 環境の変化(3)・・・出口なし(c)-迷宮としての世界- 準備学習:前回の復習 第7回 個としての私の変化(1)・・・心理-憑依・狂気・二重人格化- 準備学習:前回の復習 第8回 個としての私の変化(2)・・・身体-変形・変身・融合・感染- 準備学習:前回の復習 第9回 個としての私の変化(3)・・・存在-失踪・不在化・消失・死- 準備学習:前回の復習 第10回 他者に管理される生(1)・・・監視される日常 準備学習:前回の復習 第11回 他者に管理される生(2)・・・干渉される日常 準備学習:前回の復習 第12回 他者に管理される生(3)・・・操作される日常 準備学習:前回の復習 第13回 残酷さについて・・・自由がきかない世界(1) 準備学習:前回の復習 第14回 残酷さについて・・・自由と思い込まされる世界(2) 準備学習:前回の復習 第15回 教場試験・・・物語構造を踏まえて恐怖小説を書く 準備学習:下書き等の準備をしておくこと
- <成績評価方法及び水準>
- 毎回講義後半の10分程度その回のテーマに即した課題をその場で記述して平常点(50点)とし、さらに、期末試験を実施し(50点)、両者併せて総合的に評価する。また、私語、居眠りのたぐいは、大学にはいないと判断し、その場で単位なしとみなす。
- <教科書>
- 対象とする小説は多岐にわたるので、毎回プリント等を配布し、必要な文献はDVD、ビデオでそのつど提示する。(第1回目に大まかな対象作品リストを配布する。)
- <参考書>
- 大塚英志『ストーリーメーカー』(アスキー新書)、鷲巣義明『恐怖の映画術』(キネマ旬報社)、マルティン・ハイデガー『存在と時間』(中公クラシックス)、M・マクルーハン『メディア論』(みすず書房)
- <オフィスアワー>
- 教員室にて、講義の前後10分程度
- <学生へのメッセージ>
- テーマの関係上、気分を左右する情報を提示する場合があるので、じゅうぶんの考慮の上で受講されたい。
- <備考>
- 登録の際、履修該当学科であっても、定員を超えた場合は抽選となる可能性がある。
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