2013年度工学院大学 第1部応用化学科

安全化学(Safety in the Chemical Laboratory)[5A08]

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1単位
岡部 正明 非常勤講師

最終更新日 : 2013/12/02

<授業のねらい及び具体的な達成目標>
<授業のねらい及び具体的な達成目標>
化学物質は、人々の生活を豊かにすると共に、予測し得なかった事故や公害問題などの社会的影響を与えることがある。化学物質の製造・使用・廃棄の際には、爆発事故、人の健康や生態系への悪影響が考えられ、化学技術者はこれらの危険性を理解し適切に対応することが求められている。
これらの事故や問題は、今までの知見ではこのような問題が発生することを認識できなかったことに主たる原因があると考えられるが、これらの事象を糧として今後化学技術者が製品を開発・製造する上でどのようなことを考慮に入れるべきか形式知化し、「安全化学」を実践することが重要である。
また近年データの改ざんなど「化学技術者の倫理」を問われるような不祥事が目に付く。そのため講義では、社会問題となった事象を解析することで、倫理に基づく行動規範がなぜ取られなかったのかその阻害要因を明らかにし、阻害要因を排除する仕組みの構築について議論することを主体としたい。また化学物質事故や環境汚染による大きな社会的影響を未然に防止するための管理手法についても学び、「化学技術者の倫理」が問われるような事象が発生することを防止することを目的とする。
参考にする事例としては、昨年の東北大震災による東電福島第一原子力発電所の事故原因や対応、また化学技術者に関連した事例として「大企業による公害規制違反とデータの改ざん」や「協和香料化学事件」、「JCO臨界事故」などを予定している。
講義から得られる成果としては、阻害要因として組織や心理学的な要因、個人としての判断能力の限界について理解し、また阻害要因を排除する仕組みについては、化学物質のリスク評価手法とリスクマネージメント手法、プロセスのリスクを評価し事前の対策を取る手法であるハゾップ(Hazard and Operability Study : HAZOP)やリスクについて情報伝達するリスクコミュニケーション等について修得する。
また1992年の地球環境サミットで「持続可能な開発」のために化学物質管理の必要性が提唱され、それを受けて現在および今後実施される化学物質管理の国際動向や我が国の管理手法についても詳しく学ぶ。

到達目標
1)化学物質のハザードを理解し、ハザードに起因するリスクを管理する手法について学び実践できるようにする。
2)適切な危機管理が可能となるよう、過去の事例を参考に、自らが考えて判断し行動するための手法を修得する。
3)安全で安心な社会を構築するため、化学技術者がなすべき行動について考える能力を養成する。

<授業計画及び準備学習>
授業の方法
 講義は、講義用テキスト(生協で販売)をプロジェクターで投影しながら行う。従って講義用テキストは必ず購入すること。
 座学ばかりでなく、グループディスカッションなど討議を行うことで意見の多様性について理解し、必ずしも正解はなく最終的には自分で判断することの必要性について学ぶ。

授業展開(スケジュール)
1)化学物質のハザードとリスクとは
化学物質のリスクとは、ハザードとばく露量によって決まることの説明。特に種々ある化学物質のハザードについて説明する。また化学物質のリスク評価とは、安全性を判断する基準値とばく露量の比較で決まることを学ぶ。
2)化学物質のハザード情報の伝達
化学物質の有するハザード情報の伝達方法について学ぶ。
3)リスクマネージメント及びハゾップとは
リスクマネージメント手法の概論と、現在リスクの予知手段として採用されているハゾップについて説明する。
4)リスクコミュニケーション概論
予測されるリスクについてお互いに理解し合うリスクコミュニケーションが大事であるとされている。リスクコミュニケーションとは何か、リスクコミュニケーションを実施するときの注意点などを説明する。
5)予防原則とは
欧米で「予防原則」と「予防的措置」の言葉の用い方についての議論がある。議論の論点と我が国の政府が採用する「予防的措置」の意味について説明する。
6)国際的な化学物質管理
2020年までに「化学物質の製造と使用による人の健康と環境への悪影響の最小化」を目標に国際的に実施されている化学物質管理について説明する。
7)我が国の化学物質管理
我が国の化学物質管理のための法制度と、2020年の目標に向けて基本となる法律(化審法)の改正などが実施されている。今後の化学物質管理の法制度のあり方など議論する。

<成績評価方法及び水準>
・全講義の7割以上の出席者の成績を評価する。
・成績評価は、2回の小レポート(4割)と期末レポート(6割)

<教科書>
講義用テキスト(生協で販売)

<参考書>
中西準子  「環境リスクを計算する」  (岩波書店)
花井荘輔  「化学物質のリスクアセスメント」  (丸善)
大歳幸男  「事業者のためのリスクコミュニケーションハンドブック」 (化学工業日報社)
製品評価技術基盤機構 「やさしい化学物質のリスク評価」  (化学工業日報社)

<オフィスアワー>
授業終了後1時間程度質問に答える
連絡先: masaaki-okabe@agc.com

<学生へのメッセージ>
企業が求める「化学技術者が有すべき知識」とは何か、わかりやすく講義します。また企業が持続可能な発展をして行くために必要な「化学技術者の行動能力」について、過去の事例を解析しながら自らが考え解決する方法を学ぶことができます。
また企業が社員を採用する際に重要視する「主体性」、「コミュニケーション能力」および「実行力」とは何かについても講義します。

 

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